第149話 破天荒な心配
無事にクレアの家から救出され、数日が経った。
幸い燐には対して傷が残っている様子も無く、体調は回復して行った。
今回の元凶であったクレアに対してだが、奏蘭さんが直々に調きょ・・・もとい、教育に行ったらしい。
教育を終えたクレアはやつれた状態で帰って来たとか。後、奏蘭さんを見かける度にそのことを思い出してしまうらしい。
でも、前までのような異常な執着心はなくなっていた。
隠して俺はクレアから解放され、平和な日常を取り戻すことができる・・・はずだった。
状況が変わったのは二日前。俺が何気無くコンビニに出かけようとした時、姉さんがいそいそと出かける準備をしていた。
俺は初めは姉さんも出かけるものだと思っていた。が、実際は全くの別だった。
そう、俺が2回目の拉致に遭ってから姉さんは俺に対して過保護になって来ている。
一人で買い物に行こうとすると、後から付いて来るし学校に行くときもギリギリまでも見送るし、最近は学校に車で迎えに来たりもするし。
そして俺のことは次第に学校に広まり、再び男子生徒の目の敵にされていた。
目の敵にされても、文句は言えないだろう。美人なお姉さんが四六時中近くで甘やかしてくれるなんてどんなご褒美だろうか。
そんなことを常に経験している俺にヘイトが向くのは仕方のないことだろう。
しかしだ、俺だってそんな頼んでやってもらっている訳では無い。むしろ控えてほしいまであるのだが、それを言う度に姉さんから
「またあんたが誘拐されたら私はもうどうすればいいのか分からないのよ!!今度こそ殺されちゃうか持って考えるといても経ってもいられなくて・・・」
そう言われると、俺もそれ以上何も言えなくなってしまう。
だが、その状況を作り出してしまったのは俺だし、せめて何か別の方法を取ってくれないかと姉さんに相談してみた。
すると、姉さんが机の引き出しから小型の機械を取り出した。
俺はその機会を受け取ったが、これがなんの道具かはさっぱり分からなかった。
しばらくその機械を見つめていると、姉さんが機械の説明をしてくれた。
「それは小型のGPSよ」
「これがGPSか、でもどうして姉さんがこんなものを?」
「・・・元々あんたが一回拉致された時に買っておいたのよ、でもその時はまだ付けさせる程じゃないかなって思ってたの。だけどね、また今回みたいなことが起きたら流石に対処できない場合があると思うの。だから今回は言わせて、これをリュックに付けて」
「これを付けたら、学校の送り迎えはやめてくれるのか?」
「善処はするわ」
「・・・まぁ、心配かけたのは俺の方だし、わかった。これを付けるよ」
「ありがとう、優」
「お礼を言うのはこっちの方だよ、助けてくれてありがとう姉さん」
優は学校に行くときなどに使っているリュックの小ポケットの中に付けた。
これで姉さんの過保護さは多少マシにはなるだろうとそう思っていたとき、携帯にメールが入った。
差出人は奏蘭さんだった。・・・今日は何時に帰ったのか誰と帰ったのか、ねぇ。
優は椅子に腰を下ろし、背もたれに寄りかかった。
優は姉さんのことですっかり忘れていたが、あの事件以降過保護になったのは姉さんだけではなかった。
お読みいただきありがとうございました。