第148話 破天荒な余裕
玲狐達三人がここの場所を突き止め、乗り込んできたわけだがクレアは動じているそぶりを見せなかった。
どうなっているんだ?前回の時はあからさまに動揺していたのに・・・まさか、今回はここまで計画の内に入っていたのか!?
となると玲狐達が危ない。が、むやみに喋ればクレアが何をしでかすかわからない。
くそっ、俺はこのままこいつらを見ている事しかできないのか・・・その間にも玲狐達の会話は進んでいき、姉さんがいよいよクレアと正面から対立していた。
「大人しく優を解放してくれれば今回は見逃してあげるわよ」
「解放?そんなことはしませんよ。優くんはここがとっても気に入ってるみたいなので」
「そんなことあるはずがないでしょ?デタラメ言わないで」
「じゃあ、本人に聞いてみればいいじゃないですかぁ」
「いいわよ、ここで白黒はっきりつけさせてあげる」
そう言うと、姉さんが俺の元へ近づき俺のことをじっと見つめた。
「ねぇ、こんな所早く出たいわよね?」
姉さんは俺に優しく聞いてきた。そんなのもちろん出たいに決まってる。
すぐに姉さんに助けを求めて強引にでもいいから助けて欲しいが、そう簡単にはいかなかった。
ちらりとクレアの方を見ると、絶妙に玲狐達に気づかれない場所から俺に見えるようにリモコンを振っていた。
そのリモコンの意味を俺は理解してしまった。俺が誤った選択をすれば燐に電撃がいく。
つまりここでの最適解は・・・姉さん、すまない!俺は静かに首を横に振った。
「そ、そんな。優・・・」
「ほら、やっぱり優くんは出たくないって」
「こんなの嘘よ!絶対にあなた何かしてるでしょ!!」
「証拠もないのにそんなこと言わないでくれませんか?」
「この・・・!」
「璃亜、その辺に」
「でも、奏蘭こいつが」
「分かってるから、一旦休んでて」
姉さんが玲狐の元へ戻り、今度は奏蘭さんがクレアの目の前に立った。
表情こそはいつも通りだが、怒りのオーラが溢れ出ている。
それもそのはず、ここには俺だけじゃなく奏蘭さんの妹の燐も一緒に閉じ込められているのだから。
「別の人にチェンジねぇ」
「えぇ、そうよ」
「誰がきたところで変わらないわよ」
「本当にそうかしら?」
「何言ってるの?」
「・・・気づいてないとでも思ってたの?」
「さて、何のことかしら」
「さっきと同じ質問、私もしていいわよね?」
「もちろん、結果は変わらないと思いますが」
そう言うと、奏蘭さんが歩いてきた。
奏蘭さん、ダメなんだ。どう聞かれても俺はここから出られないんだ。
燐のためにも俺はここから出るわけには・・・
「優くん、早くここから出たいでしょう?」
そう奏蘭さんが問いかけてきたが、俺はさっきと同じく首を横に振った。
が、その時玲狐がクレアの腕を掴んだ。その瞬間、リモコンがクレアの手から滑り落ちた。
「さぁて、このリモコンについて説明してもらおうかしら」
その時の奏蘭さんの顔はもはや鬼だった。あの時の事はもう思い出したくもないな。
奏蘭さんのあの顔が脳に蘇ってきてしまう。
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