第146話 破天荒な危機
今回のクレアは完全に手遅れだ、今は何を言っても自分の都合のいいようにしか捉えないだろう。
選択を誤れば何をされるか分からない、でもこの間にもきっと誰かが俺帰らない事に対して不信感を持ってくれるかもしれない!
どの道終わるのは時間の問題だ、それまでクレアを刺激しないよう必要最低限の会話だけ・・・
優はそう思っていたが、突如クレアがにこやかな表情で近寄って来た。
「そういえばね、ついさっきネズミを捕まえたの」
「ネズミ?」
「小さい隙間からこっそり入って美味しいものを持って帰ろうとしてたんだ。今回は失敗に終わってるんだけど」
「どう言う事だ?さっきから全く話の先が見えないんだが」
「優くんは見ないとわかんないかな、ちょっと待っててね」
そう言うとクレアは鼻歌を歌いながら部屋を出た。その間に俺は必死に手錠を外そうと腕を動かしてみたが全くビクともしない。
力を込めて引き離そうとしても、全く壊れる気配がない。
そうこうしている間にクレアが何かを引き摺って戻って来た。
「ほら、これが忍び込んだ哀れなネズミだよ」
そう言いながらクレアが転がしたのは手と足が俺と同じく固定されているが、クレアがネズミと言って転がしたのは燐だった。
見た目には全く傷は付いていないが、目は閉じたままだった。
「お前、燐に何をした!」
「まぁまぁ、そんな怒らないでよ。ただ電気ショックで気絶させてるだけだよ。手足の自由はないけど」
「ここまで、ここまでする必要があるのかよ!!」
「あるよ、一番の天敵は燐ちゃんだから」
「だからってこんな・・・」
「もう、心配性だなぁ」
クレアは燐の前に立つとポケットから棒状のものを取り出した。
それを燐の腕に当てると、突然燐の体が震え始めた。そして震えが止まると同時に燐の目が覚めた。
「こ、ここは・・・?」
「燐!」
「ゆ、優さん!?てことはここは」
「そ、私の家だよ」
「・・・貴方、またやったのね」
「何のことかな、私には分からないや」
「ふざけないで!早く私と優さんの拘束を解きなさい!!」
「それは無理なお願いかなぁ」
「この・・・!」
「あぁ怖い怖い。でも今の貴方では何もできないでしょう?だから何を言われても私には効かないわ」
「・・・優さんすいません。今回は救い出せず、そして私自身も拘束されてしまいました」
「いや、いいんだよ。助けにきてくれただけでも嬉しいよ」
「優さん・・・」
燐が這いずりながらも優の元へ近づいて行こうとしていた時、優と燐の間にナイフが投げられた。
ナイフを投げたのはもちろんクレアだ、それよりも投げられた時に頰をかすったのか燐の左頬から血が流れていた。
「何で私抜きでそんな楽しく喋ってるの?ねぇ、私と喋ってた時よりも楽しそうじゃん。どう言うこと?私と喋るのは楽しくないんだ、へぇー」
おいおいおい、話してるだけでもダメなのかよ。勘弁してくれよ・・・
お読みいただきありがとうございました。