第145話 破天荒な対面
優を拉致して行った車の向かっていた先はクレアの家だった。
優は乗せられてからも必死にもがきながら抵抗していたが、途中から手錠と足枷を付けられ身動きが取れなくなっていた。
優がおとなしくなっていると、今度は目隠しのためのアイマスクも付けられた。
身動きが取れず、視界も失った優を二人掛かりで車から降ろし絵の中に入って行った。
扉の開ける音が聞こえた後、階段を歩いているような音が聞こえた。
降りているのか上がっているのかは分からないが、少なくとも今そのどちらかに向かっている。
数歩歩いているうちに急にその場に降ろされた。目隠しを外そうにも腕が拘束されていたのでどうにかして目隠しを取ろうとした時、急に視界がひらけた。視界には真っ先に鉄の檻が見えた。そしてその正面ではクレアが屈んでこちらを見つめていた。
「あ、久しぶり優くん」
久しぶりに見たクレアの顔は、目は笑っているが口は一切笑っていなかった。
このクレアは絶対に刺激してはダメだというのは本能的に理解できた。今俺が出来ることは、クレアの地雷を踏まないこと。
「ひ、久しぶりだな」
「本当に久しぶりだよねぇ、私達何日ぶりだと思う?3ヶ月だよ、3ヶ月」
「そ、それは素直に謝るから・・・」
「謝る?なんで?別に謝って欲しくて連れてきたわけじゃないよ?」
「じ、じゃあ何なんだよ」
そう言った瞬間、クレアが勢いよく檻に手をかけた。周囲にはガチャンと激しい金属音が鳴り響いた。
「ねぇ、何でそんな言葉遣いするの?」
「す、すまん」
「それで、優くんをここに呼んだ理由だっけ、心当たりないの?」
「心当たりと言ってもお前とあまり会わなかったことくらいしか・・・」
「そんなのどうでも良いの。ねぇ優くん、彼女、出来たんでしょ?」
「あ、あぁ。ていうか知ってたんだな」
「何で?」
「は?」
「何で私を選んでくれなかったの?どうして?」
「え、ちょ、クレア?」
「どうしてあの女の?あいつよりも私の方があなたのことが好きだし愛してる!!優くんのことはもう全部知ってるの、知らないことなんか何一つない。起きる時間も、体のホクロの位置も、寝る時間も、全部全部全部知ってるの!!優くんの好きなことならなんでもしようと思って頑張ったよ、でもあなたは私に一切振り向いてくれなかった!あの時も急に現れた人達に攫われるし、もうこれ以上私は優くんを失いたくなの!だから・・・ここで一生一緒に暮らしましょう。今度は前みたいに絶対に離さないから。食事も、睡眠も、お風呂もお手洗いも全部全部一緒だからね」
喋り続けるクレアの目にはもう輝きは残っていなかった。あるのは暗く、どこよりも深い色をした緑の瞳だった。
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