第143話 破天荒な発覚
今、俺は姉さんに部屋まで連行され正座で座らせられていた。ここまで怒っている姉さんをみるのは初めてかもしれない。
姉さんから溢れ出る怒りのオーラは収まることを知らず、むしろどんどんと広がって行くように感じた。
少しの沈黙があった後、姉さんが喋り始めた。
「優、彼女ができたってどういう事?私聞いてないんだけど」
「それは、俺が言わなかっただけで・・・て言うか、別に姉さんに言う義理なんてないし」
「誰よ」
「え?」
「誰って聞いてるのよ、あなたの彼女」
「れ、玲狐だけど」
「そ、わかったわ」
そう言うと、姉さんは部屋を出て行こうとした。なんと言うかすごく嫌な予感がする。
そう思った俺は、姉さんの腕を掴んだ。
「何?」
「姉さん、何するつもりだよ」
「挨拶に行くだけよ」
「そう言って何かする気だろ」
「別にしないって」
「本当か?」
「えぇ。ただ、私になんの断りもなく優を持っていった泥棒猫に制裁を加えるだけよ」
「やっぱり危害加える気満々じゃないか!!!」
「離して!離しなさいよ!!」
そう言いながら姉さんは暴れだした。初めは抑えられていたが段々激しさが増し、手に負えなくなって来てしまった。
優は一瞬の隙をつかれ、姉さんの腕から手を離してしまった。
これで玲狐のところに鬼の形相で走って行くかもしれない。
そう思っていた時、目の前に一人の女性が立ちふさがった。
「はい、ストップ」
「・・・奏蘭、邪魔しないで。今私忙しいのよ」
「本当はどいてあげたいんだけど、今回は状況が違うから、ごめんね」
「ちょ、急に何して・・・」
奏蘭さんは姉さんの背後に一瞬で回ると、そのまま姉さんを一撃で気絶させた。
そして気絶させると、姉さんを担いで奏蘭さんは居間に向かっていった
一人、部屋に取り残された優は口をポカーンと開けたまましばらく固まっていた。
数分後、居間で姉さんが目覚めた。目覚めた時には先程までのオーラが消えていて、いつもの姉さんに戻っていた。
目覚めるなり、姉さんは俺に向かって土下座して来た。
「ごめん、優!いくら気が狂っていたとはいえ暴れようとしてたなんてどうお詫びしたらいいか・・・」
「いや、気にしなくていいよ。俺自体に被害はなかったし。むしろ奏蘭さんが来て止めてくれたから」
「そう、それならいいのだけど」
「・・・ねぇ、私は?」
「あ、あぁ。もちろん奏蘭にも感謝しているわ。私を引き戻せるのはあなたくらいだもの」
「どういたしまして」
「それよりも、優に彼女ができたのは本当なの?」
「それは本当だよ」
「そう、ついに決まったのね。おめでとう」
「私からも、おめでとう!!」
「ありがとうございます。それにしても奏蘭さん、よく知っていましたね。俺に彼女ができてたなんて」
「燐ちゃんから聞いたんだよね〜」
「え、燐?あの時はどこにも居なかったような・・・」
「あら?じゃあどこかに隠れてたのかしら」
燐があの時、あの場所に隠れていた?
でも、あの場所は俺と玲狐しか知らないはず・・・
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