第139話 破天荒なスイカ割り
燐の体調が少し回復して来たところで俺は、海の陰で冷やしていたスイカの様子を確認しに行った。
丁度スイカが一つハマりそうな窪みを見つけ、そこに網に入れたスイカを投入ししばらくしたら様子を見に来ようとしていた。
うん、丁度良い温度だ。これならスイカ割りもできそうだな。
俺は窪みからスイカを取り出し、みんなのいる浜辺の方へ戻った。
「おーい、スイカが冷えたからスイカ割りでもしようぜ!!」
「スイカ割りかー、私やった事ないかも。燐ちゃんはある?」
「私も無いですけど、興味はあります」
「はいはーい!!お姉ちゃんも参戦しまーす!」
「あ、じゃあ私も!」
「じゃあ俺は指示側に回るか。それじゃスイカ準備するから誰から始めるか決めておいてくれ」
優は早速持って来たブルーシートを敷いて、その上にスイカを置いた。
後は目隠しした状態でこのバットを使って10回転した後、スイカめがけて振り下ろすだけ!
あっちも順番決まったみたいだな。一番手は、奏蘭さんか。
あれ、でも今お酒飲んでたよな・・・奏蘭さん、ちょっと待って、回らないで!!
・・・間に合いませんでした。
気を取り直して、一番手は姉さん。今日割とテンション高めだからな、思いっきり振らないで欲しいんだけど。
優はバットを璃亜に渡し、目隠しをした。そして姉さんが10回転し終えてまさにスイカへ向かおうとしたその瞬間、さっき回ったせいなのか横に思いっきりずれてそのまま転倒してしまった。
倒れてしまったのでそのまま姉さんは失格。次の人へ順番を回すことに。
次は燐か。燐なら一発でスカに当てて来そうだが・・・さて、どうなるか。
さすが燐だ、10回転をものともしない。しっかりバットを構えている。
「もう少し左だ、あぁ今度は右にずれた」
「優さん、もう少し距離を教えてください」
「後もう少しで目標が目の前だ」
「ここですか、ここですね!?」
「ちょ、ちょっと待てそこは・・・!」
燐がバットを勢いよく振り下ろした。しかし、本人に何かを割ったような感覚がなく、目隠しを外してみた。
すると、命中していたのはスイカではなく優の右側の砂だった。
一見見るとただのハズレなのだが、実際は勢いよく振ったところが優の肩すれすれの場所だった。
最後に選ばれたのは玲狐。玲狐は他の人と違って癖があるわけじゃ無いからすんなり来てくれそうだな。
先ほどと同じく、10回転を終えた後少しふらついていたがすぐに持ち直した。
「優くん、ターゲットまでの距離を教えて」
「前に7歩ぐらいあれば届くと思うぞ」
「わかった!」
そう言うと、玲狐は言いつけ通り7歩歩いた。そこには確かにスイカが存在している。
狙いを定めて玲狐はスイカに向けてバットを振り下ろした。
パコンと音を立てスイカが割れた。不恰好ながらも美味しそうな割れ方をしている。
その後、参加しなかった人達にもスイカを渡した。
ちなみに、玲狐があそこまで自信を持って振り下ろせたのは俺の呼吸音が聞こえたからだそうだ。
俺には絶対真似できない。
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