第126話 破天荒な帰り道
放課後、居残り作業を終えた優は生徒会室に向かっていた。
今日は他のみんなは帰っていて、俺が一人で資料を整理するはずだったんだが・・・
生徒会室のドアを開けると、椅子に座りながら本を読んでいる奏蘭さんがいた。
「あ、お邪魔してるよ」
「どうしているんですか」
「いやぁ、生徒会って何するか気になってね」
「今日は資料整理だけなので俺以外誰も来ませんよ」
「うん、知ってる」
「だったらなんで」
「ねぇ、前にした約束、覚えてる?」
「・・・何の事ですか」
「七海ちゃん達の事よ」
「・・・」
「これだけの期間があったんだもの、答えは出てるわよね?」
「そ、それは」
「なら、これが最後のチャンスよ。この修学旅行で決めなさい」
「・・・はぁ!?」
「後悔の無いようにするのよ、それじゃあ私はこれで」
「あ、ちょっと、奏蘭さん!!」
行ってしまった・・・
正直、俺も別にこのことは忘れていたわけでは無い。が、考えようとは思っていなかった。
この選択のせいで周りの関係が悪くなったらどうなるのか、そう考えただけでも体が震える。
それでも、この2週間の間に決めないといけない。まさか、これが狙いで教育実習に!?
なんにせよ大変な事が増えたのは確かだ。
この状況、もう逃げることはできない。恐らくこの旅行に姉さんもついてくるだろう。
でも、俺にはちゃんと心に決めた人がいる。ただのその人の名前を言えばいいだけなのだ。
はぁ、この修学旅行楽しみでもあるが、不安も多くなって来たな。
こんな調子で修学旅行楽しめるかな・・・
資料整理を終え、家に帰ろうとした時、買い物中の玲狐と出会った。
「あ、優くん。もうお仕事終わったの?」
「あぁ、なんとかな」
「私たちの分までやってもらって悪いね」
「いいんだよ、これが生徒会長ってもんだ」
「・・・優くん、何かあった?」
「ん、どうしてそう思うんだ?」
「だって、今日はなんかいつもより元気がないっていうか」
「あー、まぁちょっと色々とな」
「ふーん・・・」
「とりあえず、それ片方持つよ」
「あ、ありがとう」
「そういや玲狐は買い物してたのか。ってことは、今日は自分で作るのか?」
「ううん、これ優くんの家のお使いだから」
「そうかそうか・・・いや、ちょっと待て」
「な、何かな」
「お前、また勝手に入ったな」
「こ、今回はちゃんとアポ取って入ったもん!!」
「そういう問題じゃな・・って、足速!!」
凄まじい速さで玲狐は優の元から消え去ってしまった。
あいつ、どうしたんだろう。
きっと疲れてるんかもな。・・・よし、今度なんか買って行ってやるか。
お読みいただきありがとうございました。