第120話 破天荒な変化
姉さんの誕生日パーティを終え、家に帰って来た後俺は疲れ果ててそのまま着替えもせずベッドに倒れ込んでしまっていた。
今日一日だけで三ヶ月分くらい動いた気がする・・・ここまでしたんだから暫くは姉さんも俺に構ってこなくなるだろ。
これで暫くは静かに過ごせ・・・る。
朝、起きると毛布がかけられていた。誰かがかけてくれたのか?
とりあえず着替えるか、見た限りだと昨日そのまま寝ちゃってたみたいだし。
着替えを取り出すためにクローゼットを開けなければならないのだが、たまに燐が中にいる事があるのでそれを警戒してゆっくりとクローゼットを開けたが、中には誰も入っていなかった。俺はホッと胸を撫で下ろし、着替えた。
流石に燐も昨日相当動いたからな、流石にやる余裕がなかったか。
そう考えながら、朝食を食べる為にリビングに降りて行った。
「おはよう、母さん」
「あら、おはよう。今日は早いのね」
「あ、優くん。おはよう!」
「あぁ、玲狐か。おはよう・・・ん?え、お前なんでいるんだ!?」
「燐ちゃんが最近よく行ってるって聞いたから私も行こうかなって」
「朝飯くらい自分の家で食えよ・・・」
「この家の味、忘れられないの!」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるわね」
「母さんも間に受けなくてもいいから!」
「優さん、お茶を飲んで落ち着いてください」
「あぁ、悪いな・・・ってお前もいるのかよ!」
「えぇ、ずっと居ましたよ」
「マジか、全く気付けなかった・・・」
「はい、本日の朝食です」
「あ、ありがとう」
なんと言うかこいつらもはや自分の家かのように出入りしてるな。
燐に対しても対処法がないのに玲狐まで来られちゃ対策のしようがないな。
はぁ、諦めるしかないのか。俺が朝食を食べ進めている間に二階から姉さんが降りて来た。
姉さんはリビングに着くなり、俺に抱きついて来た。
「おはよう、優」
「お、おはよう。あの、手どけてくれません?」
「んふふ、だーめ」
「食べ辛いんだが!?」
「璃亜、早く座りなさい」
「は〜い」
姉さんは俺の左隣の席に座ると、そのまま俺の事を見つめ続けていた。
な、なんだ今日の姉さんは・・・いつもと違いすぎて調子狂うな。
そう思っていると、正面と右隣から冷たい視線が浴びせられた。
うん、顔は笑っているが感情は一切入ってないな。
これは非常にまずい状態だ。こうなれば・・・!
急いで朝食を食べ終わり、席を立とうとしたタイミングで玲狐と燐に肩を掴まれた。
「あ、あの俺この後予定が・・・」
「予定が、なんですか?」
「いえ、なんでもありません!」
「とりあえず、私のおうちに行こっか」
「はい」
二人に逃げられないよう腕を掴まれ、強制的に玲狐の家に連れ込まれた。
と言っても、玲狐の親は今は仕事に行ってるので留守なのだが。
玲狐の部屋に着くと、腕が自由になった。が、今度は足がすくみ動けない。
今なら逃げられるのだろうが、二人の謎の威圧感がそれを許してはくれない。
目の前で立っている二人を見て、俺は無意識に正座をしていた。
「随分と仲が良くなったみたいだね」
「えぇ、私も驚きました」
「い、いやそれは俺もなんだが・・・」
「何をしたんですか?」
「何もしてないって!今日の朝から姉さんがおかしかったんだよ!」
「でも、璃亜さん幸せそうだったよね」
「き、昨日のこと思い出してるんだろ」
「・・・そうですね、そう言うことにしておきましょう」
「よし、これでもう話はおしまいだな!それじゃあ俺は家に」
「まだ終わってないよ?」
「で、でももう話は・・・」
「私達も璃亜さんと同じ事、今から優くんにするから」
「は!?いやいや、別にそんなことしなくたって」
「いいから後ろ向いて」
「はい!」
こ、怖あああ!!!ね、姉さんと同じことするって言われたとはいえ後ろを向けって怖すぎる!!
あぁ、もしかしたら俺は今日死ぬのか?短い人生だった・・・
しかし、実際に俺を襲ったのは優しく、そして柔らかい感触だった。
頰に玲狐の髪があたり、くすぐったいがなんとも言えない幸福感が満ちてきた。
「ど、どうだった?」
「どうって・・・まぁ、嬉しかったな」
「ほ、本当!?」
「あぁ」
「そっか、そっか。・・・えへへ」
玲狐が照れながらずっとクネクネしてる、これは帰れるチャンスでは?
燐は追ってくる気配もなさそうだし、よくわからんがこのまま帰ろう。
た、助かったのか?とりあえず家に帰るか。
家に帰ると、リビングで母さんと姉さんが映画を見ていた。
「あ、おかえりー優。お菓子食べる?」
「おう、貰うわ」
そう言うと、俺の元へお菓子の入った容器を差し出してきた。
そこからクッキーを手に取り食べようとしたその時、姉さんが俺の膝に頭を乗せてきた。
や、やっぱり姉さんがおかしい!!
そしてその瞬間を美玖に見られ、また状況を一から説明しなければならなくなったのは言うまでもない。
お読みいただきありがとうございました。