第119話 破天荒な誕生日
「誕生日おめでとう、姉さん」
そう言うと、姉さんは涙を流していた。こんなに感動している姉さんを見るのは何年ぶりだろうか・・・
でも、そこまで喜んでもらえるなら頑張ってよかったって心から思えるな。
「どうだ、姉さん?これが俺からのサプライズだよ」
「もう、ここまで派手にやるなんて・・・」
「たまにはこういうのもいいだろ?」
「えぇ、私もそう思うわ。・・・でも、こんな広い会場用意してお金結構かかったんじゃ・・・」
「何心配してるのよ、私からパパに頼んでおいたから大丈夫よ!」
「里奈!」
「なんだかんだ璃亜さんにはお世話になってるからね、これくらいなら余裕だよ」
「うぅ・・・私はこんなに良い友達を持てて本当に幸せだわ!!」
「私の事も忘れないでよね!」
「奏蘭!当たり前じゃない!」
姉さんが三人で会話を楽しんでいる間、俺は姉さんの側をひっそりと離れ、玲狐達の集まっている場所へ向かった。
向かって行くと、玲狐達はバイキングから持ってきた料理を食べていた。
「あ、優くん、お疲れ様!」
「お疲れ様です、優さん」
「おう、ありがとう」
「お姉ちゃん凄く喜んでたね」
「あぁ、計画して良かったよ。そういや母さんは?」
「お母さんは今キッチン居るよ。じっとしていられないわ、とか言って」
「どおりで予想よりも早く準備が完了したと思ってたら、そういうことだったのか」
「それにしてもほんと凄いところ貸し切ったよね〜」
「あぁ、正直俺もここまででかいところになるとは思ってなかったな」
「私、会場の詳細見た時びっくりしてベッドから落ちたもん」
「それはさすがに盛りすぎだろ・・・」
「落ちたっていうよりひっくり返ってたよね」
「そうね、もっと酷かったです」
「って、お前ら一緒にいたのかよ」
「そ・れ・よ・り・も、プレゼント、ちゃんと準備してきた?」
「・・・まぁな」
「早く渡してあげなよ〜」
「け、けどな今更かしこまって渡しに行くってのも・・・」
「良いから行って来なって!」
「お兄ちゃん、頑張ってね!!」
「応援していますよ!」
はぁ、ここまで言われて今更引き返すわけにもいかないよな。
・・・大体なんでプレゼント渡すだけで緊張しないといけないんだ。
そうだよ、いつも通り平常心で・・・
そう思いながら姉さん達の元へ向かった。
すると、俺の気配に感づいたのか里奈さんと奏蘭さんは一旦姉さんから離れた。
姉さんも突然距離を取られたのでどうしたのかと思っていたようだが、奏蘭さんに後ろを見てと指をさされ、こちらに振り向いた。
「あれ、まだ何かあったの?」
「あ、あぁ。・・・ほら、俺からのプレゼント」
「え、ええええええええ!!??」
「だからそんなに驚くなよ」
「あ、開けてもいい?」
「・・・おう」
優から受け取った袋を璃亜はドキドキしながら開けた。
袋の中には箱が一つ入っていた。その箱を開けると、中にはネックレスが入っていた。
「うわぁ!ネックレスだ!!」
「姉さんに似合うと思ってな」
「優、ありがとう!!!」
「うわっ、ちょ!抱きつくな!!!」
「もう、こんな綺麗なものまでもらっちゃって、今日はどこまで幸せになれば良いの!?」
「ちょ、苦しい・・・」
「あ、ごめん!」
「はぁ・・・ま、まぁ喜んでもらったんなら何よりだよ」
「うん!一生大事にするね!!」
「一生って・・・姉さんらしいや」
姉さんへのサプライズ誕生日パーティは見事に成功した。
これだけやれば暫くは満足して俺に付き纏わなくなるだろうと、この時の俺はそう思っていた。
でも、それは結局空想上のものだった。
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