第116話 破天荒なデジャヴ
はぁ、昨日は散々な目に遭ったな。急に攫われたかと思えば燐と姉さんが現れて家まで連れ戻されるし、戻ってきたかと思えば燐から説教されたし。
今日が休みで本当に良かった・・・今日は体を休めるために図書館に行こう。
準備を整え、図書館に向かおうと家を出た時、突然視界が真っ暗になった。な、なんだ何も見えない・・・
優が顔の袋に手を伸ばそうとした瞬間、手錠をかけられ身動きが取れなくなってしまった。こ、こんなこと前もあったような。
優は手錠を掴まれ、そのまま何処かへ連れ去られてしまった。
数分後、何処かに立ち止まったらしい。優がキョロキョロとしていると誰かに被せられていた袋を外された。
や、やっと落ち着いて呼吸ができる。息を整えた後、あたりを見回した。目の前に玲狐、そして見覚えのあるベットにタンス。
ここは玲狐の部屋か。・・・ん?今何か混ざってなかったか?
「こんにちは、優くん」
「うぉ!急に話しかけんなよびっくりした・・・」
「えへへ、ごめんごめん」
「ていうかお前、前回より凶悪になってないか?」
「え、そんなことないと思うけど」
「とりあえず、この手錠外してくれないか?話はそれからだ」
「優くんがちゃんと質問に答えてくれたらいいよ」
「なんだよ、質問って」
「昨日の放課後、どこにいたの?」
「デ、デパートに居たけど」
「誰と?」
「誰って、奏蘭さんとだよ。買い物に付き合っただけだ」
「ふーん・・・」
そう言うと、玲狐は携帯をいじり始めた。一体何を確認してるんだ?
「じゃあ、これは何?」
玲狐が見せてきたのは、昨日奏蘭さんと一緒に喫茶店にいた時の写真だった。
二人でジュースを飲んでいる時の。
「お、お前、それ・・・」
「どう見ても買い物じゃないよね?」
「こ、これはその、色々と事情があってだな・・・」
「じゃあ説明してよ」
「そ、それは・・・言えない」
「・・・なんでかな」
「昨日口止めされたんだよ」
「誰に?」
「燐だけど・・・」
そう聞いた後、玲狐は携帯を操作しだした。そして数秒後に誰かと電話をし始めた。
玲狐の声はいつも通り上機嫌だ、でも顔は笑ってない。その表情に恐怖感を抱いてしまった。
話が終わると、こちらに近付き手錠を外した。
「ごめんね、私の勘違いだったみたい」
「あ、あぁ。わかってくれればいいんだ」
「こんなことしちゃってごめんね。お詫びにこのカステラみんなで食べて!」
「あ、ありがとう」
「私用事できちゃったからもう行くね、バイバーイ!」
こ、怖かったー!!なんだったんだあいつ。
て言うか急に人の顔を袋で覆うなよ、下手したら死ぬだろ・・・
はぁ、カステラを貰ったし、もう家に帰ろう。でも、玲狐のあの表情はしばらく忘れられないかもなぁ・・・
お読みいただきありがとうございました。