第115話 破天荒な写真
奏蘭さんと話し終えた後、燐と二人で家を出ると俺の家の前で玲狐が玄関のドアを見つめ続けていた。
「・・・何してんだ?」
「え、優くん!?そ、それに燐ちゃんも」
「人の家見てて楽しいのか?」
「いや、優くんが来るのを待ってたんだけど・・・あれ?」
「そうか、ならさっさと学校行こうぜ」
「う、うん。あれ、でもなんで燐ちゃんと優くん二人一緒だったの?」
「さっさとしないと置いてくぞ」
「あ、待ってよ。質問にも答えてよ!」
半ば強引に玲狐との会話を終わらせ、思い出させない様ひたすら他の情報で上書きをした。
玲狐の詮索を阻止できたが、優は先程の奏蘭の言葉を忘れてはいなかった。後でって、いつの事だよ・・・
しかし、時間が経つにつれて段々と記憶から忘れ去られていた。
放課後になり、今日の生徒会が休みになった事を知ると、優は何処かに寄り道でもしに行こうか悩んでいた。
そうだ、今日は漫画の新刊が出るからそれを買いに行こう。
優はご機嫌で校門を出ようとしたその時、突然誰かに肩を掴まれた。誰かと思い振り返ると深く帽子を被った女性が立っていた。
「あ、あの。何か用でも?」
「あら、朝の事もう忘れちゃったの?」
「そ、その声は・・・!」
「さ、燐ちゃんに見つかる前に早く行くわよ」
「え、ちょ・・・」
優は腕を引かれ、そのまま車に乗せられてしまった。なんというか、これ前にもやられた様な気が・・・
「あの、どこに行くんですか?」
「んー、いつものデパートだよ」
「あそこなら別に歩きでも」
「いやぁ、歩きだと多分見つかっちゃうと思うんだよねぇ」
「見つかる?」
「こっちの話。さ、ちゃんとシートベルトしてね」
姉さん以外の人が運転する車に乗るの、初めてかもな。母さんは運転できないし。
姉さんに比べたら奏蘭さんは優しい運転だ。姉さんはたまに荒くなったりするしな。
っと、着いたか。・・・ていうか、何も聞いていなかったがここに何しに来たんだ?
「あの、これから何を」
「着いて来たらわかるよ」
そう言うと、奏蘭さんは歩き出した。俺も奏蘭さんの後を着いて行った。
向かった先は一階の喫茶店。席を取って置いてと言われ奏蘭さんを待っていると、何かを持って戻って来た。
見た所ジュースみたいだが、ストローが二つ入っている。
「あの、それは?」
「えー、見てわからない?カップル用のジュースだよ」
「は!?な、なんでそんなもん頼んでるんですか!!そんな関係でもないのに」
「そう言う反応されると私、傷つくなー。ショックで写真ばら撒きそう」
「そ、それだけは勘弁を」
「冗談よ。それで、あなたにしてもらいたい事っていうのはねこれを一緒に飲んで欲しいの」
「え、いやいやいや。そ、それはさすがに・・・」
「写真はどうするの?」
「・・・分かりましたよ。けど、少しだけですからね。ちょっとしたらあとは全部奏蘭さんにあげますから!」
「うーん、まぁそれでもいいかな」
ひ、引き受けてしまった。こんなの自分がやることになるなんて思ってもなかった・・・
でもこれは自分のため、自分のため。
決意を固め、優はストローを咥えた。それを見て少しニヤついたあと奏蘭は反対側のストローを咥えた。
この数秒だけ耐えるんだ、そうすれば・・・その時だった。
「優くん。はい、チーズ」
奏蘭さんに話しかけられ奏蘭さんの方を見ると、携帯で自撮りをしていた。
そして、そこに俺も写り込んでしまった。
「ちょ、奏蘭さん!?」
「ふふ、ドキドキした?」
「写真撮るなんて聞いてないんですけど!!」
「だって聞かれなかったもの」
「で、でもあの写真は消してくれるんですよね!?」
「あれね、消しはしないけど他の人には見せないよ」
「ま、まぁ他人に見せないのなら・・・」
「それよりも、どう?また飲む?」
「いや、流石にもう・・・」
「じゃあ私がもらおうかしら」
「・・・あらぁ」
「奏蘭、人の弟を連れ去るなんていい度胸してるじゃない」
「見つけましたよ、姉さん」
「あ、あの。優くん、助けてくれないかしら?」
「今回は味方しませんからね」
「さ、私と来てもらおうかしら。じっくり話聞かせてもらうわよ」
「優さん、あなたもですよ」
「・・・え」
「連行されたとはいえ、とても無視できることではありません。優さんの家でじっくり話し合いましょう」
その後、優の部屋では燐との2時間に及ぶ話し合いが行われ、奏蘭は次の日の朝にやつれて帰って来たそうだ。
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