第114話 破天荒な脅し
朝、目が覚めるといつも聞こえるはずの目覚ましが聞こえなかった。
不思議に思い辺りを見渡していると、ここが自分の部屋ではない事に気がついた。というかここ何処だ?
昨日、途中まで燐の看病をしていたのは覚えてる。ただ、夕方辺りからの記憶が無いんだよな。
考え込んでいる途中で優は布団の中に違和感を覚えた。そう、隣で何かがもぞもぞと動いている。
優はそっと布団を捲った。すると、そこにはこちらをじっと見つめる奏蘭さんがいた。
「ひっ!!」
「見たわねー!!」
「おわわわ!!や、やめろ!」
「どうかしましたか、優さん!!」
「り、燐」
「あ、燐ちゃん。おはよ〜」
「って、奏蘭さんだったのか!?」
「あら、むしろ私以外の誰だと思ってたのかしら?」
「あんまり優さんをからかわないでください。それよりも、朝食が冷めてしまうので二人とも降りて来てください」
燐に諭されながら三人で一階に降りていく。どうやら俺はさっきまで奏蘭さんの部屋にいたらしいな。
ということは俺、あの後寝落ちしてたのか!?くそ、情けないことをしてしまった・・・
そればかりか、奏蘭さんにも迷惑がかかっていたのかもしれないし、これは後で謝っておかなければ。
一階に着くと、既に三人分の朝食が用意されていた。玉子焼きに焼き魚、ご飯に味噌汁。燐の料理の上手さは相変わらずだな。
燐が三人分のお茶を持って来た時、優が少し浮かない顔をしていたことに気付きお茶を置いた後、優の隣に座った。
「あの、優さん。どうかしましたか?」
「いや、看病するって言ったのに寝落ちしてたみたいでな、すまん」
「顔をあげてください、優さん。私、とても感謝しているんですよ。私が寝やすい様極力音を立てない様にしたり、お願いも聞いてくれたりしてくれましたし」
「へー、そんなことしてたんだ〜。後でお姉ちゃんにも聞かせてよ」
「残念ですがこれは内緒です」
「えー」
「とにかくですね、優さんがどう感じていても、私は感謝しています。本当にありがとうございました」
「お、おう・・・」
「私からも、ありがとうね。燐の為に学校まで休んで看病してくれて」
「いえ、大事な幼馴染みなので当然です」
「さ、早くご飯食べちゃいましょう!」
どうやら気にしていたのは俺だけだったみたいだな。
今回のことを経験として次にまた同じ状況になった時は繰り返さない様にすればいいだけのことだよな。
さ、朝食を食べて学校に行こうとしていたのだが食後に奏蘭さんの部屋に呼び出された。
燐にその事を伝えた後、俺は奏蘭さんのところへ向かった。
「何かあったんですか?」
「いやさ、面白いものがあってさ。ほら、見てよこれ」
そう言いながら奏蘭さんが見せてきたのは昨日撮ったであろう俺と燐の寝ている時の写真だった。
しかもその写真をよく見ると、俺と燐が手を繋ぎながら寝ているものだった。
「い、いつ撮ったんですか・・・?」
「昨日、帰ってきたらたまたまこうなってて、思わず撮っちゃった。二人とも可愛いわね」
「そ、その写真がなんだって言うんですか?」
「この写真、璃亜ちゃんにも共有したいなーって」
「!?そ、それは」
「困るよねー、璃亜ってば優くんの事大好きだもんね。この写真見られたら大変だよね〜」
「け、消してください。その写真」
「えー、それは嫌だよ。でも、そうだね私のお願い事聞いてくれたら考えてあげてもいいかな」
「な、なんですか」
「それはね・・・」
「え!?そ、それは無理ですって!!」
「じゃあ写真璃亜ちゃんに見せちゃうけど、いいの?」
「わ、分かりましたよ!」
「うんうん、物分かりが良い子は私好きだよ。それじゃあ後でね」
そう言い残すと奏蘭さんは部屋から出て行ったが、その後に待ち受けているものを優はまだ知らない。
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