第109話 破天荒なお年玉
いやぁ初日の出、凄く良かったなぁ。毎年行きたいとは思ってたけど、行くきっかけがなかったし。
また来年もこうしてみんなで行けたら良いな。
車で移動すること約二時間、優達は自宅に辿り着いた。
家のポストには年賀状が束になって入っていた。毎年本当に量が多いよな、大体が母さんと姉さん宛だけど。
俺宛のも数枚はあったりするが、約二名は年賀状じゃなく自分達で挨拶に来る。
でも、今回は違った。
「あ、優さん。あけましておめでとうございます」
「優くん、あけましておめでとう!!何処かに行ってたの?」
うん、新年の挨拶は大事だよな。でもさ、何故俺の家から出て来てんだ?
「お、おう。今年もよろしく。ところでなんだが・・・どうして俺の家から出て来たんだ?」
「えーっと、新年の挨拶に行こうとしてたら優くん達居なくてどうしようかと思ってたら燐ちゃんが来て、そのまま鍵を開けてもらったの」
「よし、ちょっと待て。燐、俺の家の鍵持ってるのか?」
「はい、優さんのおば様に合い鍵持ってて欲しいと言われたので」
「か、母さんから貰ったのか?」
「はい。そして朝におせちを食べるから家にいらっしゃい、と招待を受けたので」
「合い鍵使って入ってたのか。まぁ、母さんから招待受けてたんなら何も言えんな。とりあえず家に入ろう、寒い」
「そう言うと思って、温かいお茶を入れてありますよ」
「マジか、助かる!」
「ね、ねぇちょっと!私を無視しないでよ!」
玲狐が急ぎ足でこちらに向かって来た。全く、騒がしいやつだな。
家に入ると母さん達がおせちの準備を始めていた。やっぱりこれを食べなきゃ始まらないよな!
みんなが座ったタイミングで母さんがポチ袋を取り出した。
「みんな、あけましておめでとう。はい、お年玉よ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう、お母さん!」
「ありがと、母さん」
「あの、私達も貰って良かったんですか?」
「良いの良いの、遠慮しないで」
「わーい、お年玉だ!」
「璃亜、あなたもあとで渡しておきなさいね」
「分かってるわよ・・・」
「あ、優さん、この後、初詣行きませんか?」
「あ、私も行きたい!」
「分かった、とりあえずこれ食べてから行こうぜ」
「だね!」
「そうしましょう」
おせちを食べ終わった後、少し休憩をしてから初詣のやっている神社へ向かった。
今年は受験も控えてるからな、良い運気をもらいたいものだが・・・
それにしても凄い並んでるな、もう少し早めに出るべきだったか?
しっかし、この待ち時間長いな。あと寒い。防寒具を着て来てるとはいえ、流石に寒いな。
どうにかして寒さを紛らわせようとしていた時、燐から魔法瓶を手渡された。
「外は寒いと思ったので、温かいお茶入れて来ましたよ」
「おぉ!それはありがたい!!」
「あ、ちょっとそれ私が先に飲む!」
「いや、ここは俺が!」
「では、公平にジャンケンにしましょう」
「いいぜ、最初はグー」
「じゃんけん」
「「ぽん!」」
「やったー!私の勝ち!!」
「くっそー、ここで負けるかぁ」
「わぁ、温かぁい」
玲狐が飲み終えた後、俺もお茶を飲んだ。冷えた体に暖かいお茶、いやぁ温まるなぁ。
・・・ん?なんだ、急に玲狐が赤くなった。まだ寒いのか?
「どうした、まだ寒いのか?もう一杯飲んでおくか?」
「だ、大丈夫、だから・・・」
「そ、そうか?」
「ゆ、優くんって意外に大丈夫なんだね」
「何がだ?」
「き、気づいてなかったの!?」
「だ、だからなんだよ」
「玲狐、優さんはこういう人よ」
「なんか俺が悪いみたいになってるんだが!?」
その後、しばらくの間玲狐の顔は赤く染まったままだったが、数分後にはいつもの玲狐に戻っていた。
やっぱり玲狐はこうでなくちゃな。
三人でお参りを済ませた後、神社の売店で売っていたぜんざいを買い、近くの椅子に座りながらぜんざいを食べていた。
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