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第10話 順番決めは破天荒

「俺にリレーに出て欲しい?」

「えぇ、そうよ」

「いやいや、忘れたのか。俺たち実行委員は 競技には出られないんだぞ。」


そう、これはすでに決まっていることなのだ。実行委員会では体育祭当日にも会場の準備や応援席の設置など色々とやることがあるのだ。

なので実行委員に入った人たちは全員参加の種目以外は参加できないのである。


「そうね、確かにリレーは各クラスで選ばれた人たちが走るわ。でもね一年生だけは違ってね。全員参加なの」

「な、何だとっ!?」

「えぇー!?そうだったの!?」

「二人も知らなかったようね。私もついさっき知ったばかりなの」

「それって、まさか・・・」

「想像通り先生が忘れてたのよ。全員参加だということを」


何でそんな大事な事忘れるんだ、あの先生は・・・

でも待てよ、委員長もさっき知ったばかりということは


「なぁ、うちのクラスでこれを知ってた人っているのか?」

「いいえ、いないわ。私が今から残っている人たちに伝えに行くところだったもの」

「それじゃあ、明日リレー順決めないといけないんだ」

「いいえ、玲狐さん実はそうじゃないの。リレーの順番表は今日までに提出しなきゃいけないの」

「はぁ!?」

「ちょ、優くん急にそんな大声あげないでよ」

「いやいや、玲狐よく考えろよ。リレーの順番表は今日提出だ」

「うん、さっき結衣が言ってたね」

「そして今は放課後だ」

「うん、そして今から帰るところなんだよね」

「そう、そこだ。」

「え、そこってどこ?」

「・・・今から何するって言った?」

「え、今から帰ろうと・・・ってああー!!」


こいつ、やっと気づいたか。

そう、今は放課後であり生徒はほぼみんな帰ってしまっている。

そして今からクラスに呼び戻すにも必ず全員揃うとは限らないのだ。


「ね、ねぇ!結衣どうするの!?かなりやばくない?」

「えぇ、だから私はここに来たのよ」

「あぁ、そういうことか」

「え、何、どういうこと?」

「玲狐・・・お前もう少し頭使えよ。ここで今、実行委員会やってるだろ。そこには会長と副会長がいる。」

「あー、なるほど。じゃあ結衣は交渉をしに来たのね」

「そうよ、そして向かっていたら」

「たまたま俺達を見つけたってわけか」

「それであなたの答えはまだ聞いてないのだけれど出てくれるわよね?」

「まぁ、全員参加だしな。出るよ」

「ありがとう、走る順番とかは今日中に決めちゃうから」

「でもいない奴らにはどうするんだよ」

「先生が今電話かけてるから大丈夫よ。その後にはメールでリレーの順番を全員に送ってもらうわ」


先生、自分で忘れてたこととはいえ大変そうだな・・・

今頃はリレーの走順考えてる頃だろう

まぁ委員長がいくらか手伝ってるみたいだから心配はいらなそうだな。


「それじゃあそろそろ帰っていいか?」

「そういえばあなた達帰る途中だったわね。邪魔してごめんなさい」

「いや、邪魔じゃあなかったさ。こいつと二人だと偏差値下がりそうで」

「むー、言っとくけど優くんより私の方が成績上だからね!」

「はいはい、わかってますよー」

「絶対わかってないよ!」

「あなた達ほんと相変わらずね」

「相変わらずってなんだよ」

「なんでもないわ」

「まぁ、いいか。それじゃ、委員長また明日なー」

「結衣、頑張ってねー」


玲狐がおおきく手を振るとそれに応えるように小さくではあるが手を振っていた。

少し恥じらいながら手を振る委員長・・・ありだな!

そう思っていたら玲狐が急にこっちを向いた。


「ねぇ、今結衣のこと可愛いと思ってたでしょ」

「まぁちょっとだけな」

「ふーん・・・」

「とりあえず帰るぞ」

「うん、帰る時にちょっと寄り道しない?聞きたいこともあるし」

「お、おう。別にいいけど」

「それじゃあ行こっか」


そのまま玲狐の進行方向通りに進み、家の近くのケーキ屋に来た。

ここは、前に美玖へのお土産の時に利用した店だ。今では週1で通っていたりする。

玲狐がケーキ屋のドアを開けるとそこには燐がいた。


「燐!?どうしてここに・・・」

「ちょっと小腹がすいたのでなにか食べようかと」

「それでここにいたのか」

「しかし、なぜ玲狐さんはこんなに威嚇してくるのでしょう」


そう、燐と目が合った瞬間から玲狐が燐のことを睨み続けているのだ。

玲狐がさっきからぼそぼそと何か言っているが小さすぎて聞き取れなかった。

まぁまたくだらないことでも考えてるんだろう。

とりあえず落ち着かせようと思い俺は頭に軽めのチョップを入れる。

そして何故か燐も1発チョップを入れた。


「燐ちゃん・・・またやったなー!!」

「避けない方が悪いです」

「優くんも止めてくれたらよかったのに!」

「いや、俺のやった後だったし、いいかなって」

「全然良くないよ!」


この二人が集まると必ずこうなる。

こればかりは変わらない、いつもの日常だ。

変わったとすれば、玲狐の・・・いや、やめておこう。

さてそろそろ止めますか。店の迷惑になっちゃだめだしな。


「二人とも、何が食べたい?今日は奢ってやるぞ」

「はいはい!優くん、私フルーツタルトがいい!」

「私はラズベリーパイが」

「おばちゃん、ショートケーキとラズベリーパイあとチーズケーキで」

「はいよ、まいどあり」


こいつらはほんとに釣れやすいな。

誘拐されないか心配になる。

おばちゃんからケーキを受け取り玲狐達が待っている席に向かう。


「ほら、注文の品だぜ」

「「いただきます!」」


二人の喧嘩を収める方法もいつもこれだった。

でも体育祭のあの日、この方法では止めることができなかったのだ・・・

お読みいただきありがとうございました。ご意見ご感想などもお待ちしております

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