第106話 破天荒なこたつ
新しい生徒会が始まってから数日、季節も秋から冬に移り変わっていた。
休みの日は布団から出る気力が布団の暖かさに吸い込まれていく。
このままではいけないと思ってはいるのだが、いかんせん体がいうことを聞かない。
そんな時は、いつまでも起きて来ないことに痺れを切らした美玖が部屋に入ってくる。
「お兄ちゃん、そろそろ起きて!!」
「なんだよ、寒いから出たくないんだよ」
「もう、この時期になるといっつもそう言うんだから!!」
「だから早く俺の布団を返してくれないか?超寒いんだが」
「ダメ、返したらまた篭るでしょ。ちゃんと起きて」
「・・・わかったよ。それじゃあ着替えるから布団をそこに置いて部屋から出てくれないか?」
「わかった、外で待ってるわね!」
「さて、もう少しだけ布団に」
「優さん、着替えの用意ができましたよ」
「・・・燐、なんで居るんだ?」
「二度寝しようとしたら止めておいて、と言われたので」
「はぁ、降参だ」
「では、布団は持って行きますので着替えてから降りて来てくださいね」
俺の行動が完全に見透かされていた。
そりゃあ着替えようとは思ってたさ、思ってたけどもう少しだけ温まっていたかっただけなんだ。
そう、決して二度寝しようとしたわけじゃない。
着替えをしている間にふと一つの考えが頭を過ぎった。そうだ、こたつを買おう。
それを思いついた瞬間、俺は机の上に置いてある貯金箱の中身を確認した。
うん、これなら買える。ならばやることはただ一つ。俺は身支度を整え、姉さんを呼びに行った。
「姉さん、ちょっと車出して欲しいんだけど」
「えー、今日寒いから外出たくないんだけど」
「姉さん、ここで耳寄りな情報なんですけど・・・」
「・・・わかった、行こうか!」
「ありがとう、姉さん!」
姉さんの車で向かうこと数分、俺達は近くのデパートにたどり着いた。
そして二階にある家電コーナーに向かう。あとはこたつを探すだけなんだが。
お、あったあった。大きさは・・・うん、これがいいな。
よし、これでこたつは調達できた。あとはやっぱりあれだよな!
デパートから帰ると俺と姉さんは二階の自室に物を運んで行った。
説明書を読みながら組み立てて行き、電源をコンセントに繋げれば完成だ!!
「やったな、姉さん!」
「えぇ、部屋にこたつがあるなんて最高だわ」
「そしてこたつといったら」
「みかんよね」
「丁度みかんを入れられるカゴ、あるぜ」
「さすが、準備がいいわね!」
「さぁ、二人でぬくぬくこたつライフを楽しもう!」
「えぇ!!」
「楽しみましょう」
「うおぉ!?燐、まだいたのか!?」
「布団を返しに来たら何やら楽しそうなことをしていたので」
「まぁ見つかっちゃったもんは仕方ないね。あ、燐ちゃんもみかん食べる?」
「いただきます」
その後三人はこたつで温まりながらみかんを食べつつ、横になったり本を読んだりと有意義な時間を過ごしていた。
しかし、二人が夕飯を部屋に持ち帰ろうとした際に母に目をつけられ、自分達だけのこたつを買ったことを知られてしまった。
そして冷蔵庫の近くに置いてあったみかんの箱に関しても追求され、後日そのみかんは家族のみんなで分けて食べることになった。
こたつに関しては部屋で使うことを許可されたが、母さんも使うと言うことで他のみんなには秘密にしてもらった。
はぁ、ちょっと危ないところもあったけどやっぱりこたつは良い、最高だ・・・寒いのを我慢して買いに行った甲斐があったぜ。
お読みいただきありがとうございました。