「風切りのレン」その2
✳✳この物語には微エロは醸されますが、異能力バトルや胸熱展開はありません。あと脳内変換を強くお勧めしますが、出来なくても読めます✳✳
「……研ぐ。」
「そりゃ、研ぐんだろうけど……たったそんだけで?」
どんな魔剣も研がないと、いつか切れなくなる。
当たり前の話だが、改めて言われてもピンとこない。
「だってこの……レンは、砥石を切っちまうんだぜ?」
昔一回だけ、きまぐれに砥ぎを自分でやろうとしたことがある。
文字通りバターのように掌位を剥ぎ切ってしまったので、その1回でやめた。
「やるだけ無駄なような気がしますが……」
ジーニアスは過去に、魔導や魔剣の専門家に相談し、現物を見せてきたのだが、皆一様に首をかしげるばかりだった。
その場で試しにと、刃先へ当てた物は紙でも木でも容易く切り裂くのに、手に持ち、振るとバァイーンッ!と弾き返す。
膂力に劣るジーニアスでも、ここまで斬れないのが自分に問題があるとは到底思えなかったが。
「ま、こちらは専門家だよ。信用してほしいね。」
荷物から三本の、何の変哲もない砥石が出てきた瞬間、二人は思った。
(信用?まったく出来ないって……)
だが男にとって、周囲の些末事はもはや目にも入っていなかった。
なぜならば、目の前には、彼が愛してやまない女性達。
薫風に髪を揺らす美女。
……魔剣族の一振り、【風切りのレン】その人が居るのだから。
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周りの風景も居並ぶ見物人も、ぼやけて霞むような、息を呑む姿。
艶やかな髪は風をはらみ、拡がる度に芳香を放つ。
肌は白く滑らかでありながら、しっとりとした光沢を放ち、
身につけた布地は大きな白い一枚のみだが、各所を隠しながらそれが却って各所を強調してしまう。
ま、よーするに、ほぼ裸の美女がそこに居るんである。
「どーもレンちゃんこんにちは。御機嫌いかが?」
「……驚いた。よくもまぁこの領域へすんなりと侵入できるわね、あんた。」
フン!と形よい鼻から息を吐き出しつつ、
「……普通、魔剣の領域に踏み込んだら、アンタらの精神なんて一瞬で終りよ?判ってるの?」
しかし、多少の興味はあるらしく、足を組んで座り、傍らのテーブルをトントンと叩きながら、
「で、アンタ何しに来たのよ。」
「マッサージ……かな?」
「はぁー?マッサージぃ?」
呆れ果てたのか、「ぃ?」の表情で暫く硬直化した後、しばらくして、硬直が融けてから一言。
「……マジで?」
「もちろん。それもかなりハードな奴をね。」
「バッカじゃねーのッ!!お前言ってて恥ずかしくないの!?」
顔を真っ赤にしながらレンは絶叫する。
だが、その割りには、
……ソワソワと足を頻繁に組み替え、
……視線の先にある、砥石へ興味津々の表情で、熱い視線を送っているけれど。
「そんじゃ、早速ベッド(砥石)に行こうか?」
「や、や、別に行きたくねーし心の準備とかまだだし……!」
心の準備、っていく気満々じゃね?と、内心でツッコミながら、ヒョイとお姫様だっこで抱き上げた。
「や!ちょ、ちょっと待て!まだ行くとか言ってねーって!おい!」
「まーまー大人しくしておくれ、指先切り落としちゃうでしょーが。」
結局ジタバタしながらも、レンは文字どおり連行されちゃったのでした。
さ!あとはウキウキワクワク♪の展開です。