大賢者一羽
フフ・ヤガーンを案じながらも
健一は、寝たきりの愛恵を連れて
とある場所へと向かっていた。
少しためらいつつの足取りながらも、
そこに向かうことが一番有効だろうという
思いがあった。
「呪術的な事では、『サフラ巫子王国』が頼りになりそうだけど、
あの国って、去年国王と王妃が亡くなって、13歳の女王が誕生したところとか
いってまだガタガタしてるしな・・・。」
だからこれしかない。
そう何度も答えを出しながらも、どうも気が重かった。
速やかにこの状態をなんとかしたい。
何しろ、
街を追い出されて、職と家と金を失い、
眠りから覚めないままの、寝たきりの愛恵を抱えている状態で、
健一は、困り果てていた。
健一は、大きなため息をついて、
うなだれていた頭をゆっくりと上げ、
簡易で作った荷車の上の愛恵をじっと見つめた。
出来ればしなくない事、頼りたくは無い人物ではあるけれど、
今、この時系列のある場所に居る、
この局面をなんとか出来る人に心当たりがあった。
健一は・・・いや、健一と生まれたばかりの花音は、
魔族のしがらみから花音を逃がす為に、
初代大賢者である父(健一と花音の母の)によって
別の世界に飛ばされた、
無理やり知識の伝承<コピー>と、
大賢者の称号を健一に押し付けた上で。
「・・・・あの人に、身内の情と、
人助けという気持ちがあるのか分からないけどな・・。」
こちらの世界に来て探さないわけではなかったけれど、
生きているのか死んでいるのか分からなかった父親である、初代大賢者、
けれど、あの場所、あの日、あの時間には、確実にあの人が居る。