全ての始まり三羽
魔王は、何度も何度もフフ・ヤガーンに幻を見せた、
懐かしいまあま<愛恵>と健一の姿。
フフ・ヤガーンの目の前に浮かんでいる映像は、
眠ったままの愛恵の全身には呪いの紋が浮かび
激しく痙攣を起している映像だった。
「おとおたま<お父様>・・おとーたま<お父様>・・
ケンチ<健一>・・と・・まあま<愛恵>がぁ・・・!!」
慌てたような健一が愛恵に駆け寄り何かを叫んでいる。
フフ・ヤガーンの小さな手が、空中に映された
愛恵と健一の映像に向かって伸ばされる。
「いやぁ・・・・・フフのまあま<ママ=愛恵>(な)の・・・
おえがい<お願い>やめぇーー!」
フフ・ヤガーンの丸い頬っぺたから大粒の涙が零れ落ちる。
僕の言う事聞かないと・・・本当にやっちゃうよ
君のママがああなるのは、君のせいだよ
深紅の魔王は、フフ・ヤガーンの耳元で囁く、
フフ・ヤガーンの心が傷つくように。
あはは・・・・・もっとその醜い泣き顔を見せてよ
もっと傷ついて心が血を流す姿見せてよ
フフ・ヤガーンは、小さな漆黒の羽を震わせて
「だれか・・・だれか・・たしゅけて・・、
おとーたま<お父様>、ケンチ<健一>、
カオンぱあぱ・・・・ぱあぱぁ・・!」
もはや掠れてしまった声で叫んだ。
フフ・ヤガーンは、綺麗な小鳥として
魔王に飼われていたけれど、
銀色の大きな鳥籠に飼われているのは、
銀の髪の綺麗な魔王妃だった。
フフ・ヤガーンがお父様と呼ぶ、ザラドが
世話を任されているのを手伝って
時々正気に戻る、狂気の魔王妃の傍にいるのが
フフ・ヤガーンにとって少しだけ癒しだった。
「私の愛しい子・・・・私だけの愛しい我が子
私のルイド・・・・・その銀の髪も緑の瞳も愛しい・・・」
「・・・・おきさきしゃま・・・・また、まおうじしゃまのこと・・・
わかしゃまのこと、いってるの?・・・・
あいたいよね?・・・・・
フフも、まあま<愛恵>や
ケンチ<健一>にあいたいなぁ・・・・。」
鳥籠の檻ごしにギュッと引っ付くと、
優しい微笑みで、魔王妃は、
フフ・ヤガーンの髪を撫ぜてくれた。