表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様は一級死亡フラグ建築士 ~城からパクってきた銀のスプーンが黒く変色した件~  作者: 藤原ゴンザレス
鳥籠の中の二人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/74

襲撃

 俺は騎士学科だけではなく全校に酒を振舞う。

 なぜか第零軍は道化師の業務に戻り大道芸を披露する。

 ちょっとした文化祭状態だ。

 俺はフィーナと一緒に酒を飲んでいる。

 この世界は未成年は飲酒禁止などという法律はない。

 と言ってもこの世界の酒のアルコール含有量はとてつもなく低いので健康には問題はない。

 自動車もないしな。

 ちなみに俺はと言うと飲む量を控えめにしている。

 フィーナが嫌がるからだ。

 自分自身の名誉のために言うと俺は己の限界というものを知っているので酒癖は決して悪くない。

 問題はローズ伯爵(パパりん)だ。

 脱ぐのだ。

 踊るのだ。

 あの醜態はローズ伯爵の名誉のためにも詳しく描写するのはよそう。

 だから俺はほんと舐めるだけしか飲まない。

 ……内緒で飲むやつ以外は。


「よくこんな量のお酒を用意できましたね?」


 フィーナが余計な事に気づいた。


「も、もしかして……予算を私物化……」


「違いますー!」


 すべて俺のポケットマネーとコネから出したのだ。


「じゃあどうやって……」


「ないしょ」


 ふふふ。王様はなんでもできるのだよ。だって王様だからな!

 俺が完全に勝ち誇っていると俺たちに誰かが近づいてきた。


「陛下。今日はありがとうございます」


 あ、まずい。

 俺はとっさに逃げ出そうとする。

 だがフィーナに襟をつかまれる。


「ど・な・た・で・す・か?」


「酒造組合組合長のご子息のドンくんです……」


 国に関係のない金があまりない俺がなぜこんな大判振る舞いができたのか?

 第零軍の売上を掠め取っているのも事実だがそれだけでは不足だ。

 それは簡単なからくりだった。


「いやあ陛下には新しい酒のプロデュースをしていただきありがとうございます!」


 貴族の女性でも飲みやすい酒。

 それを俺はドンくんと共同開発したのだ。

 甘味とフレーバーを足しただけだけど。

 今配っている酒はそのサンプルなのだ。

 今回の酒盛りはマーケティングもかねているのだ。


「ははは……ヨキニハカラエ……」


「……レオン、私たちに隠れてお小遣い稼ぎをしてたのね」


「チガウヨ」


「ふーん、まだ他にもお小遣い稼ぎをやってるのね?」


 ドギクゥッ!!!

 森で採集した魚とかキノコとか薬草とかを内緒で金に換えているのがバレてしまう!


「れーおーんー♪」


「チョットダケヨ……」


「レオン。あとでお話があります」


「あい……」


 だんだんフィーナがシェリルお母様に似てきている件。

 女の子ってたまに猛獣みたいだよね。

 さて……俺がこうやってイベントを繰り返すのにはわけがある。

 なるべく学生を一つのフィールドに閉じ込めたいのだ。

 いたる所に第零軍の道化師や騎士、それに屋台の店員や見習い騎士がうろつくここでは建物内より目が届く。

 なりより今は全員が全員を監視している状態だ。

 別に事件だってアナウンスしたわけじゃないし、俺たちがは噂を煽ってなんかいない。

 だけど学生たちは察していた。

 この不穏な空気をだ。

 ヤンチャな不良の喧嘩すらすぐに通報されすぐに連行されていった。

 俺は満足だったし、学園では何も起こらなかった。

 だから俺は満足だった。

 だが俺は知らなかった。

 犯人の心の中に巣くう悪の存在を。



 父さんとの演武の次の日、俺は王宮に呼び出された。

 はっきり言って若い王なんていてもいなくても同じだ。

 外交なら外交官がいるし、政治も官僚が7割の仕事を終わらせる。

 軍も戦時状態ではないため治安活動や国境沿いの小競り合い程度だ。

 だから俺も書類へのサインの記入という高校生のアルバイト程度の軽作業が主な仕事だ。

 つまり呼び出されることなどありえないのだ。

 そんな俺が呼び出された。

 それもソフィアが早馬で迎えに来るほどだ。

 大事件が発生したのだ。

 俺はギュンターから巻き上げたジュリエットで王宮に向かう。

 ここ数年で俺とジュリエットはすっかり仲良しになったのだ。

 王宮に着くと馬番にジュリエットの世話を頼み俺は執務室へ急いだ。

 ソフィアを執務室の前で待たせた俺が室内に入るとギュンターが待っていた。


「ギュンター、なにがあった?」


 俺は乱暴な口調で問いただした。

 ギュンターは俺の本性を知っているし、俺個人に忠誠を誓っている。

 キャラを作るのは逆に失礼だろう。

 ギュンターは一礼する。


「まずは無理にお呼びした事への謝罪を……」


「いいから。将軍も仕事だろ。俺を呼び出すくらいなんだから大事なんだろ?」


 内務大臣や外務大臣ではない。

 ギュンターが俺を呼ぶということは治安か軍事だろう。


「はい。それが……メイガン最高法院長が法院内で襲撃されました」


 最高法院とは日本で言うところの最高裁と同じではない。

 この世界に三審制も憲法裁判所もないからな。

 上級貴族や王族への裁判を担当する裁判所だ。

 それにしても誰が襲撃をしたのだろう。

 次の瞬間、考える俺の脳内で事件が繋がった。


「おいやめろよ……もしかして弓矢で襲撃されたんじゃないよな?」


 俺が冗談めかして言うとギュンターの眉がぴくりと動いた。


「ご慧眼の通りです」


 やはりだ。


「それでメイガンは?」


「両手両足、それに両膝を撃ち抜かれ木戸に(はりつけ)にされておりました。幸い命に別状はありません」


「……幸い?」


「さすが陛下。メイガン最高法院長の傷はすべて急所を外しておきながら激痛がする箇所ばかりでした。犯人はわざと生かしておいたと推測されます」


 ……えげつないやり方だ。

 マフィアがバラバラ死体を送りつけるのに似ている。


「ギュンターどう思う?」


「まだ推測の域を出ませんが、犯人は最高法院長の執務室に押し入り、法院長を脅し、ドアの前に立たせると一瞬で最高法院長の両手両足と両膝を撃ち抜いた。そして警備をかいくぐりまんまと逃走した。はっきり言ってかなりの腕です」


 ランボーかよ。

 冗談みたいな話だ。


「現場に弓はあったか?」


「いいえ。弓の遺留品はありません」


「それ以外でわかっていることは?」


「ありません」


「バートに調べさせていた件はどうなった?」


 明らかに動機は法院の汚職だろう。


「斬首の件ですが、原因は庶民法院の賄賂のようです。その件で派閥間での話し合いの末、ギルバート首席判事が斬首になりました」


「罪をなすりつけたのか」


「そういったことも時には必要です」


「俺だったらそういう世間様を舐めた発案をしたヤツを暗殺する」


「その時はぜひご命令を」


 (うやうや)しくギュンターは礼をした。

 やはりギュンターは怖い。


「ギルバートに子どもは?」


「子は若くして亡くなり、孫がいたそうですが行方がわかりません」


「そうか」


 手がかりだ。

 あとはギルバートの子どもを探せばいい。


「それと……」


 ギュンターが言葉を濁した。


「まだあるのか?」


「溺死した判事、バセットですが子がいたそうです」


「はい?」


 なんだ?

 登場人物が増えたぞ。

 どうなっている?


「当時、バセットは新婚だったそうで判事の死後、妊娠がわかったそうです。その後、母親と子の行方はわからないままです」


「ううううううう。わからん! なんでこうなった! 犯人はどんな野郎なんだ!」


 俺は頭を抱える。


「野郎かどうかもわかりません」


「ほえ?」


 俺は間抜け面を晒す。


「確かに長弓(ロングボウ)は腕力がいる男の武器です。ですが学園の事件では短い距離で撃っています。女性でも可能です。あくまで可能性の提示ですが」


「今回の事件は? 目撃情報は?」


「メイガン最高法院長はあっと言う間のことで誰も見てないと主張して怪我を理由に取り調べを拒否してます。警備も不審者を見てないそうです」


 あからさまな態度だ。

 だがメイガンは権力者だ。

 仲のいい上級貴族がたくさんいるだろう。

 怪我で話せないというのも理が通っているのでここで拒否されたら追求が難しい。

 俺は頭を抱える。

 わからない。

 犯人は学生なのか?

 そもそも何が目的なのか?

 復讐なのか?

 だったらなぜ最高法院長を殺さない?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ