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王子様は一級死亡フラグ建築士 ~城からパクってきた銀のスプーンが黒く変色した件~  作者: 藤原ゴンザレス
城からパクってきた銀のスプーンが黒く変色した件

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王の剣

 明らかにおかしい。

 全てがおかしい。

 なぜ兵士が偽王子だと狙う?

 寵姫の息子だから?

 違う。

 寵姫の息子が王になった前例はいくらでもある。

 ハイランダーだから?

 違う。

 庶民の子どころか外国人の血を引いた王もかつて存在した。

 いや正確に言えば、隣国の王族はみな親戚だ。

 今さら血がどうこうと言える立場ではない。

 じゃあなぜ俺は狙われた?

 俺は図書室になだれ込む。

 全員が俺に不都合な真実を隠している!

 おそらく真実を語ったのは学者でもあるギュンターだけだ。

 他は俺に知らせたくない不都合な真実を巧妙に隠している。

 俺は『王の剣』の写本を探す。

 『王の剣』は図書室の奥に半分朽ち果てた状態で保存されていた。

 原典は丸められた羊皮紙に書かれたものだろうが、写本は立派な本だった。

 隣には『王国史』のこれまた写本がある。

 俺は『王国史』の写本の奥付を見る。

 写本をした人間の名前が書いてある。確かアカデミーの教授だ。前に夜会に来たのを憶えている。おそらく信頼のできる書だろう。

 次に俺は『王の剣』を読む。羊皮紙の詩を写本した古い書物なのだろう。奥付にはなにも書いていなかった。

 現代に伝わるおとぎ話とは修辞法が違うのでたいへん読みにくい。学生時代に古文で苦戦したのを思い出した。だがこれが原典に近いのだ。読まなくてはならない。

 『王の剣』は初代国王ジョンの物語。俺の何代か前の先祖にあたる。

 前世の世界でのアーサー王伝説のように伝説の剣を手に入れた青年が王国を作る話だ。

 アーサー王は岩に刺さった剣を抜くが『王の剣』においてはジョン王が聖剣を敵から奪う。

 剣は両手持ちの大剣。簡単に振り回せない大きさの剣であるのは男らしさを競った時代の名残だろう。

 『王の剣』と言われる大剣は玉座の間に飾られている。だが時代背景から考えてそんな長い剣が存在したとは思えない。板金鎧ですらここ数十年くらいでの冶金技術の革新によって生まれた発明品だ。

 『王の剣』の写本にも剣の描写がある。そうそう、子どもの時に聞かされた話では。ジョン王は長くてデカい剣を振り回したっけ。

 俺は数年前のことを懐かしがりながらページをめくった。

 俺はそこにおとぎ話とは違う一文を見つけた。

 王が剣を手に入れる場面だ。

 写本はメタファーだらけでなにを言っているかわからないが翻訳すると、


 『王の剣』は奇妙なことに両手で使う小ぶりな剣であった。


 と書いてあった。

 剣の描写が伝承と違う!

 大剣じゃないのか!

 どういうことだ?

 俺は続きを読む。


 妖しく明滅する蛍の如き運命は、その深き沼によって決し、ジョンは王の剣を奪い神を貫いた。


 ポジティブな表現ではない。

 神殺しをネガティブに書いている。

 つまり初代ジョン王は剣を奪った。

 なんだか納得がいかない。


 次に俺は『王国史』を読む。

 建国史の詳細を知りたかったからだ。

 『王の剣』以外の建国神話の一つもあるだろうと思ったのだ。


 ……ない。

 初代国王にもかかわらずジョン王の功績がない。

 『建国した』の一言しかない。

 どういうことだろうか?


 本当に物語の通り『王の剣』を神から奪ったから建国できたとでも言うのだろうか?


 ……違う。


 文字通りの意味じゃない。

 『王の剣』はなにを意味してる。

 それにはまず『王の剣』を考える必要がある。

 まず『王の剣』は王の権威の象徴だ。この国に君臨するものである証、それが『王の剣』だ。

 つまり……だ。『王の剣』とはこの国そのものを指しているのではないだろうか?

 つまり初代ジョン王は神から国を奪った。

 転生があるくらいだから神も存在するだろうが、この場合の『神』はゴッドのことではない。

 『神』とはこの国を治めていた王に違いない。

 つまり初代ジョン王は、何者から王位を簒奪した……と推測できる。


 そしてここからはどうしても証拠が足りないから想像だ。

 王位を持っていたのはハイランダーだ。

 初代ジョン王はハイランダーの国を乗っ取ったのだ。

 つまりだ……王位の正当性は……ハイランダーにもあるのだ……

 今まで最大の死亡フラグが俺を襲った。

 これは認められない。認められるはずがない。


 王は偽物でしたー。だから今度からどこの馬の骨かもわからないハイランダーさんに王位を返しちゃいまーす。


 誰がこんな無茶な意見を飲めるかっつーの!

 俺が貴族の保守派だったら迷わず暗殺を選ぶわ!


 ギュンターさん!

 なんていう爆弾を渡しやがったんだ。

 知らなくても死亡フラグだけど、知ったらなおのことでかい死亡フラグが立つだろうが!

 俺は頭を抱えた。


 俺は血走った目で生存戦略を練る。

 まずは手駒だ。こちらの駒はローズ伯爵だ。

 最強クラスの肉体派貴族だ。

 彼の立ち回りいかんでは派閥全てが仲間になってくれるだろう。

 絶対に手放せない。

 うん、フィーナを嫁にしよう。

 フィーナのフラグを全力で立てねばならない。

 ゲームのルールがギャルゲーに変わったことには絶対にツッコまないからな!

 次にギュンター将軍だ。ギュンター将軍は今のところ中立派ということになっている。

 だがギュンター将軍は俺に死んで欲しくないはずだ。

 俺に事件のヒントを与え続けていることから考えても高い確率で味方だ。

 ただ、なにを狙っているのかはわからないのが問題だ。

 とにかく懐柔せねばならないだろう。

 報酬か権力を約束するか、どうすれば明確に俺の派閥に入ってくれるだろうか?

 ……違う。

 金でも権力でもない。

 あの男は学者だ。あの男が望んでいるのは真相の解明に違いない。

 だとしたら手は一つだ。


 腹を割って話すしかない。

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