【1】
帝暦1805年4月。ついに、黄の皇国第19代皇帝シェランの言葉は現実になった。赤の帝国が青の王国の宣戦布告に答えたのである。執務室でシェランはぶちぎれた。
「ふざけんなっ!」
通告書と書かれた正式な文書をシェランは大きな机にたたきつけた。皇帝になってからだんだん言葉遣いが悪くなってきている気がする。
「よくもぬけぬけと要請書など送ってこられるわねっ。余裕なくせに用意周到なのが腹立つわっ」
集まっているのはリンユン、尚書令ズーヨン、門下侍中シュンシェ、中書令ミンツァォ、御史大夫ワン・メイ、さらに六部の尚書たち。シェランのキレた姿を見て、尚書たちは身を引く。
赤の帝国の皇帝フェルディナンド2世の親書である。内容は、簡単に言うと、青の王国にくみしていないか調べるから、会いにこい。ついでにあっち方につかないように人質もおいてけ。とのことだった。
黄の皇国も相当広いが、赤の帝国はその1・5倍は国土がある。しかも実力主義国家。かなりの国力を有する大国だ。青の王国には余裕で勝てる。アレクサンドル・デュラフォアがどんなに優秀であっても、その優秀さは軍の指揮官の領域を出ない。シェランでも勝てる。まして、フェルディナンド2世の相手など不可能だ。
来い、と言われているのは各国の代表。つまり、国王であり、もしくは首長だ。黄の皇国の場合はシェランになる。ここまではいい。いや、よくないが、何とかはなる。問題が。
「人質って、わたくしの身内はほとんどわたくしが処刑したわよっ!」
仕方がなかったとはいえ、シェランは登極の際に自分の身内のほとんどを処刑した。嫌なことを思い出させないでほしい。これでも悔やんで毎月墓参りに行ってるのよ!
もちろん、嫁いでいたりして生き残っている兄弟もいるが、少数だ。シェランに要請されて人質に行くような家族はいない。
「……僕が行きましょうか」
「ダメ。リンユンは留守番。わたくしがいなくなるから、皇帝代理を任せるわ。帰ってきたときに機能率が下がってたら怒るわよ」
「……はい」
リンユンがおののきながらうなずいた。リンユンは信用できる数少ない身内だ。そうやすやすと渡すか。そして、何よりも貴重なのは彼が皇帝代理を任せられる相手であることである。
「陛下。人質には、私の妻を出しましょう」
ズーヨンが言った。その顔は悲しげに微笑んでいる。
「そんなことしなくていいわ。お気遣い無用よぉ」
「いえ。私の妻が適任です。私は宰相であり、妻は遠縁とはいえ陛下の血縁に当たります。妻も納得するでしょう」
「そんなことするくらいなら、わたくしが人質になるわぁ」
「ダメです」
全員からダメ出しを食らった。冗談なのに……。しかし、選択肢がないのは事実だ。ここは、ズーヨンの妻に頼むしかないのかもしれない。ズーヨンの妻は、シェランの父の従妹にあたるのだ。
こんなことなら、みんなの言うように結婚しておけばよかったと思う。夫を人質に出せばいいわけじゃないけど。
それを考えて、シェランが赤の帝国に行く不安要素を発見した。
「あ、まずい……? いや、でも、どうかしら。大丈夫……かな」
シェランが首をかしげると、「どうしたんですか」とミンツァォが尋ねた。きれいなお顔が台無しですよ、とシュンシェも微笑む。シェランはうん、とうなずいた。
「わたくし、結婚するわ」
……沈黙。
「はいっ!?」
「相手は誰ですか!?」
「いつの間にそんなことに!」
「まさか、赤の帝国の皇帝と結婚するとか言わないでしょうね!」
リンユンの叫びに、シェランはツッコミを入れる。
「そうならないために国内で結婚するんでしょ。あと、みんな、うるさい」
ばしばし、とシェランは机を扇子でたたく。ミンツァォが冷静に、どういうことですか、と尋ねてきた。
「だって、わたくしは女帝だもの」
「今まで結婚しないとさんざん言ってきたのはどなたですか」
「そうだけど、状況が変わった……いえ。あなたたちが正しかったのは認めるわ」
「陛下は女性ですからね。赤の帝国の皇帝は男性です。陛下が未婚のままでは、無理やり婚姻を結ばれる可能性があります」
「解説ありがとう、メイ」
「礼には及びません。あと、ワン・メイとお呼びください」
厳格そうな外見の割にかわいらしい名前のメイは不愉快そうに言った。これだから、彼女に御史台を任せられる。
とりあえず、男性陣もシェランが突然結婚すると言い出した理由に気付いたらしい。黄の皇国の皇帝が、赤の帝国の皇帝の子どもをはらむとか、シャレにならん。それを理由に黄の皇国が乗っ取られるわ。
「それで、相手は誰ですか?」
リンユンが改めて聞く。シェランは「まだ決めてない」と言う。リンユンは目を見開いた。
「それなのに結婚するんですか!?」
「今決めたもの。せめて赤の帝国に行くまでに婚約くらいはしておかないと」
「って、あと5日しかありませんけど!?」
「……仕方ないわ。これはわたくしが悪い。まさか未婚なのを恨む日が来るとは……。気にしすぎかもしれないけど、フェルディナンド2世は女好きって噂があるもの」
「……ああ、姉上、美人ですからね……わかりました。相手は誰がいいですか?」
「理想は?」
さらにメイも尋ねてくる。シェランは素早く頭をめぐらせた。縁談に一応目を通していたが、そういえば外国からの縁談もあったな。あれはこういう意図だったのか……。
人生経験値が低いと、こういうところで不便である。
「陛下の言うことを何でも聞く者をご用意しましょうか」
シュンシェにからかうように言われ、「そんなヘタレはいらん」と一蹴する。そんな意志の弱い男はお呼びでない。
「では、積極的に陛下を手伝う男を用意しましょうか?」
「そんな野心がある男、わたくしが斬り殺すわ」
ミンツァォにもからかうように言われ、シェランはさすがに不思議に思う。何故だ……。
皇帝の結婚なのだから国益優先。理想はないわけではないが、国の毒となる相手を選ぶわけにはいかないのだ。みんな、わかれっ。
「それで、理想はどんなです」
メイだけはからかうことなく尋ねてくる。だから彼女はいい。
「そうね……わたくしとお茶を飲んでくれるような人がいいわね」
「黙って毒殺されるような男ですか?」
「わたくし、そんなに凶悪じゃなくってよ」
ユーシァにまで言われ、シェランは頬をひきつらせた。何なの、この人たち。
「ほかには?」
「……そうね。わたくしを怖がらない人がいいわ。それと、国を害しない人」
「最後の、理想っていうか国益優先じゃないですか?」
リンユンにつっこまれた。何が悪い。シェランは皇帝なのだから。
「陛下。陛下は皇帝ですが、相手を選ぶ権利くらいあります。好きな相手を選ぶべきだと思いますよ」
あれ? 味方かと思われたメイにも説教された。何故?
「……わたくしには時間がないのよ。婚約なら後で解消もできるけど、結婚して離婚は外聞が悪いもの。多少のことは目をつぶるわ。今日結婚を申し込んでうなずくような人じゃないとだめなの!」
あ、だめだ。それだと野心家が相手になってしまう。そうなると、高確率でシェランは相手を斬り殺してしまう。シェランはガクッとその場に膝をつきたくなった。
ああ、ダメだ。何か癒しが欲しい……。もふもふな猫に頬ずりしたい……。せめてリュシアと話させろ。そこまで考えて、何故か突然リーフェイの穏やかな顔が脳裏に浮かんだ。ユーシァと目があったせいかもしれない。
チャン家は中流貴族。皇帝と結婚するには一応身分は足りている。ユーシァもチャン家の当主であるその父も実力はあるが野心家ではない。どちらかというと、正当に出世していくことを喜んでいる感じだ。とすれば、リーフェイに……いや、落ち着け! 父とウー貴妃のことを忘れたか!
頭の中がお花畑になっている暇はないのだ。シェランは自分が斬り殺した貴妃を思い出して首を振る。あれは、父がウー貴妃を愛しすぎたがために起こったことだ。愛する者同士が結婚する不安要素。しかし、父とシェランやリンユンの母のような例もある。あれも不安要素だ。
駄目だ。どっちもダメだ。ついにシェランは膝をついた。うつむいていたため、おでこを思いっきり机の角にぶつけた。
「陛下!?」
「姉上、どうしたんですか!」
リンユンがシェランの隣に膝をつく。揺さぶられてシェランは現実に戻ってきた。
「姉上。無理に結婚しなくてもいいんです! 僕が赤の帝国に行きますから!」
「ダメよ。それでは付け入るすきを与える……今の我が国に、赤の帝国を止めるほどの力はないわ……」
「じゃあ、青の王国の時のように突っぱねれば!」
「問題があるわ。赤の帝国は青の王国と違って、黄の皇国と領土の接してるのよ」
言われてリンユンは初めて気づいたようだった。戦争において、領土が接しているかは重要だ。島国がうらやましい。
それに、シェランが結婚しなければいつまでもこの状況は続く。少なくとも、シェランが子供が産めないような年増になるまでは……シェランは頬をひきつらせて机にすがって立ち上がった。メイが尋ねる。
「大丈夫ですか」
「心配してないのにそんなこと言わないでちょうだい……ちょっと腰ぬけただけ」
ああ、わたくしの前には障害しか見えないわ……。結婚願望はないが、相手を見つけることの難しさに泣きそうだった。
「好きな人、いないんですか?」
リンユンに聞かれ、シェランは憮然と答える。
「好きな相手と結婚できたからって、うれしいのは自分たちだけでしょ。父とウー貴妃のことを思い出しなさいよ。政略結婚だったらだったで、わたくしたちの母親のようになるのよ? そんな未来が来るってだけでわたくし憤死できるわ」
「……陛下。難しく考えすぎなのでは?」
ユーシァが言った。シェランはは? と彼の方を見るが、口を開いたのはミンツァォだった。
「私は政略結婚ですが、幸せですよ。子どもが3人いますからね」
「私は恋愛結婚ですよ。特に問題なしです。小姑が少し怖いですが」
「ユーシァ。いい度胸ね」
ユーシァとその義理の姉メイも言った。そういえば、ユーシァは意外にも恋愛結婚だった。そうか……そういう場合もあるのか。ミンツァォの所もうまく言っていて、夫婦の危機などは聞いたことがなかった。
場合によりけりなのか? 男女仲の経験のないシェランにはいまいちわからなかった。
「姉上。姉上は父上ではありません。父上とウー貴妃のようなことにはならないと思いますよ。というか、あれは特殊すぎる例だと思います」
「そう……なの?」
なんだか混乱してきた。とりあえず、そばにあった白湯を飲む。何の話だったかな……。
ああ。赤の帝国の皇帝にあうにあたってのシェランの結婚か……。
「わたくしと結婚すると、相手を巻き込むことになるのよね……」
「ですから、陛下は考えすぎです。普通、そこまで考えますか? 私も政略結婚ですが、旦那を振り回しまくってますよ」
メイも言った。ああ、彼女ならやりそう。ただ、問題は、シェランの振り回し度合いが半端ないことだ。
「……まあ、陛下はある意味箱入りですからね」
場を治めようとしたのかシェランの味方をしようとしたのか微妙だが、シュンシェが言った。確かに、シェランはある意味究極の箱入りである。15歳で幽閉されたため、必要な経験が欠けている。
「……とりあえず、行ってくるわ……」
「どこ行くんですか!」
もはやお決まりとなった会話をシェランとリンユンは繰り返す。シェランはリンユンをまっすぐ見つめ返した。
「今すぐ結婚してと言ったら、すぐにうなずく相手の所へ、よ」
と言っても、当然だが、厳しい条件ではある。うなずくような相手は野心があるとしか考えられない。
一度庭に出て伸びをした。視線をそらすと、大きな桜の木があった。桜色が眼にも鮮やかだった。
わたくしは、春を呼ぶ皇帝になれるかしら。いや、ならなければならない……のかもしれない。一度皇帝になった以上、投げ出すことはできないのかもしれない。
だとしたら。自分の隣にいるのは、自分を理解してくれる人がいい。リンユンや、シーファたちのように。
シェランはきょろきょろしながら歩き出した。行動が似ているのなら、もしかしたら会えるかもしれない。会えなければ、あきらめる。
果たして、シェランは幸運だったのだろうか。ほどなくして、探していた相手を発見した。
「リーフェイ!」
なぜか花壇に水やりをしていたリーフェイは、呼びかけられて驚いた表情になったが、すぐに微笑んだ。
「陛下。どうしたんですか」
「いえ、ちょっと用があって……というか、あなた何してるの?」
「水やりですが」
「いや、だから、なんで?」
なぜでしょう? とリーフェイは困ったように首をかしげる。駄目だ。間が持たない。シェランは一気に本題に入ることにした。
「リーフェイ。お願いがあるんだけど」
「それ、俺に出来ることですか?」
「というか、あなただからできることよ」
「何でしょうか?」
ニコリとほほ笑んだリーフェイを見上げ、シェランは言った。
「ねぇ。わたくしと結婚してくれない?」
「はい?」
さしものリーフェイも理解するまでにちょっと間が空いた。数度目をしばたたかせてから言った。
「俺ですか?」
「そうよ」
「陛下、赤の帝国に行くのでは?」
「行くわよ。その前に婚約者だけでも決めてしまいたいの。こんな理由でごめんなさいだけど……」
「わかりました。いいですよ」
今度は、シェランが反応までに時間がかかった。
「はいっ!?」
ただお茶に誘われたかのように穏やかに笑うリーフェイを見上げ、シェランは目を見開いた。
「いいの!?」
「いいですよ。というか、言ったのは陛下でしょう」
「いや、そうなんだけど……半分打算だし、わたくしと結婚したら官吏をやめなくてはならないのよ? せっかく科挙で入ったんでしょ」
ユーシァに聞いたのだが、リーフェイはなかなか優秀な成績で科挙に合格したらしかった。夢見てやってきた官吏の世界だろうに、こんなわけのわからん女の言葉で辞めることになってもいいというのか!?
「……まあ、官吏をやめるのはちょっと残念ですけど、陛下が俺がいいって言ってくださるなら、俺は陛下を取りますよ」
「……」
自分の頬が赤くなるのを感じた。何故だ。告白したのはこちらのはずなのに……。
「ホントにいいの?」
「はい」
「いろんなことに巻き込むわよ」
「わかってますよ」
「……わたくし、我がままよ」
「陛下が我がままだったら、世界のほとんどの人が我がままですよ」
「あ、暗殺されるかもしれないわよ」
「そこまで弱くはないつもりですけど」
シェランは上目づかいに自分とは違い優しげな顔立ちのリーフェイを見た。しつこいがさらに尋ねる。
「本当にいいのね? 断ってくれてもいいのよ?」
「なんでそんなに卑屈なんですか。俺もあなたがいい」
「……じゃあ、一緒に来て」
並んで庭を歩いていると、不意にリーフェイが尋ねてきた。
「ちなみに、俺が断ったらどうなってたんですか?」
「今すぐ結婚して、と言ってうなずいてくれる人の所に行くつもりだったわ。例えば、門下省のハン官吏とか」
「……今、うなずいておいてよかったと心の底から思いました」
リーフェイが苦笑気味に言った。彼はそう言うが、こちらの方がシェランの当初の計画だった。周囲が好きな人はいないのか、恋愛結婚でも大丈夫、とさんざん言うから、まずリーフェイに声をかける次第となった。
ハン官吏は、シェランの言うところの『斬り殺したくなる』野心のある青年だ。王婿に納まっても政治にあれこれ口出しするだろう。ある程度はしょうがないが、程度が過ぎればそれは国の傾きにつながる。しかし、今すぐ結婚しろと言ってそうしてくれる相手は、そう言った野心のある相手しか思い浮かばなかった。シェランの人生経験が浅いからだろうか。
執務室に戻ると、やっぱり、というように微笑ましげに見られた。初めはこのまま受け流そうと思ったのだが、あまりにもみんなにやにやするので報復してやることにした。
「そこ。にやにやするんじゃないわ。シュンシェ。奥様に内緒で買った絵画を真っ二つにして奥さまのところに持って行くわよ」
「やめてください」
シュンシェが笑みを引っ込めて顔をひきつらせた。シェランはふん、と鼻を鳴らすとミンツァォとユーシァにも言った。
「ミンツァォ。あなたが奥様の大切な簪を踏んで割ったこと、娘に告げ口するわよ」
「やめてください。殺されます」
「ユーシァ。2か月前酒楼で飲んだ時、酔っ払って店員の女の人に抱きつきそうになったこと、タオに話すわよ」
「なんですって!」
憤慨したのは小姑のメイだった。さしものユーシァもたじろいだ。そんな兄を見て、リーフェイが笑う。無情。
「姉上。そんな情報、どこから仕入れてくるんですか……」
リンユンがあきれるやら感心するやらで微妙な声を出した。シェランはふん、と鼻を鳴らす。
「あんたはわたくしが赤の帝国に行っている間に見合いすんのよ。候補者だけでも見つけておくことぉ」
「!? とばっちり!?」
「何がとばっちりよ……。あんたに赤の帝国の皇帝の妹でも進められたらどうするの。わたくしは圧倒的に経験が足りないんだからね。打てる手はうっておかないと」
登極してまだ半年。まさかこの状況で戦争が起ころうとは……。覚悟していたが、やはりキツイ。黄の皇国が巻き込まれなかっただけよしとしなければ。
「でも、姉上が結婚するんですから、僕は別にいいのでは……」
「わたくしが禅譲して人質として赴いてもいいのよぉ?」
「すみません」
素直にリンユンが言った。よろしい。話を進める。
「さっきも言ったけど、リンユンは皇帝代理としておいていくわねぇ。リーフェイは連れていくから、手続きは簡単に済ませてね」
「あ、俺も行くんですか」
「だってあなた外交官でしょう」
「けど、もう官吏じゃありません」
シェランの求婚を承諾した瞬間から、リーフェイの官吏身分は失効されたことになる。だから、彼の言い分は正しい。しかし、シェランにとって大切なのはそこではない。
「さっきも言ったけど、わたくしには圧倒的に経験が足りないわ。幽閉されていた5年分を差し引くと、精神年齢的には17・8歳ってところねぇ。しかも、京師をほとんど出たことがないと来てる。外交なんてやったことないわよ」
「アレクサンドル・デュラフォアの使者を追い返したのはどなたですか」
メイが口をはさんだ。シェランはさらに言う。
「だって、アレクサンドルの未来は見えているもの。内憂外患よぉ。赤の帝国は戦争に勝って、青の革命で処刑された国王の身内から新たな王を擁立するでしょうねぇ」
「……」
シェランの言葉に周囲が沈黙した。そんなに変なことを言った覚えはないのだが。ただ、リーフェイが「俺、ついて行く意味あるのかな」と言っているのが聞こえた。
大丈夫。あなたには通訳という仕事があるから。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
非常にいまさらですが、シェランの口調がぶれていますね。真顔でまじめなことを言っているのが本来の彼女です。間延びしたちょっと腹立つ口調は作ったものです。だからよけい腹が立つと。決して私がシェランの口調をつかんでいないからではありません。……たぶん。