表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/53

 不等価交換と、等価な時間軸

気象魔法とのコラボは、まだまだ続くよ?

 ヤケに突っかかってくる年下の少女が画面の中で笑みを(こぼ)す。

 途端になぜかこちらは、癪に(さわ)る。


 年下の割には大きな彼女の胸部装甲(・・・・)が気にならない訳ではないが、それはそれとしてそれ以上に気になる存在と変化していた。


 そう、彼女が伝えた言葉がきっかけ。


工場長(ファクトリヱ)さん?」である。


 だって、チヅルのことをその名で呼んできた、あちらの小さな彼女の正体にチヅルは気づいてしまった。 

『気にはなっていたのよね、彼女のこと……。』

 そうなのだ。

 不覚にも、異世界化した地球にいるチヅルにも相手が誰なのか分かってしまった。


 『ファクトリヱ』という呼称を自称していた当の本人としては、分かり易すぎる呼び掛けだった。

 だって……、艦内工場(ファクトリー)の稼働報告のための日誌にサインするときは必ず用いたものだった。


 三姉妹が居て、ライトンを手なずける人物が居る。そして、彼女(コヨミ)の言動。

「いつだって、私たちは一緒だった。じゃあ、(そちら)でも一緒っていうことでしょう? コヨミ(ファクトリヱ)さん?」

 チヅルが問い返した。


 問い返されたコヨミは、「そうみたい、一人合流が遅れているのだけど、ね。」と呟いて苦笑いしていた。

「ドラゴンステーキは、届いた?」

 コヨミの言葉にチヅルはハッとする。

 あちらのシュガーたちが「人生初」とか言っていた相手は彼女たちの「母様」……。

 詰まるところ、こちらで言えばティアだ。

 ということは…………。


「て、てててててててて、……ティアの料理ってこと?」

 そのものの言い様は、推して知るべしであろう。


「そうよ。それに関しては、あなたも一緒だったでしょう? わたしも、彼女も気づいてからは競争だったもの。旦那様獲得のレースは過酷なのよ?」

 遙か彼方からの通信とは思えないほどのクリアな会話に、入ってきたあちらの情報になぜかアタフタしてしまう。

 それに、今はワタルがメインで料理を作り、彼女たちは饗しているだけに胸が痛かった。


 そんな会話には一切入らないで、Nスーツを詳細に検分していたティアに異変が襲う。

「こんな破れ方をするなんて、膨張率の度合いを超過しているわ。どうやったら、こんな弾け方になるのかしら……。それこそ、一気に膨張した……?」

 などと、ブツブツ言いながら()に取って()めつ(すが)めつ原因の究明に入っていたティアは、自身の(つたな)い、もとい貧弱、もといスレンダーな胸部装甲(バスト)に、むず痒いような痛いような不思議な感覚を感じ始めだした。


 『地平線(ホライゾン)女神の(オーナーズ)希望(ホープ)』の発症であった。


「あぅ…、アタタタタ、痛い? でも…、(かゆ)っ。何これ……んっ、あ、やっ。」

 ティアの嬌声に男性陣が顔を赤くしながらも視線を外せないでいた。

 その感覚にティアは呑み込まれ、自分の体をかき抱いて(うずくま)ってしまった。


「あ…、始まっちゃった……。男性陣を追い出さないと、大変よ。あなたもなっちゃうといろいろとまずいわよ。」

 という、コヨミの忠告にチヅルは素直に従った。なんせ、コヨミはコレ(・・)の経験者のはずなのだから。


「あんたたちは、服を集めてきなさい!」

 そう言って、男性陣に即座に指示を出して、表に叩き出した。

「わ、分かった。サイズ的なものも含めて、さ、探してくる。」

 リュウを筆頭に男性陣は駆け出していった。ちょっと前屈みになってしまっているのは仕方のない反応のようだった。

「全く、あいつらは……。う……ンン……。」

 そう言っていたチヅルにも、異常が発生し始めていた。何とはなしに体が熱いような気がしていたからだ。


 とは言うものの、いま繋がっている通信だけは切ることが出来ない。

 切ってもいいが、現在同期している時間、時代に再び繋がるなんて奇跡、起きるはずもない。

 かといって、このまま悶えているティアに触れる訳にもいかない。

 チヅルまでが感染したら、こちらでは対処のしようがないからだ。

 だからといって、ティアの痴態が相手に流れっぱなしというのも、問題がありすぎる。



「感染してしまったか……。」

 そう、画面の向こうから聞こえたのは幼くとも、威厳を漂わせる声。

 だけど、懐かしいと感じる声でもあった。



 チッン!

「いま送ったそれ(・・)を展開したまえ。遮音性の高い倉庫だ。家具付きのな。古いなじみからの贈り物だよ。この通信はこちらで保持しておくから。あとは男性陣と少し詰めておくよ。」

「新型倉庫を渡すなんて……。セトラくん、太っ腹ぁ!」

 コヨミが叫んでいた。


「新型だから渡すんでしょうが、旧型には付けていない装置がついているよ。」

「自爆装置?」

 コヨミは特撮も見ていたのか?


「自爆なんかしないよ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ