46, 箱のモノ…がたり -②-
少々、短いですが……。
「美味しいな。」
「美味しいね。」
「ハグハグハグ……。」
「ングング……。」
「美味しいんだけど、やっぱ変だよなぁ。」
そう呟くのはリュウ。
そのボヤキを聞きつけたのはティアで、リュウにその理由を問い質す。
「さっきから、五月蠅いわよリュウ。何が変だって言うの?」
「いや、だって………。あのコインってさぁ、俺がじいさんから貰ってもう一〇年以上は経つんだよ? しかもじいさんもまた、そのじいさんから貰ったって言っていたくらいの物。ハッキリ言うと骨董品の部類。それを懐かしいって書いてきたんだよ、造り主の彼は。いったい、どこで見たんだろう?」
首を捻って考え込んでいるリュウを尻目に、健啖家のティアはプリンを次々と片付けていく。
『デザートは別腹』を普段から実行しているティアは、食べ尽くしながらこともなげに持論を展開する。
「きっと、そのじいさんのじいさんと同じくらいのときに居た人から貰ったんじゃないの? リュウと同じように、さ。」
「そうなのかなぁ………。でも一つだけ分かったことがあるよ。」
リュウのその言葉に周囲に居た仲間たちは、その言葉を不思議に感じた。
「何に気付いたの?」
と、簡潔な言葉のチヅルにリュウは続けて言う。
「異星にいるその人は、俺たちと同じ人類で元地球の人という事さ。しかも、俺の血統系譜に近い…人だな。」
そう、俺に近いという事は、因果律的にいっても俺の周囲における一親等級は巻き込まれているかも知れないということ。
「え…、それってひょっとしたら、わたしたちもって事?」
ティアとチヅルが首を傾げながらリュウに問い掛ける。
「ああ、前の時もそうだっただろう?」
…あの映像で……。
言外に続けた言葉に気付いたのか、ティアとチヅルだけではない数人が渋い顔をする。
「「「「「「確かに……。」」」」」」
子供たちとは今回が初めて、ということは次にこの面子での集まりがあったとしても子供たちは近くに居ないことになる確率が高い。
「それって、あたいたちも……なのか?」
そこで不安げな感情を見せたのは、今回、知り合ったばかりの精霊種たち。
だが、ティアは首を振るし、チヅルもその可能性を否定する。
「あなたたちが不安になるのは仕方の無い事だろうけど、とんでもなく厄介な人に私たちとの関係を紐付けられてしまったみたい……よ?」
チヅルの高い分析力は、今までの会話の中に潜む危険を解き明かしていた。
この精霊種たちにとって、青天の霹靂な事に「お前たちの敬愛するジル様公認の精霊王たち」と当のジル様本人が口にしてしまっていた。
そう、すでにこの世界では、彼らの帰順先が公認されてしまっていた。
「「「「「「「ああっ、本当だ!」」」」」」」
打ちひしがれていました、南無南無。