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43, 箱なるもの

「あいつら、箱を忘れていき寄ったが大丈夫なのか? まあ、そのうち気づくか。」

 そう独りごちたジル・バードマン氏はホクホクとして、別の箱を取り出した。


「むう……。この三つの場所にコインを組み込めばいいとは言っておったが、こちらの星には、このサイズと重さに合うモノがないのぅ。さてさて、どうするかな……」

 本来は箱の上部にあるスリットから入れるのだが、その大きさに当てはまるモノがなかった。まだまだ、新しい星で五〇〇年も経ってはいない国だ。


「あー、あったあった。箱あったわよー!」

 忘れていった箱を取りに飛び込んできたのはティア。

 そこで、ジル・バードマン氏が目を丸くしている事に気づく。


「おぬしら、出掛けたのではなかったか?」

 そう言うと、()めつ(すが)めつ手元の箱を自分の方に引き寄せた。

 あとから思えば、それが悪手だった。

 ティアの興味を引いたのである。


 まぁ、どちらも同じ箱で何故かそのデザインも似通っていた。これには、理由があって元々あちらは、ティアたちがこれから行く事になるはずの世界。というよりは行ったあとの世界。


 箱のデザインが似通うのは必然であったろうと思われる。

 そして、向こうで作られていたコインも、さらにはワームコインもほぼそのサイズであった。


「ジル様? その箱はわたしたちの箱ですよね。」


「………んむぅ? いや、こちらだな。」

 ティアのその問い掛けに答えるのに時間を要してしまった彼は、別のというかティアたちの箱を渡したのだが素直には受け取って貰えず、結局アイテム・ボックスの制作者とその協力者という事でほぼ全員がギルドマスターの部屋に集合してしまった。


「ああ、ティア……。ティアが受け取った方がわたしたちの箱でいいわ。」

 という結論に達した頃には、精霊種を含めて全員がジル・バードマンに対して詰問していた。


「で、ジル様? この箱は何の箱ですか?」

 先ほどまで、目の前になかった箱なのだ。ティアたちの持つ箱とほぼ同じ箱。興味を持たない方がおかしいだろう。


「こ、これは……」

「これは?」






「箱じゃ!」

「はい、箱ですね。()の箱ですか?」

「分からぬ!」

「分かりました、質問を変えましょう。わたしたちの箱とほぼ同じ素材の箱で、似たような何かの魔法を感じますが何の魔法ですか?」

 詰問が形を変えていく。ジル様のはぐらかしも巧妙だが、追い詰める方はもっと巧妙だった。

 ………時間は過ぎるが誰も気にしていなかった。


「まぁ、何の魔法かはいいです。どうやって使うんですか?」

 そこで気を抜いてしまったのか。

「コインを入れる、……しまった。」

 思わず口を滑らせたようである。


「あれ? この星って、コインなんてありましたっけ?」

 無かった。


 コインとなる前の板状のモノで、重さによってちぎって渡していたのだ。

 その金属の価値により価格の上昇下落が頻繁で、冒険者などのギルドが発行する兌換(だかん)紙幣の方が信用度が高かった。


「ほほう、どうやって使われるのでしょう?」


 さしものジル様もお手上げだった。

「さあ?」


「白状した方が身のためですよ? でないと、わたしたちの箱との違いが分かりませんから、これもわたしたちのですと申告いたしましょうか?」


「そ、それはぁ………。むぅ、仕方あるまい。その箱は、さる方からの贈り物なのじゃが、そこの扉を開けてみるが良い。丸い穴が三つあるであろう? そこに合致する大きさのコインが必要なのじゃよ。先ほどから、やってはいるのだが、失敗続きなのだよ。大きさとか重さとか言っておったのじゃが。」

 そう、ブツブツとつぶやいている。


「さて。ジル様?」

 ティアが何かに気づいて、そう問い掛ける。

「む、何じゃ?」

 ジル殿が怖気を振るう。


「この世界にないコインですが、どう(・・)やって試していたんでしょうか?」

 いやに断定する話し方に、みなが?マークを頭に浮かべる。



「ああ、なるほど。」

 ティアと同じ結論に至った者が複数名、その場におりました。



「……? あぅ………、しまったぁ。やられたわい。」

 ジル様、降参しました。

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