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41,冒険者ギルド

すいません。遅くなりました。

「行っちゃったね……、あのおじさん…。母さまのパンチ貰ってすぐに立てるなんて、そうそう居ないのに……、手合わせしたかったなぁ」

 そういうのはシュガー。よほどビックリしたのだろう。ガッカリ感がハンパない。


「ま、まぁ彼にもしなければならないことがあったんだろうさ。会える時が来たらまた会えるはずだ。俺たちとお前たちのようにな。」

 シュガーのその物言いに苦笑したリュウは、いつかは会えるんじゃないかという希望を持たせた。

 リュウにも逢ってみたい人?が居たからだ。ジルハマンという希代(きたい)の魔導師。

 あの夢というか、過去からの映像で見た人でもあり、謎の伝言を残していた人でもある。

 遙かな過去でも、そして今も自分たちを導いてくれている人? ………今でも存命しているのか?


「まずは冒険者ギルドに行くわよ。」

 旗を振っている姿が、板に着き始めたチヅルが一同に声を掛ける。

「そうだな、行くか………」

「そうね……」





 ジルハマンから貰った簡易マップに載っている冒険者ギルドへと歩いて行く。やがて、見えてきた三階建ての建物には、ギルドの証である剣と槍のぶっ(たが)いに二重丸に星形の紋章を描く盾が前面にある看板があった。


「ここか?」「ここね」「ここだねっ」

 スイングドアを押して入ると、銀行の窓口のようなカウンターとそこに座って相談や説明などをしている者たちが居る。俗に言うギルド職員という者たちのようだ。

 ただ、種族は様々のようで、角もある人無い人、ケモ耳やシッポのある人、無い人と多彩である。例のイベント後に定住してしまった者たちなのかも知れない。



「新規登録ですか?」「新規登録ですか?」「新規登録だよな?」「新規登録だろう?」

 案内係だろうか、フェアリーというか妖精種というのかチヅルたちの様子を見て羽を持つ身長一〇セチくらいの小人族が何人も群がってくる。

 キャイキャイという甲高い声が響き渡る。そのかしましさに耳を押さえる者も出る。


「うるさ~い」という声とは反対に「わぁ、お持ち帰りしていい?」と、詰め寄る者も。

 前者がジェリィで後者がシュガー。

 クッキィはただじっと見ていた、………獲物を狙う目つきで。

 そこのところはティアにそっくりだな、とリュウは感慨深げに頷いていた。

 あのチーム対抗戦の時の彼女がまさにそれだったからだ。

 どうも、気になる個体が居るようだ。


「あんたたち、次に騒いだらワイバーンのエサにするって言っていたわよね~」

 そう物騒なことを告げる受付嬢たちと妖精種の追っ駆けっこが始まり、さらに騒然としてくる。当然にして、羽を持つモノの素早さは見事な回避運動を見せて、逃げ回る。


「へへ~んだ、捕まらないぜ!」「()さん、こちら~」「それ、シャレになってないって~」「つかまらない……」


「クッキィ、あれ…」

 だが、あまりに五月蠅いので、耐えかねたティアがクッキィにアイコンタクトして、蜘蛛の雲くんを発動させた。


「クモくん、発動」

 小さな声で確実に発動したそれは外見上は小さな雲にしか見えず、妖精種たちも侮っていたのだが…………。

 彼らにとっても頭上高く上っていったかと思うその頂点で、微細な糸を振りまいた。

 それこそ、雨が振りまかれるような感じで。


「ぎゃー、助けてー」「わぁ、取れないよー」「俺は美味くないぞー」「とって……」

 蜘蛛の糸に捕らわれた妖精種の案内係たちは、青ざめた顔で、必死にもがき続けていました。それにしても受付の職員も、冒険者たちも面白い見世物としてしか反応しないくらいには、彼らの存在にある種の諦め感を持っていたのだとリュウたちにも感じ取れたものだった。



 階下が五月蠅かったのか、その男は二階へと続くドアからのっそりと出て来た。

「あ、ジル様~、ジル様取って~」

 妖精種は口々にそう言って助命を嘆願する。


「……え…、「ジル様」?」

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