40, 光の扉なるもの
パットと、ヒリュキと、マキシ・マが出会った瞬間、意識が広がった。
そして、唐突に意思の交感が始まった。
『そうか………、君たちがそうだったのだな。』
ヒリュキと領主マキシ・マクド・マクシ・マキシマが、その囁きに驚く。
『お父様!』
そして、パットもまた……。
『うむ。愛し子よ、その力をその二人のために使ったか……。だが、今再び、光の扉が出現しようとしている。わたしの力ではこの次元の厄介な壁を越えられん。この壁の向こうにエテルナがいるというのにな……。』
悔しそうなレシャードの言葉から、滲むものはウソでは無いようで、パットは母が死んだはずなのに、ということを言い出せないでいた。
『お父様は、ルナ母さまのことを愛していらしたのではなくて?』
疑問に思いながらの問答、次の父の言葉にパットとヒリュキは唖然とした。
『ああ、愛している。だが、私の本来の時間軸はこちらではないのだ。これから開こうかという世界の扉の向こうがそう……、本来の時間軸。私の妻は常にエテルナであり、娘はパトリシア。そう定められていたのだよ。だから、あちらには、エテルナという私の妻がおり、パトリシアも存命しているはずだ。此度の召喚が何を意味するのかは分からない。向こうの彼らに必要な条件の一つなのかも知れないがな。』
『では、先程から何か感じる引力みたいなものがその召喚とやらの照会という現象なのですか?』
さっきから、パットには何かモヤモヤした力が反応していた。何か、ひどく親しい者からの救難信号、居たたまれないくらいの激しさで、呼ばれていたのだ。
そして、ヒリュキにもマキシ・マにも同じような引力が働いていた。
『そう……かもな。私はあちらの世界からこちらに落ちてきた。いつ戻れるやも知らぬ。もし、エテルナに……』
意思の交感がいきなり途絶えた。
何が……と思った時には、抗えぬ強さで光り輝く円形の図が回転していた。
三人のいる足元で。
「まさか……、これが光の扉?」
ただし、それとは別に、ヒリュキの頭上に卵が生えていた。今までヒリュキの頭上には何もなかったのに……だ。
それを知らぬままに、ヒリュキとマキシ・マ、そして、パットの三人が、いずこかへと転移してしまった。その行く先は知れず。
だが、その様子を見ていた、マキスとマキマキ都市長は恐慌に陥りながらも、次善の策を模索していた。つまりは、魔騎士王国への報告だった。
明らかに様子の違うヒリュキたちを見やっていたリュウとティア、チヅルたちは、その重大さに気付いていた。
だが、ひとまずは冒険者ギルドに行き、登録と共に情報を集めることしか出来ないとも分かっていた。
「ひとまずは、俺たちに同じ事が起きないとも限らない。こっそり付いて行ったライトンの扉が開くまで俺たちがしなければならないことは少なくないぞ。」
歩き始めたリュウたちを遠巻きにして、マキスやデクスたちが見守るように付いてきていた。
その行動は見張っているようでもあり、見守っているようでもありという、不思議な光景であった。
彼らは一体、どこへ……。
何が待っているのか?