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37, ヒリュキという放浪者

こちらは、お久しぶりです。少々手間取りました。

「久し振りだね、ティア。」


 あの苦しい戦いの中、消耗していく仲間たちを支える使命を持ちながらも支え合った索敵情報室の中の特殊メンバー。ヒリュキ・サトー主任とガルホ・スターロがメインとなっていた超越感覚能力(ESP)を、メカニズムの一端としたS・S・Sセンサリィ・サーチング・システムルームを担当していた者であり、ティアと同じ戦いの中の仲間。


 リーブラ隊隊長パトリシア・レシャードはヒリュキ・サトー主任の婚約者だったが、人類を護る戦いで命を散らした。


「本当にお久しぶりです、ヒリュキ・サトー主任。」

 感慨深げに話すのも無理は無い、


「ああ、本当に。僕は、あの戦いの後すぐに艦を降りてしまったが、行く当てなど無くて、ね。戦いが終わった後だから、世界をゆっくり見て回っていられたはずなのに、どうしてもすぐに彼女を探してしまっていた。 本当に…………未練だよね。」

 あの戦いが在ったから、出会えた半身だけど、ね。笑顔で言うが、悲しい笑顔だった。


「いえ、私も今でも父を探してしまうことがあります。特に男性と話すときには………」


「フフ、そのようだね。彼かい、あの時の夢で出会ったって言っていたのは? ああ、本当だ。ライデン先生によく似ている。」


「あ、あれ。私の父をご存知でしたか?」

 ヒリュキ主任はティアよりも年上ではあるので、どこかで接点でもあったろうかと不思議に思ってしまったのだ。


「あれ、知らなかったのかい? 僕らのいたあの部屋(S・S・S制御ルーム)のエネルギーの総括をなさったのがライデン先生だよ。」


 これには、ティアも寝耳に水。開いた口が塞がらない。あ然ぼう然。

「えぇぇぇぇええええ………! びっくりキョロキョロ」

 驚きすぎて、言葉にならない。


 ヒリュキはやんわり微笑みながら、「ティアがびっくりしてる……、初めて見た。」と感心していた。


「だって、あの部屋の構造を思い出してごらんよ、敵に見つからないような電磁波を発射して索敵していたんだよ? しかもこちらの存在を消すような感じのエネルギーの流れとか、ライデン先生も実証確認のデータを取っていたはずさ。だから、僕はそのあとの事故に疑念を感じているんだよ。今となっては確認も難しいのだがね。でも、ゾーディアクには搭載されているのだろう? またいつかの為にさ……。」


 ヒリュキの考察に驚くが、いま、父はいないのだと、ちょっとだけ寂しく思った。


「そうですね………、でも、そんないつかなんて来ない方が良いです。」


「まぁ、そうだね。本当に……」


 その後も近況を話していると、ティアの和む気配に気付いたみたいで、リュウと子供たちがやってきた。


「あっちは何とかなりそうなんで、子供たちも気になるって言っているからこっちに来てみた。」

 リュウは、そう言って右手を出しながら、ティアの横に並ぶ。


「ヒリュキさん、ティアがお世話になっていたようで、ありがとうございます。」

 そんな言葉を発するとは思わなかったティアがびっくりしていた。


「リュウ、あんたそんな話し方も出来たんだ………?」


「うわ、非道いな。僕だってこれくらいなら……」

 二人の会話をニコニコしながら聞いていたヒリュキだったが、ある言葉に気付いた。


「………子供たち?」

 リュウの後ろに隠れるようにジェリィたちが顔を覗かせていた。


 ヒリュキの目線が透ったのに気付いたようでピュッと引っ込んだ。

「おお……? え、子供たち……ええっ! びっくりキョロキョロ!」


 他人の子供とは言えない見えない何かが通じているような感覚に陥ってヒリュキは当時のティアの姿を彼女たちに見出した。あの時の彼女(ティア)がそこに三人居た。

 え………、三人? えーーーーーー。


「ティア、いつ産んだの? 知らなかったなぁ。え……「お世話」? ってことは、彼が旦那さんかい? いつ、結婚したの? アレ………、あれから七年か八年だとして、彼女たちはどう見ても七歳か八歳に見えるし、彼はあの時は居なかったし、え………、あれぇ?」


 いつも、冷静に事を運ぼうとするヒリュキがそんな慌てている姿を(さら)すとは信じられなくて、ティアは顔を朱くしながらも笑っていた。


「ヒリュキ、落ち着いて。それとあまり大きな声で話さないでください。まだ恥ずかしいんですから」

 モジモジするティアのその動作に衝撃を受けながらもヒリュキは何とか落ち着こうとする。


「新鮮だ。そんなティアを見られただけでも僕はこの星に来た甲斐があるよ。」

 そう言ってヒリュキは自己紹介を始めた。


「ヒリュキ・サトー、ゾーディアク所属S・S・Sルーム専属。ティアとは、魔騎士(サタヌート)索敵任務で一緒に仕事をしていた。三十三だ、よろしく。」


「サー・アン・リュウ、ゾーディアク任官二年目主計課及び火器管制課所属。ティアと、今回の航行前に結婚した模様? 十六です。」

 後半、少々首を捻りながらの言葉に、どういうこと? とティアに振り向く。


「ティア・ムーンライト、ゾーディアク所属。レディアーク艦長。今回の航行前に結婚した模様? 十八です。」


「おおっ、姉さん女房か!」

 そんなことを口走ったヒリュキは地面に沈んだ。顔を真っ赤にしたティアのアッパーカットが見事に(あご)に炸裂していた。


 それを何でも無いようにして立ち上がったヒリュキもヒリュキだが。


「ジェリィです。」「シュガーだよ、おじさん凄いね! ティアママのパンチ食らって、すぐ立てるなんて……」「クッキィ………」


「………お、おじさん…………、ぐはぁ。」

 ヒリュキはシュガーの言葉のパンチにノックダウンされました。

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