Xア$-&ィ、%Φ-porsguk? -1
近々、続きを……。
「Xア$-&ィ、%Φ-porsguk?」
発音は、しっかり銀河標準語なのだが、ホロ・キューブに映し出された言葉はあちこち文字化けしていた。これは一体……?
いまは、地図にあった都市『マオニガシ』に到着し、冒険者ギルドなる場所を探していた。領主マキシ・マと記載のあった御仁は、この都市の統治者で有り続けている……二百年ほど。正確にはマキシ・マクド・マクシ・マキシマといい、本人を含め名を呼ぶたびに舌を噛む人が続出したためマキシ・マと略称で呼称することにしたそうだ。
この都市の特徴は一目で理解出来た。
住人たちの頭上に特徴が有った。
「つ、角が……、生えているなんて?」
そう、彼らの頭には多種多様の角が生えていた。もちろん、角の生えていない人たちも居るには居たが少数派でしか無かった。
人間なのか魔人なのか、判断出来ずにいたが、門番に教えて貰った道筋を歩きながら冒険者ギルドへと向かっていた。
「彼らは、伝承に在った者たちなのだろうか」
門番からの早馬が彼らの風体(身なり)を明確に都市の統治者マキシ・マクド・マクシ・マキシマの元へと伝えていた。都市『マオニガシ』の門は四方に存在する。北、東、西、南の四つ。
人の出入りの多さからその順番に門番の交代が順次行われる。北へ就く者は、半日で交代。東へ就く者は一日で交代。西へ就く者は一日半で交代。南へ就く者は二十四時間を三交代。つまり、八時間に一度の交代。ただし、南の門は閉じられない。他の門は緊急事態が発生したなら、直ぐに閉鎖される。そして、南門には番屋が二ヶ所ある。この都市の構造は遙か昔から、この形態を連綿と続けてきた。そう、古代の都市使用書に記載されている。設定者はジィル・ハン・マァムと読める。その時々の訳の仕方によって別の名前で呼ばれることもある人物。
ま、つまりは、彼である。
南の門は、厳重に管理されているのだ、昔も今も。ここを訪れる者は、例外なく都市使用書に名が記載されていた。一人の時もあれば数人の時もあった。彼もしくは彼女が冒険者登録をしたとき、都市使用書に有る名前が居住承認の掲示に変わる。
南門とは、そういう場所なのである。
始まりの都市とは、何らかの理由でこの都市もしくは樹海へと至った者たちの再スタート場所といえる保護区なのである。その理由は様々在るのだが……。
なお、南門からの訪問者たちの名は、反対側の出立の門、その隣に名が刻まれている。
それは、すなわち彼が見守っていますよというメッセージを送っているという事だった。
そんなこととは露知らず、お登りさんよろしく行動していると、子供たちが走ってくる。
津波のようなそれは、良くない意思を湛えていた。生きるために必死なのは分かるが、そこから未来は生まれない。
その速度に引き攣りながらも、彼らの狙いを外すべく動くチヅル。
そして、野次馬たちの動きにも、注意を促すワタル。今は刑務所にいるお袋と親父から、教えて貰っていたことがあった。走る子供の目の動きと、それをカバーするように動く野次馬。そこにいるのは、利害関係が一致している者たちなのだと。
「ティア、三歩左へ、リュウ正面で、直下へ正拳突きハーフ。周囲警戒よろしく。ライトン、モードリバース、2立米竜頭、ハーヴ全周で重力制御レンズ、ミントは鏡面反射展開、迷彩よろしく。」
ワタルの的確な指示が飛ぶ。チヅルやティアとは系統が違うが同等以上の明晰な考えが冴える。チームリーダーといえど、その指示はある意味、必要不可欠なことであった。
「「「「ヤー」」」」
それを建物の影から見ている者たちは、今までの訪問者たちとは、対応が違うと見抜いていた。避けるだけじゃ無いようだ。だが、何をするつもりなのかが分からなかった。
ティアが左へと動くと、子供たちの視線が動く。集団から一人がはぐれる。その意味に過去を照らし合わせて、出た結論からイケると考えたようだ。間合いは5メルに縮まっていた。
「リュウ、GO!」
ワタルの声にリュウは直下にモンライ流の正拳突きを地面に寸止めした。
本気の拳の寸止め、猛烈な土煙が舞った。
いきなりの土煙に周囲は愕然とする。面白い見物だったのにと。
この始まりの都市の名物は、これからの都市で経験するかもしれない出来事の寸劇で有り、試練でもあった。ただし、子供たちは本気で狙っていた。
掏られたものと同額の補償金は都市の管理部から被害者に支払われるため、自らの小遣いを増やそうと努力していた。
だが、何もその意図を知らないまま、数の力で襲われることは、無差別攻撃や虐めと同じ意味を持ち、そこに存在する悪意は今まで見逃されてきていた。そして、その悪意は訪問者をも影響下に置いていた。弁償しようとしまいとそこに生じる歪みは被害者にとって余りにも大きかった。
即ち、やられる前にやれという事。だが、弊害が発生していた。
力の無い者にとっては暴力で有り、力強い者にとっては免罪符になるという二律背反の状態。
最初の都市としては実力主義を教えたかったのかもしれないが彼らをここに誘った彼としてはやや遣り切れない実情を孕んでいた。
だが、今度の訪問者たちは、数の暴力に慣れきった子供たちや市民や企画者たちの考えの斜め上をかっとんで行く格上の存在だった。
急速に広がる土煙の中、疾走してきた子供たちは平らな地面にあった何かにつまずいて生暖かいもののうえに転がっていった。そして、真っ暗になる。完全な袋小路だった。
「な、なんだここ……。マキス、光を点けてくれ……」
「わかった、デクス。光よ、在れ……、うわぁ!」
巨大な舌、研ぎ澄まされた牙が並んでいた。何かの口の中に居ると知り、驚愕の声を上げていた。
土煙が納まり始めた頃、その外側でも騒動が起きていた。
南の門の外にいる樹海の竜にそっくりだった。なぜかその巨大な竜の頭だけが存在していた。14人から居た人間は影も形も無かった。
もちろん、走っていた子供たちは土煙の中へと入ったのだ、巨大な竜の頭のどこなのか想像も出来た。だが、どうやってもその竜の口は開こうとはしない。攻撃魔法を使っても弾かれるのだ。弾かれた魔法は有らぬ方角へ飛ぶため、数発で止まる。
そして、首の後ろには切り口もなければ、古傷もないし、新しい傷も付かない。
「な、なんだこれ?」