置いてきぼりの若者たち
風邪で一ヶ月、マスクしてました。文章も途中で止まったまま、過ぎてしまいました。何とか、書き上がったので……。さぁ、次だ。
「さあ!行くか。『ルウ』、ジェットスク〇ンダー、ゴー! チヅル、東に行く!」
リュウは『ルゥ』の好きな古代アニメの台詞を口にすると、走り出した。
「じゃあ、わたしは北ね。『チャァ』行くわよ」
ティアは軽やかに走り出す。足下の不確かさなど目もくれない。『ルゥ』も『チャァ』もさえずりをやめて、それぞれの主に向かって飛び立つ。
ダカダカダカーっと走るリュウに追いつくと、『ルゥ』は翼で速度を合わせ足をうまく広げる。リュウが少し飛び上がったところに合体。翼をちょいと前に出して、加速していく。
「「「「「「おお!」」」」」」
細かいところまで似せるとは………。ワタル達も目が点になる。
しかし、リュウは頭を抱えていた。
「なぜ、みんなそこまで指摘出来るんだぁぁぁぁぁぁぁぁ」
知らないところで、リュウの祖父のコレクションは大流行になっていたらしい
「コ、コホン。リュウもティアも一匹は確保で、よろしく」
顔を赤らめたチヅルが指示を出す。
さて、北に向かったティアはNスーツのデータを変更しようとしたのだが、走っていたため、ちょっとタッチをミスった。空に浮かび上がっていたリュウは、自分の意思とは別に視線がそれをとらえた。男だもの、しょうが無いよね。
なんとなく、それも祖父のコレクションの中にあった背中に大きなリボンを付けたセーラー服で戦う少女のものに似てる。
「ラブミー!『チャァ』ァァァァ!」
頭上を軽快にターンして『チャァ』が尾羽根を伸ばして、鳥の恐竜に光速で突っ込んでいく。絡め取るのかと思いきや、一体を両断してのけた。
「たのしそーだね……」
地上を眺めるままのシュガーは元気が無い。自分の花は羽化したものの、まだ意思を持つまでには至らないため、リュウ達がやった様なフルダイブが出来ないのだ。
加えて、ソルトの魔法である『位相制御』が封じられていた。
ハーヴの重力制御との連携もうまくいかない。
クッキィにもジェリィにも、現状の打破のための策が浮かばない。
「たのしそーだね……」
そう呟くしか出来ないシュガーはなぜか? アイテムボックスと称されるものの扉に寄りかかっていた。
と、どこかでチリンチリンと音が鳴る。地球上からの転送便の到着を意味していた。慌てて、どけようとするシュガーの目の前にウッディの『ライトン』が顔を出す。
物資の転送のために大きく開けた口の中に別世界が広がっていた。
「あーーーーーーっ、どこでも〇アだーーーー」
シュガーの目の前にある『ライトン』の口の向こうに見知らぬ世界があり、みんなが楽しそうに戦っていた。「超電〇、Vの字斬りーーーー」とか、「アイス〇ッガー」とか、「サ〇ァイア・アロー」とか聞こえてくる。なぜかみんなノリノリだ。
シュガーの言葉に唖然としたソルトだったが、聞こえてくる言葉に決断を下す。
「ジェル、ガァコ、キィ坊、ハー、ミン、行くぞ。メビュース、起きろよ?」
主の声に蛇のメビュースが姿を現す。常に頭の上で寝ているのだが、とぐろを巻いているその姿には、ソフトクリームを想像させられる。
どうしても笑いを誘発させられるため、ソルトはなかなかメビュースを見せたがらない。しかも、ソルトが呼びかけた言葉に対して様々なパンチや蹴りなどの報復が浴びせられていたのだが、いまはそれどころでは無い。一刻の猶予も無いのだ。
ソルトの魔法『位相制御』が増幅される。彼のヒヨコ、蛇のメビュースが自分のシッポを咥えた『ウロボロス』形態のまま、ソルトの頭上に浮かび上がる。
「位相制御!」
そう、転移した。『ライトン』の向こう側に……。
転移した先で待っていた言葉は、
「あんた達、どこから出てくるの?」
という、驚いているチヅルの叫びだった。
過剰に収集する羽目になった、資料と食料と有用物資の転送に『ライトン』の口を開かせた途端、ソルト、ハーヴ、ミント、ジェリィ、シュガー、クッキィの六人が転移してきたのだから。
折角、乱入されない様に、『フェニック』に空間を歪曲させていたというのに。
焔系の魔法に有ったからなのだが、まさか、その歪みを超えてくるとは思いもしなかった。
だが、子供達の次の言葉にあっさり沈黙させられた。
「母さん達だけってズルいよ。僕たちだって、全力出せる場所も相手もそうは居ないんだからね」
そうなのだ、チヅルたちがノリノリなのは、そういう理由が有ったからなのだから。
ゾーディアクの全艦観測態勢の中、それでも、全力を確かめながらの戦闘はある意味、楽しかった。
それも、これもの戦闘スキルの開示で有る事も含めて……。
だからといって、簡単に戦闘に参加する許可は出せない。
「あんた達のヒヨコのスペックを提出しなさい」
それが最低条件、とばかりにチヅルは言い放った。我らがチームリーダー様は、旦那様と一緒に最前線に居たからだが。