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おまえは……、なにもの

「『あの箱』って言うのは……、俺たちの国で造っていた魔道具の一つです。持ち運びがイマイチ不評でしたけど、対になる箱があってその箱に跳ばせるというモノでした。まだ、俺たちは小さくて出力の安定にも欠けていましたし、容量の大きさも一段階上の改善をさせてみようかというところであの闇い雲が発現したのです」

 ソルトが三人を代表して、話を進める。


「それで、私たちにも問い合わせが来ていたのね…」

 納得した、とジェリィが言う。

「でも、今の技術で製造つくれるのかは不明です。母さんとキィ坊なら可能性は低くないと思っています」

 ソルトの言葉、『キィ坊』にその場にいた大人全員が?マークを顔に浮かべた。


「キィ坊って呼ぶな!!」

「!?ぐはっ」

 顔を紅くしたクッキィがソルトにかかと落としを入れる。一G下の中で、しっかり垂直に跳んで頭に蹴りを入れるとは、さすがにシュガーの妹である。かかと落としを受けたソルトは、静かに床に沈んだ。


「ま、まあいい。その『あの箱』については、研究製造の認可を出しておこう。こちらでも考えていることがある。それも進めよう」

 タガワ総帥の呆れと恐れの混じった口調が、その場に居る者たちの総意であった。


「「キィ坊……」」

 二人の姉は呆れ、

「「馬鹿だな……、ソルト。まぁ、判るけど……」」

 二人の弟は呆れつつも、納得していた。離れていた三年間は、凄く長かったからだ。


 幼い彼らが成長していくように、ひよこがひよこのままでいる時間はどんどん過ぎていく。さえずりを始め、やっと付けられた名前にしっかり反応する。ティアのひよこは、チャァ、リュウのひよこはルゥ。互いに呼び交わしていたさえずりから付けた。それにしても魔法の花(?!)であるひよこだから巣立ちは無いと思うが成長していく速度は変わらない。何をエネルギーにしているのであろうか? 未だに解らないままである。


 リュウとティアの頭の上のひよこは羽ばたきを強めていた。羽の力が強くなっているようだ。というか、リュウとティアの頭の上だけでなく、チヅルたちチームメイトの頭の上を駆け回っていた。チームメイトたちが慌てて離れる。約五㍍も離れると足場が無くなるらしく、リュウやティアの頭に戻ってくる。そう今も『〇ャイルニャーオン』と、羽を畳んでリュウの頭の上の巣に落ちてくる。 どこでその知識を拾ってきた?

 最近変わったことといえば、リュウやティアの頭の上にあった巣に変化が現れていた。

 鳥の巣らしくなんかの茎の集まりだったものに白やらピンクやらの花が咲いてきたのである。リュウの頭にはシロツメクサとアカツメクサらしく、ティアの頭にはシロツメクサの花冠が現れていた。葉っぱも生えている。逆にこちらがメインかもしれない、クローバーだから。


 そのやんちゃなひよこの成長は、俺たちの地球降下作戦の始まりを意味した。

 ただ、リュウの父ゲンガよりもたらされた披露宴の食材の目録は超古代のニッポン国にあった電話帳(フォンディクス)をやはり軽く凌駕(オーバー)していた。こんなに集めて、何を作る気なんだ?

 だいたいそんなにコンテナに入る訳が無いだろうー、ウガーとか思っていたら、チヅルさんと、その子供たちとキィ坊(笑)の『あの箱』の研究成果が披露された。


 それは、一㍍四方の折り畳みコンテナだった。取っ手のついた底板を中心にサイコロの展開図よろしく四方に広げていく。底板の中心に凸レンズみたいな強化ガラスが埋め込んである。そこに押し花されていたのは、ソルトの頭上に咲く花ホウセンカだった。同じように互いに向き合って立つ板には、ミントの花である向日葵とハーヴの花である小菊がそれぞれ押し花されていた。


「何ですか?これは……」

 魔法の花が押し花されていることに違和感を覚えながらも、この不思議な箱は何なのか説明してほしかったのだ。


「アイテムボックスの見本よ」

 チヅルさんの言葉にリュウの頭の中が一瞬、ピンクのカバで埋め尽くされた。


「っはぁ? 今、さらりと言いましたね。何ですか? その【アイテムボックス】って…」


「あなたも気付いているでしょうけど、あの目録の素材をそのまま収容することは無理。だったら、無理の無いように跳ばせば良いと思ったのよ。対になる【アイテムボックス】にね。ソルトたちに少し話を聞いているのだけれど、私とウッディの国って、魔道具というものを造っていたそうよ。それも【アイテムボックス】(それ)を独占的に、ね。ほんと私らしいわ…」

 チヅルの少々呆れた声には、リュウとしても反応しずらい。本人も無茶を話していることに気が付いているからだ。

「でもね、これが切り札になるのよ。あと少しの改良でね」

 自信がうかがえる言葉だった。


「でも今、俺の前に『あの箱』の見本を持ってきたということは、その改良に必要な何かがあるって事ですよね?」

 付き合いは長くはないが、チヅルの思考が読めるようになっていた自分にリュウは驚いていた。ひよこの成長も関係しているのかもしれない。

「ズバリ、言うわよ。あなたの花が欲しいの。その底の知れないパワーのある花は、ソルトたちが過去に見ているの。この魔道具の中枢に関係あるということを、ね」

 リュウは男が女性に対して、言ったら問題になりそうな言葉を女性に掛けられてしばし、悩む。欲しいと言われても、本人にしか触れないものをどうやって? 疑問が尽きない。


「どうやって取ろうというんです?」

 リュウがいくら考えても判らなかったのだが。


「私たちはあなたの頭上の花に手出しは出来ないけれど、あなた自身は違うでしょ。だから、ひとまずあなたが自分の花を取って頂戴。取っても無くなったりしないわ。この子たちの花で実証済みだから。でもしばらくその花だけは力が落ちるわね」

 それで、あの押し花状態になっているのか?


「はあ、これでいいすか?」

 シロツメクサを一輪指先につまむ。それを見たチヅルが両手を何か光らせて、猫だましのようにそれを挟み込む。挟まれた花は、レンズ状の何かに挟まれていた。

 リュウの手元の花はグッタリしている。元のところに差そうとして、頭上のひよこ、ルゥの巣の処に持って行くと、パクリ。

 食べてしまった。チヅルが唖然としていると、また元気に巣に生えてきた。


「これは……、考えていなかったわ……」

 チヅルが頭を抱えていた。

「「「えぇー、いいなぁ」」」

 ソルト、ミント、ハーヴが同じく頭を抱える。

 それを首を傾げてしおれたソルトたちの花も、それぞれの頭に飛び移ってパクリパクリと食べていくルゥ。リュウたちの話を理解したかのような行動に少し驚いた。

 食べたルゥが身震いをすると、光の粉が落ちる。そこから新しい花が生えてきた。

“ルゥ、おまえはそれの管理人か?”

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