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光と影なる者

 その搭乗員とはショウ・(レヴィン)・メナンとジョウ・(ラムゥ)・メナンである。その二人によって、有名な死刑宣告は報道された。


「ジルハマンという人が話してくれた。僕たちに明日(未来)は無い…と。地球に墜ちる、と」


 それは、彼らの誕生パーティーに発表された衝撃的なものだった。殺到するマスコミに二人の答えは、


「いつかというのは、教えてくれなかった。夢の中の話だったし、僕たちにも衝撃的なことだったから…」


「ただ、二人とも同じ夢を見たんだ。全く同じ…」


「そして、重要なことはもう一つ…僕たちはこの地球(ほし)に誰も住めなくなると言うことも聞かされ

た…、もちろん映像付きで…ね」


 さらに衝撃的な発言に騒々しかったマスコミが突然静まり返った。

 誰もがいつかはいつかはと思っていたことに対して、いきなりの告知であった。


「だからといって、このまま死を待つのは僕たちもみんなもお互いに不本意だと思うんだ。で、これを見ている人たちに相談なんだけど、ちょっと特殊なものを作りたいのさ、僕たちは…。この大地、地球のような船をね、考えているんだけど。手伝ってくれないかな……」


 ショウ・L・メナンはカメラの砲列に顔を向け、穏やかに微笑んだ。まだ十代の少年たちの言葉とも思えないような内容の発言であった。


「単純に言えば、各大陸ごとのコロニーを作りたいのさ。人々の望む所にね。そして、それを運搬する船も…大きいくらい大きすぎるけど、必要だ。だから、人手が大量に必要なんだよ」


 やがて、人が集まりだした、先の見えない事態に戸惑いながらも自らの足を踏み出すことを決意した者たちである。一人一人がショウとジョウの前を通り、巨大な工場へと足を踏み入れていく。と、一人の男性が通り抜けようとしたとき、ジョウがその手を取る。


「うん、君はこっちだよ。あの事務所に行ってください」


 そう言うなり、ガードの一人に任せる。周りの人は何事かと首をひねる。

 と、その男性の入っていった事務所が大音響とともに屋根を吹き飛ばした。


「ば、爆だ…ん」


「なぜ分かったんだ…」


 そんな声が走り抜ける中、至って平然と、ジョウが話し掛ける。


「さ、危険は去りました。あなた方の尽力をお願いします」


 そのにこやかな笑顔に得体の知れなさを感じて、人々は今見た光景を忘れようと一生懸命に働いていくのである。何回かその場面を見た人々は、得体の知れない怖さと同時に、それとは逆の安心感を抱えるのである。そのアンバランス感が予想外の信頼を紡いでいく。

 それは宇宙船の建造に多大な影響を与えた。


 やがて、その船は完成したが、別の意味を持つ船として、出来上がった。

『ゾーディアク』である。

 だから、人類の未来(いま)が続いていると言える。

 そして、その人物たちこそタガワ会長であり、タガワ総帥である。メナンではなく、なぜタガワなのかは、当人たちの意思である。ショウ・(レヴィン)・メナンとジョウ・(ラムゥ)・メナンという人物は、予言の報道の後にシャトルの事故により死亡している……、そういうことになっている。


 彼らとその奥方達の力の成した業であった。太陽系全土を掌握する連邦議会からの承認を必要としない財閥系のなせる技でもあった。

 コロニー艦隊旗艦としての『ゾーディアク』はこのように、明日(アース)暦を採用してから百十数年を経た頃、母星である地球に未曾有の惨事が降り掛かったときに急遽考案、建造されたものである。一度は地球脱出用の船として、十数ヶ国の国費で造られ誕生した。多くの人々を乗せ、運んだものだが…、その事態の収拾が急激に収まると、余りに巨大な費用を注ぎ込んだため、採算も維持体制も取れなくなって連邦議会は行き詰まってしまった。


 出資した国々の所有権の主張だけが残された課題であった。

 だが、その収容能力を見込んで、タガワ財閥が単独で買い上げたのである。

 もちろん、その維持には多くの人員とサポートを必要とするため、メナン家やハート家など複数の財閥が秘密裏に関わっている。


 その『ゾーディアク』の内部構造には連邦犯罪調査機構プロブ・ログから提供された多くの最新技術が惜しげもなく、()ぎ込まれていた。しかも『ゾーディアク』の名の示す通り、星座十二宮の名を持つ密閉型のコロニーが前半分に十二基、後ろ半分に十二基収納されていた。


 まるで、太古の西部劇に登場する銃のような弾倉システムを採用している。

 一つ一つのコロニーは普通のコロニーの約半分の容積。だが、その収容人員などの能力は計り知れない。当然、かなりの大きさになるが、それでも『ゾーディアク』のように巨大なものは珍しい。

 だが、外観は、二重三重の強化外殻に守られ、宇宙線(ニュートリノ)等の貫通を許さないほどのものである。

 直径十五㌔㍍、全長三〇㌔㍍の船体に直径六㌔㍍、全長十五㌔㍍のサイロ、その内側に直径五㌔㍍、全長七㌔㍍の密閉型のコロニーが調節部と呼ばれている中間部分の前後に二基ずつ、回転式拳銃(リボルバー)の弾倉のように収納されている。それぞれは独立した全長五㌔㍍の巨大なミラーを開くことが出来る。

 そのタイプのコロニーを十二基ずつの計二十四基、さらに中心に人工太陽炉を設置し、超長距離航行でも支障の無いように設計されている。


 その『ゾーディアク』の巨大な船体、そのすべてのコントロールを司るコンピュータを含む艦隊指揮所は、船体の最前部にあるが、全体を指揮するためと何かの不具合があったときの為に中間部、艦尾部分に副指揮所が設置されており、多系統のコントロールを可能にしている。


 一般的に機械のコントロールはコンピュータでもまかなえるが、人のコントロールは非常に難しいものだ。それを可能にしているのはタガワ総帥と、もう一人タガワ会長なのだ。

 ショウ・L・タガワ総帥と、ジョウ・R・タガワ会長がそれぞれ指揮を執るかたちのLとRの二部隊構成になっている。


 そう、(Left)(Right)の腕ということだ。もう一つ意味を持っている、それはゾーディアクの総帥は一人のようで一人ではないということに関係している。

 かつての戦いでは、タガワ総帥の技術革新とタガワ会長の戦略戦術が必要だった。

 二人は一卵性双生児であり、同一のDNAを持つ人物で同様にハート家の双生児(ツイン)との結婚を果たして、現在に至っている。


 つまりは互いに光と影、裏と表の性質を持って編成されている。

 だからこそ、お互いのサポートが密接に働いているのだ。

 そのコンビネーションは彼らと関係した人々にまで及んでいる。


 リュウやティアも彼らの艦の『レディアークⅡ』も他のみんなもタガワ会長たちとともに、過去に大きな戦いを経験している、それがこの『ゾーディアク』を動かしていると言っても過言ではない。さらに彼らを援助する者たちもいる。

 彼らのタガワ家、メナン家、ハート家、サームアンドゥ家は明日暦一八五年現時点では太陽系を飛び出し、銀河系の各星系で移民計画の当初から参画し、それぞれが独自の技術で各星系内の整備を進めている。


 ところが、人類が繁栄すると、国家の意図に反して、増加するものがある。

 それは人口であり、その増加に伴う犯罪である。人口もある程度の増加ならばよいのだが、増えすぎるとそれは重荷になる。やがて、貧困が蔓延し、犯罪が増える。

 その重荷を解決するために、新しい居住惑星の探査が始まっていた。


 即時移住可能惑星から、惑星改造を施さねはならぬものまでのレベルを設定した。

 現在、超弩級の『ゾーディアク』を含め、三番艦まで稼働していた。積載しているコロニーは未開発の恒星系であっても単純に居住スペースを必要とした時に、引力均衡点に放出できるようになっている。


 だが、制限も出てくる。コロニー内蔵などという、馬鹿馬鹿しいほどの大きさを誇る艦では、行動する際にはその航路の決定などに細心の注意を要するものなのである。

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