責任を担う者
彼ら、ティアとリュウの所属するチームの名は『セヴンデイズ』。つまり、『一週間』という名のチームだ。それぞれのチームにはサポートを担当するメンバーがきちんと存在する。
作戦の立案などの頭脳、艦船の運航、保守点検など、彼ら無しには一つの作戦すら完遂できないほどだ。
そして、そのチーム名は構成する主構成員の名に由来する。
日曜日は、サー・アン・リュウ。
月曜日は、ティア・ムーン。
火曜日は、チヅル・ファイア。
水曜日は、ワタル・ミズノ。
木曜日は、ウッディ・メルヴァン。
金曜日は、ゴルディア・ツ・ロイ。
土曜日は、アーシィ・チ・ロヴォア。
何があっても、変わらない友情とチームワークを売りにしている。
リュウが加わるまでチーム名は『エレメンタルズ』だった。乗艦は『レディアークⅡ』のまま。
リュウは『エレメンタルズ』の方が格好いいと思っていたらしいが、名前で仕事をするわけでもない。
まして、一名増えたのだから、そういうわけにもいかない…。なにせ属性で統一してしまえば、サー・アン・リュウとチヅル・ファイアは、同じ火に属してしまう。ちょっとそれを嫌がる人が居たのだ。
誰とは言わないが……。
彼らが所属する『ゾーディアク』とは、コロニー艦隊旗艦の名である。現時点でのコロニー艦隊旗艦としての『ゾーディアク』は、銀河系内の居住可能惑星の探査、各種方面の惑星開発や物資援助などを主任務とし、外部太陽系の再調査も含めて担当している。この旗艦自体はその存在の大きさが少なからずその航跡に影響を及ぼしている。
この巨艦が恒星の海を渡っていくのに、限られた空間を効率よく利用していかなければならない。かつての魔騎士との戦いの時には、超長距離を高速移動し、かつ長距離空間跳躍をこなしていた『ゾーディアク』にとって、いま現在の航行状況はひどく窮屈なものとなっていることは否めない。
現時点での戦いにはその力自体が大きすぎて、各惑星国家、星系国家間の争いには干渉することは無い。すでにあの戦いから数年過ぎたが、『ゾーディアク』を超える戦闘能力、防御能力を超える艦は無い。
もちろん運用を担当する人材も…である。
お互いに悩みが共通する者たちにとって『ゾーディアク』というのは、居心地の良い場所なのだと思う。ゆえに人材が離れない一つの要因なのだろう。
そして、あの戦いのあとに離れた者たちもまた契約をしに訪れる。
『ゾーディアク』から還元された技術がその後の人類に多大な影響を及ぼした。
無論、一六〇光年もの人類進出を支えた技術に自由空間跳躍というものがある。
空間を立方体の連続帯として考え、その空間ごと移動する跳躍法である。これは、ある偶然から発見された。重力の指向性の確認実験の最中、立方体の六面のうち、最も軟弱な面が破れたのである。それは、指向性の重力のかかった面とは正反対の面であった。
自由空間跳躍という技術の進歩が、人類の銀河系進出のカギだったのである。
さらに、『ゾーディアク』はその行動範囲、構成メンバーなどの諸般の理由により、多彩な能力を発揮する場として連邦犯罪調査機構プロブ・ログの母体を運営していた。
プロブ・ログは、かつてタガワ会長と、タガワ総帥の提唱と基金擁立により、対魔騎士戦闘の終焉後の凡銀河の全犯罪に対する組織として誕生した。
現在、そのプロブ・ログの構成員の半数以上は秘密の番号を持ち、全銀河に散らばり指令を実行している。
勿論、『ゾーディアク』にもその構成員はいる。
『ゾーディアク』とは、黄道十二星座の総称で、『ゾーディアク』を構成するメンバーの総称でもある。よくある星座占いの十二星座のことを指す。
世界統一戦争当時の太陽系には、既にそれぞれの惑星国家が誕生し機能していたが、その国家の柱は、依然として財閥が担っていた。
太陽系でも地球、月、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、それぞれに惑星上のドーム都市や衛星都市を築き、議会や王政を敷きつつも国として存在していた。
昔、地球において、忌むべき戦争を起こすための原因が、資源や工業力、土地などを含めた経済力によってであった。
だが、財閥がその経済の方向性を間違えない限り、大きな歯止めになることが分かったのは、ある人物たちの活躍があってのことだった。
彼らは、その後も率先して必要なもの、必要な人材を送り込んできた。
と言うのもある事件があって以来、地球に人は住めなくなった。以降、各星系探査のための予算が計上され発見された星系に国家が樹立していった。そこで財閥は大きな力を発揮し、一つの惑星国家の心柱として存在することで傘下の企業体が集い、その骨格を為していった。そこに、移住することで人が集っていったのである。
そのある事件とは、今から十数年も前のこと。
あるとき地球の周回軌道上でメナン財閥の所有するシャトルが何者かの操縦する複数の機体に追われていた。あちこち被弾して傾きつつあるそのシャトルは徐々に重力に引かれて行く。
確実に地球へと落ちつつあった。やがてそれは火ダルマとなり、地球表面へと落ちていき、四散した。
もちろん、乗員は助からない。
だが、搭載していた何かは大気圏突入の摩擦熱でも燃え尽きなかったらしく、重金属の固まりとおぼしきものが四つ、とんでもない場所へと落下したのである。
稼働中の原子力発電所へ、である、まるで狙った様に…。
だが、それは予言が与えられていた。
発表したのは他ならぬ、その時に燃え尽きたシャトルの搭乗員だった。