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給湯室の会議

「……ちょっと瞳、なにアレ」


「さ、さあ?わかんない」


僕の食事は公費で仕出しの弁当が昼、夜と届く手はずになっていたらしいが来週からのスタートだと電話で係長に確認は取れている。

それについても言いたい事はあるが、今の僕はそれどころではなかった。


僕は今303号室、つまりマリの部屋でふんぞり返っている。

寮とはいえ若い夫婦が充分暮らせる広さを誇る2DKの間取りなので僕は食事をするテーブルの置かれたダイニングで睨みを効かす。


「……」


マリは僕に対して『何も無かった』体を決め込むつもりのようで【カンイチ何食べたい?】などと、まるで10年来の友人のような気安さだ。

瞳もマリもツラの皮は見事に厚い。政治家向きのメンタリティーを持っているようだった。


「あ、あ……うう」



なぜか沙耶はソファーに大股開きでどっかと座っている僕のヒザが気に入ったらしく、ヒザの上にちょこんと座りニコニコしながらルービックキューブをこねくり回している。


「か、カンイチ?何か食べられないモノとかある?アレルギーとか」


「ねえ」



僕は天井を仰ぎ見るような角度で顎を突き出しマリへ2文字で返事をする。


「……カンイチ急にやさぐれてるんだけど、あんたホントに何にもしてない?カンイチの部屋に居たんでしょ?」


「し、知らない知らない!」



何やらキッチンから長崎とマリの声がコソコソ聞こえてくるが……オンナが二人居ればそういうものだろう。世に言う『給湯室の会議』ってやつだ。得てしてその手の会話はオスにとっては『聞かない方が良い』類の戯言に過ぎない。


そんなことより



「ポリ公帰ってきたってー!?意外にコンジョー見せんじゃんか!!」



そうだ。そのムダにエネルギーを消費しそうな喋り方。

瀬能モモ、来室。


僕は沙耶をどっこいしょと脇に置きオモムロに立ち上がる。そして三人が揃ったキッチンに歩み寄り深呼吸をひとつ。


「な、なに?」


「……」


「おーう居たか国家のワンちゃん!!」


キッチンの中にいたオンナ共は三者三様の反応を見せた。


僕の様子がおかしいと気付き妙にビクつくマリ。

音の出ない口笛を吹く長崎。

躁病のどあほう。


「……提案がある」


「へ?」


「住人それぞれの呼称を統一したいんだが……どうか?」


「あ、うん!いいんじゃないソレ」


代表で年長でまとめ役のマリがその責務を果たし僕と会話を継続、あとの二人についても僕の提案に異存はないようである。


では、順番に。


「サヤ」


くるりと振り返り人差し指でソファーのサヤを指す。


「マリ」


びし、と人差し指でマリの鼻面を指す。


「ヒトミ」


びし、と人差し指でヒトミの鼻面を指す。




「ド変態」


びし、と人差し指で瀬能のはな「なんでだよっ!?」



ふむ。

ヒトミに聞いた情報はこのどあほうには伝えないほうがいいだろう。僕も鬼ではないしヒトミが『口の軽いオンナ』としてこの狭いコミュニティー内で陰湿なイジメに遭っても寝覚めが悪い。ここは大人の対応として



「ヒトミに聞いた情報はこのどあほうには伝えないほうがいいだろう。僕も鬼ではないしヒトミが『口の軽いオンナ』としてこの狭いコミュニティー内で陰湿なイジメに遭っても寝覚めが悪い。ここは大人の対応として」



「おーいポリ夫!!全部出てるから!!テメー今考えてる事ぜーんぶ今喋ってっから!!」


「意図的なものだ」


当たり前である。僕はアメリカンではないので『思ったことははっきり主張しなさい』などどグランドマザーに言われた覚えは無い。

さあ揉めたまえ。

好きなだけ罵り合うがよろしい。


「威張ってんじゃねーよっオマワリ!!ヒトミ!!てめー……」


「わわわ!?違くて!そうじゃなくて!」


ごめんなさい、そう悲鳴を上げながら部屋を飛び出していくヒトミ。秘密を知られたと思い込んだモモは耳まで真っ赤にしてヒトミを追撃すべく飛び出して行った。

まあ実際よく分かってないのが本音だが勝手に勘違いしたのはあの変態である。



放っておこう。


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