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第6章:鋼鉄の背を持つ猪(スチールバック・ボア)

# 第6章:鋼鉄の背を持つスチールバック・ボア


**年齢:7歳**


召喚状が届いたのは、雨の降る火曜日だった。

それは通常の配達員ではなく、王宮グリフォン騎士団の一員**ランク5(精鋭騎士)**によって届けられた。彼は我々の泥だらけの辺境の町を、まるで踏んづけたばかりの犬のフンを見るような目で見下ろしていた。


「国王陛下、**ローランド・デ・ヘリオス**様の名において布告する」

騎士はラベンダーと高い税金の匂いがする羊皮紙を広げた。

「アーサー・ヴァレリウス男爵の息女、**エレナ・ヴァレリウス**を、ここに『聖女候補』として認定する。ヴァレリウス家は直ちに王都へ移住し、その教育を受けるべし」


父、アーサー男爵は泥の中で膝をついた。彼は老け込んで見えた。顔のしわが深くなっている。

父はローランド王を知っていた。彼らはかつて、政治的なサメたちが「マナ欠乏」を理由に父を追放するよう王に強要する前、友人だったのだ。


この召喚状……おそらくローランド王は、エレナを守るという口実で、かつての友人を呼び戻そうとしているのだろう。王なりの優しさだ。

だが父は真実を知っていた。王都へ戻ることは、毒蛇の巣窟そうくつへ足を踏み入れることを意味する。王妃や高位貴族たちは、決して面白く思わないだろう。


母サラは娘の身を案じ、静かに泣いていた。

5歳になったエレナは、手を叩いて喜んでいた。「やったぁ! 旅行だ! にーに、旅行に行くのよ!」


俺は部屋の隅で壁にもたれ、干し肉を噛んでいた(実際には昨日捕まえた乾燥毒ヘビだ。素晴らしい食感、噛みごたえ、そして高タンパクだ)。


*(ローランド・デ・ヘリオスか)*

ヘビ肉を噛み砕きながら、俺はその名を分析した。

*(慈悲深き操り人形。彼は俺たちを救っているつもりなのだろう。だが、追放地から俺たちを引きずり出すことで、王国の全ての腐敗貴族に対して俺たちの背中に標的を描いたことに気づいていない)*


俺は視線をグリフォン騎士に移した。

*(ランク5。マナの流れは悪くないが、立ち方がゴミだ。重心がかかとに寄りすぎている。もし戦えば、第一式を使って3手で殺せる。彼は俺の手が動くのさえ見えないだろう)*


俺は自分の内部ステータスを確認した。


**ステータス:7歳**


- **外部マナ:** ゼロ(ゴミ)。

- **内部修練(武林):** **三流(上)。**

- **肉体強度:** **二流(鉄皮)。**


俺は「骨鍛造ボーン・フォージング」を完了していた。俺の骨格は今や工業用鋼鉄よりも硬い。

そして天魔武功の**『フェーズ1:基礎』**を習得し終えた。

このチュートリアル・ゾーンを去る準備はできている。


---


**出発の朝**


中庭は混沌としていた。

使用人たちは首のないニワトリのように走り回り、荷物を詰め込み、馬車に積んでいた。父は穀物の供給について怒鳴っていた。エレナは開いた門の近くで蝶を追いかけており、その聖なるオーラを灯台のように垂れ流していた。


俺は重いリンゴの木箱を馬車へと運んでいた。

突然、地面が揺れた。


**ズシン。ズシン。**


町の監視塔から警鐘が鳴り響いた。狂乱した音だ。

「魔獣侵入! 西の壁が突破された! **スチールバック・ボア(鋼鉄背の猪)**が居住区に侵入!」


悲鳴が上がった。

町の衛兵たち(ランク2の歩兵)が、槍を震わせながら慌てふためく。

スチールバック・ボアは**ランク3の魔獣**だ。

ただの大きな豚ではない。生体戦車だ。その皮は金属の鱗で覆われており、クロスボウの矢さえ弾き返す。体重は軽く見積もっても500キログラムはある。


「エレナ! 馬車に入れ!」

父が剣を抜きながら吼えた。

だが、彼は遠すぎた。彼はポーチにいて、門から30メートル離れていた。


**ガシャァァァン!**


木のフェンスが爆散し、破片が飛び散った。

ボアが中庭になだれ込んできた。

巨大だった。鼻孔から蒸気を噴き出している。その牙はショートソードほどの長さがあり、新鮮な血で染まっていた。


ボアは周囲をスキャンした。

悲鳴を上げるメイドを無視した。パニックになる馬も無視した。

そのビーズのような小さな目は、**エレナ**にロックオンした。


彼女の聖なるマナは美味そうな匂いがする。古くなったパンで溢れた部屋に置かれた、新鮮なイチゴケーキのようなものだ。


「にーに!」

エレナは凍りつき、恐怖で青い瞳を見開いた。


ボアが地面を掻いた。

突進した。

時速60キロ。筋肉と鉄の生きたミサイルだ。


衛兵たちは遅すぎた。

父は顔面蒼白で走っていたが、間に合わない。


*(面倒だな)*

俺はため息をついた。


俺はリンゴの木箱をそっと置いた。

「名もなき包丁」を抜くことはできない(荷物の奥深くにしまってある)。

体を使うしかない。


*(距離:10メートル。衝突まで0.8秒)*


俺は歩いた。

走らなかった。ただ、突進してくる怪物と妹の間に割り込んだだけだ。


「カイン! どけ!」

父が絶望で裏返った声で叫んだ。


俺は無視した。

肉の山へと向き直る。

普通の観測者にとって、これは自殺行為だ。20キロの子供対500キロの怪物。物理法則に従えば、俺は赤いペースト状に潰されるはずだ。


だが、天魔にとって物理法則など「提案」に過ぎない。


俺は構えを調整した。

腰を落とす。木の根のように気を地面に送り込み、足を大地に固定する。

深く息を吸い込む。


*『フェーズ1:基礎』『第二式:鉄山靠てつざんこう』*


この技術は一見単純だ。ただのタックルに見える。

だが実際は、**内功インターナル・フォース**の操作だ。

筋肉で押すのではない。全身を一つの固形弾丸に変え、接触点においてエネルギーを爆発させるのだ。


ボアが俺に到達した。

獣臭と腐敗臭が鼻をつく。その牙は俺の胸の数センチ手前にあった。


俺は一歩踏み込んだ。

俺の小さく、骨ばった肩を、ボアの巨大な鼻先に叩き込んだ。


**ドォォォン。**


肉と肉がぶつかる音ではなかった。

トンネルの中で大砲を発射したような音だった。鈍く、重く、吐き気を催すような衝撃音が、見ている者全員の胸を振動させた。


ボアは後ろに吹っ飛ばなかった。

それは非効率だ。

代わりに、それは瞬時に停止した。時速60キロから0キロへ、1ミリ秒で。


運動エネルギーはどこかへ行かなければならない。

俺の「鉄山」の構えが微動だにしなかったため、エネルギーはボアの**内部**へと逆流した。


**グシャッ。**


巨大な骨が砕ける音が中庭に響いた。

衝撃波は鼻先から頭蓋骨を通り、背骨を下り、内臓へと達した。

ボアの目が頭から飛び出した。

脳はスープになり、心臓は破裂した。


それは1秒間、凍りついたように立っていた。

そして、俺の足元に崩れ落ちた。


**ズシン。**


死亡。金属の皮には傷一つないが、中身は完全に液状化している。


中庭に静寂が落ちた。

死んだ獣の脇腹を雨が叩く音だけが響く。

衛兵たちはあごを外し、槍をだらりと下げて凝視していた。

父は急ブレーキをかけて止まり、剣を中途半端に上げたまま、信じられないという目で見ていた。


「カイン……」父は震える声で囁いた。「お前が……やったのか?」


俺は瞬きをした。

死んだボアを見下ろし、自分の肩を見た。俺は首を振り、精一杯の「混乱した子供」の顔を作った。


「転んだんだ」

俺は平坦で抑揚のない声で言った。

「ドジな豚だ。地面に頭をぶつけたんだよ」


「転んだ……?」衛兵の一人が、陥没した頭蓋骨を見ながら呟いた。「落雷みたいな音がしたぞ……」


「転んだんだ」

俺は繰り返した。


衛兵は躊躇ちゅうちょした。ランク3の魔獣の無惨な死体を見る。「転んだ? しかし……あの音は……」


俺は笑うのをやめた。

衛兵を見た。

ほんの一瞬、俺は修練の抑制を解いた。


俺の目は、もはやただの薄い赤ではなかった。深く、**捕食者の真紅**に閃いた。

一筋の**『殺気』**を放つ。

それは魔法ではない。頂点捕食者がエサを見る時の、生物学的シグナルだ。


「俺は言ったんだ」

俺は1オクターブ低い声で囁いた。

「こいつは。転んだ。俺の視力に何か文句でもあるのか?」


衛兵は激しくのけぞった。

彼の生存本能が悲鳴を上げた。*逃げろ。直視するな。あれは少年じゃない。獣だ。*

彼はよろめきながら後ずさり、顔から血の気が引いていた。


「い、いいえ! もちろんです! 転んだ! 運が良かったですね!」

彼はどもりながら、視線を逸らした。


俺は瞬きをし、目を元の死んだ魚のような濁った目に戻した。

「よろしい」


俺は再びリンゴの木箱を持ち上げた。

「行くぞ。リンゴが濡れてしまう」


俺はスチールバック・ボアの死体の横を、一瞥いちべつもくれずに通り過ぎた。

その横を通り過ぎる時、俺は深く息を吸い込んだ。

他の人間には、ただため息をついただけに見えただろう。

実際には、俺は**『第七式:吸星渦(きゅうせいか・内部版)』**を発動していた。


灰色の霧残留する殺気と、ランク3の魔獣の魂が死骸から漂い出た。それは目に見えない渦となり、俺の鼻へと吸い込まれた。


*ズズッ。*


生の鉄と、怒りの味がした。

*(美味い)*

新鮮なエネルギーを消化し、丹田が唸るのを感じた。

*(ランク3の魂を吸収。修練値が安定した)*


俺は中庭の呆然とした沈黙を無視して、馬車へと歩き続けた。


背後で、アーサー男爵が剣を下ろした。

彼は何も言わなかった。

彼は隠れグランドマスター「剣意」の領域に触れた男だ。彼には、今何を見たのか正確に理解できていた。

あれは転倒などではない。完璧な運動エネルギー転移だ。王宮騎士でさえ理解できないほど高度な武術だ。


アーサーは巨大な獣の死骸を見、そして息子の小さな背中を見た。

複雑な感情が彼の顔をよぎった。

彼は質問しなかった。息子が隠したがっているなら、その選択を尊重する。戦士は自らの秘密を守るものだ。


だが、一つの思考が彼の心に根付き、骨の髄まで凍りつかせた。


*(エレナは神々に愛された天才だ……)*

アーサーは、母親の腕の中で安全に泣いている娘を見た。


*(だがカインは……)*

彼は、戦車のような怪物を肩一つで粉砕し、今何食わぬ顔で魂を喰らっている少年を見た。


*(カインは、神々さえも恐れる怪物だ)*


アーサーは重い音を立てて剣を鞘に納めた。

彼は初めて悟った。自分が守っていると思っていた「ゴミ」のような息子が……実は、この王国で最も危険な存在かもしれないということを。

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