# 第15章:天上のギルド(ヘヴンリー・ギルド)
# 第15章:天上のギルド(ヘヴンリー・ギルド)
**年齢:12歳場所:沼地の小屋(ゾーン2)**
人類最大の敵はドラゴンではない。魔王でもない。死という逃れられない運命でさえもない。
それは**「退屈」**だ。
そしてその相棒、**「マズい飯」**である。
私は粗末な木のテーブルに座り、湯気を立てる灰色のドロドロした液体が入った器を見つめていた。
「1825日目……」私はカップを這う蜘蛛に囁いた。「おめでとう、俺。この地獄で5年間生き延びたぞ」
私はテラー・バードのくちばしを削って作ったスプーンを手に取り、肉の塊をすくい上げた。
それは**スワンプ・ヒドラ**の肉だ。
栄養面では? 素晴らしい。濃密なマナとタンパク質の塊だ。
味は?
ジムの靴下とバッテリー液に漬け込んだ濡れた革ブーツのような味がする。
口に入れる。噛む。
*ギュッ。ギュッ。*
車のタイヤのような食感だ。
私はそれを丸呑みし、鉛の塊のように喉を滑り落ちていくのを感じた。
「塩がない……」目から一筋の涙がこぼれ落ちた。「胡椒もない。ニンニクもない。醤油もない。ただの……茹でられた悲しみだ」
私はスプーンを叩きつけた。木のテーブルが真ん中から割れた。
壊すつもりはなかった。軽く触れただけだ。
だが、それが問題だった。
私は自分の手を見た。肌は白く滑らかで、学者の手のように見える。だがその皮膚の下で、筋繊維は再構築されていた。
**ランク4:筋肉精製段階。**
先週、ついに壁を突破した。私の筋肉はもはやただの肉ではなく、編み込まれた鋼鉄だ。骨は鉄よりも高密度になった。気(Qi)を一滴も使わずに、石壁を拳で貫くことができる。
私はゾーン2の頂点捕食者だ。モンスターたちは私の匂いを嗅ぐだけで逃げ出す。
だが、山を砕く力を持っていたとしても、まともな塩ひとつ手に入らないのなら何の意味がある?
「もういい」私は立ち上がった。急な動作に耐えきれず、椅子が粉々になった。「終わりだ。世捨て人生活は引退する」
「マスター?」
小屋の隅から柔らかい声がした。
**リサンドラ**(10歳)が、骨のダガーの手入れをしていた手を止めて顔を上げた。
彼女は成長した。5銀貨で買った、飢えて怯えていた奴隷の少女はもういない。そこにいるのは捕食者だ。
彼女は**ランク3(下位)のアサシン**だ。
その隠密技術はあまりに自然で、小屋の中の虫でさえ彼女の存在に気づかないほどだ。灰色の肌は傷ひとつなく、白い髪は厳格な戦闘用の団子結びにされ、真紅の瞳は鋭く、知的で、そして猛烈に忠実だった。
「狩りですか?」彼女は興奮して長い耳をピクリと動かした。「東の川の近くでマッド・ドレイクを見ました。肝臓が美味しいかもしれません」
「肝臓はもうたくさんだ、リス」私は手を振った。「引っ越しだ。俺は文明を欲している。干し草じゃないマットレスが欲しい。だが何よりも、俺は**ナトリウム(塩分)**を欲しているんだ」
私は拳を握りしめ、鋼鉄のような筋肉の密度を感じた。
「それに」私は自分自身に言い聞かせるように呟いた。「ここでの俺の任務は終わった」
天井に到達したのだ。**ランク4**。**筋肉精製段階**の完了だ。
5年間、俺がこの泥の中に隠れていたのは弱かったからだ。この世界のことを知らず、マナを持たない俺は獲物でしかなかった。もしもっと早く王都に戻ろうとしていたら、事態はすぐに悪化していただろう。駒として使われるか、ゴミとして捨てられていたはずだ。
だが今は?
今や、自分の身を守るだけの力がある。手の内をすべて見せる必要はない。世界に対しては、森で魔法の果実を食べて生き延びた運のいい**「ランク2の肉体強化者」**として振る舞えばいい。それだけで、真の化け物を呼び寄せることなく、害虫を追い払うには十分だ。
*『孤独な修行には限界がある』*
俺は前世の**武林**での古い格言を思い出した。
洞窟に永遠に引きこもっていては、龍にはなれない。
次のレベルに登るには、摩擦が必要だ。世界の広さを知り、他の努力する天才たちと衝突し、他者が到達した高みを経験する必要がある。世界に対して自分の『道』を検証しなければならないのだ。
ここに留まれば、俺の成長は停滞する。井の中の蛙になるだろう。
俺には競争が必要だ。人生を楽しむことが必要なんだ。
それに……俺には今や家族がいる(ようなものだ)。俺が世捨て人ごっこをしている間に彼らが死なないよう守る力が、ついに手に入ったのだ。
「潮時だな」私は窓から背を向けた。「この世界が何を提供してくれるのか、見に行く時間だ」
---
**【離別】**
私は荷造りを始めた。
ほとんど何も持っていないので、すぐに終わった。
大きな麻袋を掴み、**モンスターコア**を詰め込んだ。
5年間で数千の獣を殺した。小国が嫉妬するほどのランク2やランク3のコアの備蓄がある。これが俺の退職金だ。
希少な毒草(お茶用)、イノシシの毛で作った歯ブラシ、そして最後に**『名無し(ネームレス)』**を手に取った。
俺の包丁だ。錆びた鉄くずのように見えるが、王都のどの剣よりも重く、鋭い。
私は振り返った。
「リス、お前も」
言葉が止まった。
リサンドラはすでに荷造りを終えていた。蛇皮で作った小さなリュックを背負っている。
彼女はご機嫌な鼻歌を歌い、長い尖った耳を嬉しそうにピクピクさせていた。
「準備完了です、マスター!」彼女は大きな、崇拝に満ちた瞳で私を見つめ、輝くような笑顔を見せた。「どこへ行くのですか? 人間の王都ですか? あそこには甘いパンがあると聞きました!」
私は凍りついた。
彼女を見る。
灰色の肌。長く尖った耳。輝く赤い瞳。
彼女は**ダークエルフ**だ。
ヘリオス王国において、いや、人間大陸の大部分において、**光の教会**は絶対的な権力を持っていた。彼らの教義は単純だ。『人間は光の子である。それ以外は獣である』。
エルフは美しく金持ちなので許容されている。ドワーフは鍛冶に役立つので許容されている。
だがダークエルフは?
彼らは「悪魔の子」の烙印を押されている。奴隷か、無法者か、死体だ。
もし彼女を連れて王都に入れば、門番が攻撃してくるだろう。教会は異端審問官を送り込んでくる。
俺は彼らを殺さなければならなくなる。そうすればもっと増援が来る。騎士団を殺すことになる。そして俺は賞金首の犯罪者だ。
*(めんどくせぇ)俺は思った。(あまりにもめんどくさい)*
俺は怠惰な生活がしたいのだ。アカデミーに行き、授業中に寝て、美味しいものを食べ、モブキャラのふりをしたい。「社会の敵ナンバーワン」の子守をしながらでは、それは不可能だ。
正直に言えば、学校に行くのは俺の夢だった。地球では、まともな学校に行く機会がなかった。武林ではどうだ? はっ。あの血塗られた穴を「学校」と呼ぶなら、地獄はリゾート地だ。あそこのカリキュラムは単純だった。「10歳までにルームメイトを殺せ。さもなくば肥料になれ」。あんな場所に帰るくらいなら死んだほうがマシだ。
だがここは? この世界は?
ここには本物のアカデミーがある。机がある。制服がある。食堂がある。宿題がある。
それは地球での人生でやり残した、唯一のバケットリスト(死ぬまでにしたいことリスト)だった。経験してみたいのだ。講義中に居眠りし、給食に文句を言い、背景にいる名もなきモブキャラを演じる。それが俺の究極の願いだった。
だが、「社会の敵ナンバーワン」を連れていては、それは不可能だ。
「リス」私は重い声で言った。
彼女は鼻歌を止めた。空気の変化を感じ取り、私を見た。「マスター?」
「荷物を置け」
「なぜですか?」彼女は首を傾げた。「重すぎますか? マスターの分も私が持ちますよ!」
「お前は連れて行けない」
その後に続いた沈黙は、雷鳴よりも大きかった。
リサンドラはバッグを落とした。彼女の耳は瞬時に垂れ下がり、叱られた犬のように頭に張り付いた。
彼女の顔が崩れた。
「え……?」声が裏返った。「マスター……私……私は捨てられるのですか?」
彼女は膝から崩れ落ち、床を這って私の足にしがみついた。
「お願いします! 置いていかないでください! 私が何かしましたか? 料理が不味かったですか? 上手くなりますから! 外で寝ますから! ご飯も食べませんから! お願いです、捨てないでください!」
灰色の頬を涙が伝い落ちる。捨てられた子犬のようだ。
「耳を切り落とします!」彼女は泣きじゃくりながらダガーに手を伸ばした。「肌をチョークで白く塗ります! 人間になります! お願いします!」
*(あー、クソ)*
頭痛がしてきた。
俺は泣かれるのが嫌いだ。気まずい。どう対処していいかわからない。
もし真実*「人種差別があるし、お前のために政府と戦うのはダルすぎる」*を話せば、彼女は必死になって隠れようとするだけだ。
嘘が必要だ。
彼女が自ら喜んで去るような、**カッコいい中二病的な理由**が必要だ。
私は深くため息をついた。彼女の手首を優しく掴み、自分の耳を切り落とそうとするのを止めた。
私は内なる「演劇部員」を呼び覚ました。
私は(単に疲れているだけではない)「深淵でミステリアス」に見えるであろう眼差しで、彼女を見下ろした。
「愚かな娘だ」私は声を低く、響くようなバリトンに落として言った。
リサンドラは鼻をすすりながら凍りついた。見上げる。
「私が*料理*ごとき些細な理由でお前を捨てるとでも思っているのか?」私は鼻で笑い、彼女から背を向けて窓の外の真昼の太陽を見た。
「違う。私が別れを告げるのは……お前が**卒業**したからだ」
「そ……つぎょう?」彼女は囁いた。
「私は人間界へ戻る」私は後ろで手を組みながら言った。「大衆を欺くために、眩い光の中を歩まねばならない。貴族の仮面を被り、彼らの下らないゲームを演じなければならないのだ」
私は振り返り、赤い瞳を光らせた。
「だがリサンドラ、光は盲目だ。表面下の腐敗を見ることはできない。この世界を真に支配するには……**影**を統べねばならん」
リサンドラの口が微かに開いた。涙が止まる。畏敬の火花が瞳に灯った。
「私は二つの場所に同時に存在することはできない」私は悪役が独白するように小屋の中を歩き回った。「私が日の光を操る間、闇の中にエージェントが必要だ。使者が必要なのだ。裏社会に私の庭を築く者が」
私は彼女を指差した。
「お前こそが、その使者だ」
リサンドラは息を呑んだ。胸を押さえる。
「私が? 私ごときに……そのような任務を?」
「当然だ」私は何食わぬ顔で嘘をついた。「何のために5年間お前を鍛えたと思っている? 何のためにモンスターコアを食べさせた? すべてはこの時のためだ」
私は彼女に歩み寄り、その頭に手を置いた。
「同胞のもとへ帰れ、リサンドラ。ダークエルフたちのもとへ。彼らはゾーン4の**『影の森』**に住んでいるな?」
「はい……」彼女は熱烈に頷いた。「ですがマスター、彼らは弱いです。散り散りになった部族で、洞窟に隠れ、奴隷商人や獣に狩られています。彼らにはもう誇りもありません」
「その通りだ」私は言った。
(内心:*『完璧だ。そこへ行け。両親を見つけろ。洞窟に隠れろ。社会の人種差別がマシになるまで安全にしてろ』*)
だが、リサンドラには別の意味に聞こえた。
彼女の目が大きく見開かれた。
*『マスターは仰っている……彼らは弱い、つまり形を変えるのに最適だと。この散り散りになったゴミ屑を拾い上げ、武器へと鍛え上げろと仰っているのだ』*
「彼らのもとへ行け」私は命じた。「私が与えた力を見せてやれ。誰が真の夜の支配者か、わからせてやるのだ」
リサンドラは立ち上がった。
泣きじゃくる少女は消えた。
そこに立っているのは狂信者だ。神からの命令を受けた兵士だ。
彼女は涙を拭い、直立不動の姿勢をとった。
「理解いたしました、マスター。影の森へ参ります。部族を見つけ出します。服従する者は仕えさせ、拒絶する者は……」
彼女は骨のダガーの柄に触れた。
「……あなたの庭の肥料にします」
*(おいおい、落ち着け)俺は思った。(いじめられないように筋肉を見せつけてやれって意味だったんだが)*
だが今さら訂正はできない。雰囲気があまりにも完璧すぎた。
「そして……」リサンドラは興奮で頬を染め、ためらいがちに言った。「我々は何と名乗ればよいでしょうか、マスター? 闇におけるあなたの刃となるならば、名前が必要です」
私は言葉に詰まった。
そこまでは考えていなかった。
部屋を見回す。
土。骨。空が見える屋根の穴。
空……天……
傲慢に聞こえるが、本質的には無意味な名前がいい。
「我々は……」私は真剣な目で彼女を見て宣言した。「**天上のギルド(ヘヴンリー・ギルド)**だ」
(安っぽいレストランチェーンか、カルト教団みたいだ。完璧だ)
「天上のギルド……」リサンドラはその言葉を聖典のように繰り返した。「大地を覆う翼……天上からの審判……」
「待て」
飛び出そうとする彼女を呼び止める。「餞別がある」
私は袋の中に手を入れ、蔦で縛られた乾燥した広葉樹の葉の束を取り出した。ゴミのように見えるが、表面には木炭で複雑な図解、呼吸法、フローチャートが書かれている。
「これを持っていけ」私はそれを投げ渡した。
リサンドラはまるで黄金でできているかのように、恭しくそれを受け取った。「これは……秘伝書?」
「**『闇天経』**だ」私は言った。「天上のギルドの基礎となる武術だ」
(実のところ、これは前世で所属していた**天魔教の歩兵用基礎訓練マニュアルだ。暇な時間に書き直し、この世界のマナで動作するように気の流れを調整したものだ。
「神級」や「ランク6」の技術ではないが、恐ろしく効率的だ。肉体の限界を強制的に突破させ、短期間での爆発的な成長を可能にする。
だが、この特定の武術を選んだのには隠された理由がある。
天魔教は野心的で、隙あらば背中を刺そうとする悪魔たちで溢れていた。彼らを束ねていた唯一のものは絶対的な力そして恐怖だ。
この技術は悪魔的なマナ**を練り上げる。これを改変したのは俺であり、俺はこの特定のエネルギー周波数の支配者だ。つまり、この武術を修めた者は誰であれ、本能的に俺のマナに服従することになる。
これは究極の首輪だ。もしギルドのメンバーが裏切ろうとすれば、俺は戦う必要さえない。彼ら自身のマナに「自爆しろ」と命じればいいだけだ。それが天魔が教団を支配していた方法だ。)
「見込みのある子供を見つけたら」私は目を細めて指示した。「これを教えろ。ギルドに入りたいと願う者は、誰であれこの技術を学ばなければならない。これは彼らに素早く力を与えるだろう。肉体的な強さとマナ容量の両方が跳ね上がるはずだ」
リサンドラはマニュアルを胸に抱きしめ、決意に瞳を燃やした。「理解しました! あなたの力を呼吸する戦士の軍団を作り上げます! 彼らは永遠にあなたと繋がることでしょう!」
「よろしい」私は頷いた。「さあ、行け。私が気が変わる前に」
「はっ、我が主!」
*ヒュンッ。*
彼女はドアを使わなかった。残像を残すほどの速度で動き、窓から飛び出し、危険なゾーン4へと疾走していった。
今まで見たことがないほど幸せそうだった。笑顔で戦場に向かって走っていった。
私は小屋の静寂の中に立ち尽くした。
「芝居がかった奴だ」私は首を振って呟いた。「まあ、少なくとも彼女は行った。たぶん素敵なダークエルフの彼氏を見つけて、どこかの村に落ち着くだろうさ」
(私は、自分が大陸全土を支配することになる未来の**「裏社会の女帝」**を解き放ってしまったことなど、知る由もなかった。ただ逮捕されないように彼女を追い払いたかっただけなのだ)
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**【変身】**
一人になった今、変身の時間だ。
スワンプ・イエティ(雪男の沼版)のような見た目で文明社会に入っていくわけにはいかない。
隅にある水樽へと歩く。水面は静かで、3層の乾いた泥と血にまみれた野生の顔を映し出していた。
「汚ねぇ」私は自分自身を評価した。
バケツの水と、熊の脂肪で作った粗末な石鹸を手に取る。
洗う。
水が真っ黒になるまで洗う。
一層また一層と、野生が剥がれ落ちていく。
汚れの下にある肌は驚くほど白かった。沼地生活は直射日光が少なく、修練法のおかげで毛穴が存在しない。
顔からは幼少期の丸みが消えていた。鋭い顎のライン、高い頬骨、ヴァレリウスの血統特有の貴族的な顔立ち。母に似ている美しく、冷たく、儚げだ。
目を除いては。
私の目は濁った赤色だった。輝きがない。氷の上に3日間放置された魚のような目をしている。
「完璧だ」私は呟いた。「鬱病の貴族に見える。誰も鬱病の奴なんか怪しまない」
次は髪だ。
黒髪は腰まで届き、結び目の塊になっていた。
私は**『名無し』**を手に取った。
錆びた包丁が唸る。ランク4の獣の首を刎ねてきた刃だ。今日は床屋の道具となる。
*ジャキッ。ザシュッ。スパッ。*
無慈悲に切り落とす。
横は短く、トップは少し長めに残す。乱れているが意図的にも見える、「寝起きで何も気にしてません」風のスタイルだ。
最後に服だ。
5年前の馬車事故を生き延びた、古くカビ臭い木製のトランクを開ける。
中には、追放された日に着ていた服が綺麗に畳まれていた。
ヴァレリウスの紋章が入ったシルクのシャツ。黒いウールのズボン。
私はシャツを拾い上げた。
胸に当ててみる。
……小さい。
「これを着てた時は7歳だった」私は自分に言い聞かせた。「今は12歳。しかもランク4だ」
もしこれを着ようものなら、それはシャツではなく**止血帯**になるだろう。筋肉に力を入れた瞬間に弾け飛んでしまう。
「使えん」私はシルクの布切れをトランクに投げ捨てた。
私は自前のコレクションに目を向けた。
長年かけて、皮のなめし方は習得している。
私は**『黒沼ワニ(ブラック・スワンプ・クロコダイル)』**の皮で作ったズボンを履いた。乾燥した腱で縫い合わせた粗雑なものだが、鉄のように頑丈で、私の筋肉質な足に完璧にフィットした。
シャツの代わりには、自分でなめした**『影狼』**の毛皮で作った袖なしのベストを着た。傷だらけで色あせているが、暖かい。
その全ての上に、数年前にゾーン3で見つけた死んだ冒険者から回収した、ボロボロの灰色のマントを羽織った。
もう一度自分を見る。
貴族には見えない。物乞いにも見えない。
新石器時代から這い出てきた野蛮な狩人に見える。
原始的。野生的。非文明的。
「素晴らしい」私は頷いた。「バーバリアン(野蛮人)に見える。貴族どもは野蛮人を無視する。労働の臭いがするからな」
私は麻袋を掴んだ。中ではモンスターコアという名の財産が音を立てている。
**『名無し』**を汚い布で包み、ロープで腰に縛り付ける。武器ではなく、肉屋の道具に見えるように。
私は小屋を出た。
5年間の我が家を最後に見る。
壊れた屋根。骨の山。木々に刻まれた爪痕。
地獄の穴だった。だが、*俺の*地獄の穴だった。
「さよなら、タダの家」重い袋を肩に担ぎ、私は言った。「さよなら、ヒドラの肉」
私は南へ向いた。**王の街道**へ。アカデミーへ。
腹が鳴った。
「こんにちは、資本主義。こんにちは、フライドチキン」
私は歩き始めた。
沼の怪物は死んだ。
生存者、**カイン・ヴァレリウス**が世界へ帰還するのだ。




