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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
5章 魔王と氷雨古廐・最終決戦

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創元の火

「女神まで降臨させたのですね。だが……それすら私が凌駕してみせましょう」


 氷雨兄さんの手の中で、凍凪は凍り付いた魔力の槍の塊へと変貌を遂げていく。

 周囲の魔力を極限まで吸い尽くそうとするそれは、敵も味方も関係がない。

 バタバタと周りのモンスターたちが力を失うようにして雪原に伏せていく。


(これじゃあ近づけない)


 グリューンが指を打ち鳴らした。

 俺は耳元でささやく相棒の声に頷く。

 それは起死回生の策だった。

 だがその為には、この魔力極限の氷槍を乗り越えなければならない。


「トラジ。ワシも力を貸そう。死なばもろともと言うではないか」


「おっさんと一緒に手を取り合って死んじまうのは勘弁願いたいな」


「ならばトラジ。女神ならば共に果てるのは問題ないのですね」


 ベルガ、俺、そしてシャウザ・ニークが乗り移ったフィリナ。

 この場にそぐわない軽口をたたき合う。

 それは世界を凍てつかせるほどの魔力を溜め込んだ凍凪への最期の抵抗のための布石。

 エレノールも極限まで高められた魔力の渦に気付き、ドラゴンと共に降りてくる。


「ふふふ。楽しいことやろうとしてるじゃない。あたしも混ぜなさい」


 真っ赤なローブが凍てつく風に煽られ、映えるように雪原に靡いていく。

 氷雨兄さんの、いや凍凪に込められた魔力がはち切れんばかりに膨張を止める。

 解き放つ前の一瞬の間。

 音の無い時間。

 凪。

 知覚される時間が極点まで圧縮される。

 目の前の兄の白髪がゆらりと魔力に逆巻いた気がした。


『凍凪よ。熱も絆も信頼も……人の想いすらも全て凍結させなさい!』


 心を凍らせんと放たれた氷結の槍。

 捻子蒔くように、雪の結晶が螺旋を描く。

 這うように槍の刃先に沿い、大気を凝らせ一直線に放たれる!!

 やる事は決まっていた。あとは力の勝負だ。


「みんな。俺に想いを貸してくれ! 焔の大盾!!!」


 ベルガの……エレノールの……シャウザの魔力が大盾に載る。

 エーデルヴァイスが支えるようにして、零れていく魔力を守るように両手を広げた。

 研ぎ澄まされた焔の盾は、空間を圧縮するかのように宙に揺蕩う。

 そんなもので防げるのかと不安になるほどの薄い膜にしか見えないそれ。

 しかし纏う魔力は、自分ひとりで練り上げたものとは比較にならない。


 世界が大きな悲鳴を上げる音がただ……ただ。

 鼓膜を破らんとする轟音となって襲い掛かるようだ。

 焔に込められた無数の想いの前に……瓦解する氷結させられし至高の槍。

 その場には静寂と雪煙が舞った。


(この機を逃す訳には行かない!)


 俺は焔刃に残された魔力を全て叩きこむ。

 グリューンの策は絡め取ること。

 そして絡め取った一瞬の隙で最大限の攻撃を叩きこむこと。

 単純だが明快な答えだった。


(竿化! 焔よ……兄さんを縛る糸となれ!)


 シュシュ!!

 竿化された焔刃から、糸が放たれる音が周囲の雪を震わす。

 光る糸は明らかな意図を持って、檻となる。

 今まで紡いできた仲間たちとの絆を持って。

 兄さんを縛る鋭利な焔と化す。


「ったく……あたしを柱にするなんて、あとで美味しいもの用意しなさいよ」


「ふふふ。お前の力になれるならそれは良し。さぁ決めてこい」


 焔が纏われた糸が兄弟子氷雨の周囲を十重二十重に張り巡らされていく。

 起点となるのは俺たち。

 ベルガ、エレノール、フィリナ、そしてグリューンにエーデルヴァイス。

 張り巡らされた糸は5方向に散らばった仲間たちの手を渡り、全てを紡ぐ。

 それはまるでこの世界のありようを示しているかのようだ。


「こんなもの! 凍凪の盾で防いでくれよう!!」


 それはおそらく焔の大盾と同じ原理。

 違うのは自分だけの力で全てを為そうとしているということ。

 分厚い氷が兄さんの身体を覆い始める。

 そして――それも予想出来たことだ。


「相棒。あんな盾なんかどうとでもなるさ!」


「トラジ。私の力も糸に載せましょう。貴方の今の魔力であれば、融けない世界はありません。それは女神である私が断言します」


 グリューン、そして女神シャウザ・ニークの声が俺に勇気を与えた。


 糸は仲間たちの手を離れ、引き寄せられるように凍凪の盾に向かっていく。

 それは仲間たちや女神の力すら貯え、一気に熱を放出する。

 まるで世界が願いを待ち望んでいたかのようだ。

 凍てつく世界は……その瞬間、音を立てて崩れ散った!


「竿化されし絆の意図よ。手元に戻れ!!」


 焔の糸は凍凪の盾を溶かしきると同時に俺の手元に瞬時に戻り、光り輝く始まりの焔を形成する。

 エーデルヴァイスの瞳が何かを思い出したかのように瞬く。


「おおおお……まさか太古の創元の火がここに!」


 そうか。師匠は敢えてそう創ったんだ。

 たくさんの価値観と、世界の複雑な有りよう。相反する思想と、理想と現実。

 全てをひっくるめたんだ。

 理想郷なんてどこにも存在しないって。


さぁ……次回はエキジビションバトル。

おまたせしました。

彼が登場します!

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