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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
5章 魔王と氷雨古廐・最終決戦

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アイテムボックス

「……もぐ……いや、まさかドラゴンに乗って一気にラベルク村に向えるなんてな」


 ジトリとした目線に囲まれる俺。

 え、なんでよ。

 腹減っているからさ。食べないとほら、俺のMPって満腹度なんだろ?


「いやぁ、やっぱり焼肉丼はうっまいなぁ……残しておいて正解。やっぱり日本人としては箸が欲しいんだよな。ご飯自体はもうラベルク村にはないから、王都に行って探さないといけないんだよな……もぐもぐ」


 ガツン。

 白い毛深い拳骨が俺の頭に豪快にヒットした音だ。


「いったいどこからその食事を出したトラジ! しかもホカホカで今しがた調理したばかりのようではないか。いったいどうなっている」


 詰め寄るベルガの牙の隙間に残った焼肉を放り込む。

 フィリナやエレノールにも串に刺さったアイスウルフの肉を振舞う。

 グリューンがハフハフと尖った牙で肉を食いちぎる。

 まさにドラゴンの背の上でちょっとした戦勝パーティーさながらだ。


「いや、ほら。温かい食べ物っていいだろ? 保温と保存を兼ねたリュックができないかなって思いながら、ラベルク村を出る前に『生成(ツォイゲン)』を使ったんだよ。そうしたらアイテムボックスができちゃってさ。俺もびっくりしたよ……痛い、ベルガ! 暴力反対だぞ」


『生成』は、材料さえあれば俺の頭の中で思い描いたアイテムを作り出すことができるという便利な魔法だ。まさか沢山の物品を収納できるアイテムボックスという魔法のリュックができるとは予想外だったけれども。


「アイテムボックスだと!! 王都でもあまり見ない一級の魔法の品だぞ。それを全く……お前の発想というか、異世界の知恵と言うのか。そういったものには驚かされるばかりだ!」


「ラベルク村を出る前に旅に便利なリュックができないかなとふと思って。雪見草っていう大きな葉っぱが特徴的な保存に適した植物があるって、狐獣人のケリーさんに聞いていて応用させてもらったんだ」


 不思議そうに、俺のリュックから取り出した四方包み型の入れ物を眺めるフィリナ。

 エレノールの目が興味深げに光る。


「トラジのやることにいちいち驚いていられないわ。もう慣れた」


「そうね。星流人ってたぶん、こういうものなのよ」


 ベルガはやれやれという顔。俺の差し出した最後の焼き肉を無造作に噛み切ると迷いを振り切るように眼下に広がる雪原に目を細めた。


『我の翼であればラベルク村までは数刻もあれば辿りつけよう。魔力茸により高まった力は時間が経てば経つほど上昇率が大きくなる。かの者ヒサメの力にも対応することも可能であろう……だが気を付けろ。神の包丁凍凪は善悪を見極めることはせん。使い手の意志で如何様にもその意味を変える。それは焔刃ですら変わらん』


 ホワイトドラゴン――エーデルヴァイスの忠告の声が上空に広がる。

 俺は焼肉丼の最期の白米の一欠けらを飲み干した。

 両手を組み、天に祈るフィリナ。

 杖の先に意識を集中させるエレノール。

 ベルガの毛並みが濃く、体つきがシャープになっていく。


 冷たい風が虚空を切り裂く。

 それはその場の空気を引き締め、最後の戦いへの狼煙を高らかに上げるかのようだ。

 俺達の視線の先に小さき点が徐々に形を為し始める。

 速度を増す翼。

 駆ける優美な白き尾。

 点がはっきりと人型の生物として認識し始める。

 広大な雪原を辿るようにゆるゆると行軍するそれ。

 ヒサメ軍。

 その先には――ラベルク村がはっきりと見て取れた。


「王国騎士団は……一番隊は間に合ったのか?」


 苦々し気につぶやくベルガ。粉砕の大斧を強く握りしめた。

 焦燥が手に取るように分かる。

 三番隊全滅の重圧が改めて彼の胃を締め付けたのだろう。


「エーデルヴァイス! ヒサメ軍の前方に回り込めるか。俺の焔刃で先陣を炙り下ろす」


「ふふふ。勇ましいなトラジ。創元を見ているようだ。久しいな……」


 ホワイトドラゴンの言葉に刻まれる悠久の刻。

 俺の姿と師匠の姿が重なる。

 冷たい上空の空気に一瞬混じるようにした流れた軌跡は、彼の涙だったのか。

 抜き放った焔刃は強い焔となり、俺の身体を心を……熱く包み込む。


情報処理(スフェア・バイト)


 女神よ女神。

 兄さんのことを教えてくれないか。


【ヒサメ――氷雨古廐(ひさめこうま)、神の包丁凍凪(いてなぎ)に選ばれしもの

 鑑定付加。

 神の包丁の情報開示は、エリュハルトの根源に関わる為、秘匿圏域です。

 レベルE相当の閲覧許可が必要とされています。

 私も最大限のサポートをしますわ。

 創元に認められたあなたなら勝てると信じています。

 この地に春を呼び戻して】


「鑑定付加だってよ! こうなりゃ出たとこ勝負だ。俺の直感が告げているんだ。敵わないことはないって。それを信じてくれ!」


 自分でも何を言っているのか分からない。

 直感を信じろなんて、そんな曖昧なことをここまできて言い放つのは無責任だとは思う。

 でも。

 その言葉に全員が頷いた。

 迷いは――全くなかった。


 そのままエーデルヴァイスの背から飛び降りる。

 凍凪だか何だか知らないが、俺は兄さんと話をするためにここまで来たんだ。

 もう逃がさない。

 俺達の過去に決着をつけてやる!




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