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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
4章 凍凪とドラゴンと春の精霊と

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模倣を払う力

「トラジ! フィリナ! 尾撃が来るぞ!! 」


 そのベルガの叫びに、思考を通りこし一気に身体が先に反応する。

 今のベルガの位置からはエレノールのカバーに入るには若干遠い。

 俺が行くしかない!

 後方に大きく跳躍するように走り出す。

 そんな自分の頭上をあざ笑うかのように、大きく長い尻尾がエレノールに向かって的確に伸びていく!


 フィリナの全身に力が入る。

 大きく息を吐き出し、極限まで高められた魔力が拳に宿る。

 それは女神に対する祈り。仲間を守りたいと願う意志。


『拳聖流――流打の撃』


 まさに言葉通り、流れるような複数回に渡る殴打が迫りくるドラゴンの尾を防ぎきる。

 ホワイトドラゴンが苦痛のうめき声を上げた。


「守ると言ったらわたしは守る。それがどんな相手であっても……」


 強く猛々しい誓い。

 女神のように光り輝く拳。

 それは天から舞いだされた、一陣の迷い泣き光を具現化したかのように美しい。

 光の軌跡を前にホワイトドラゴンが身をよじる。

 まるで、何かから逃れようと必死に抵抗するかのように。

 苦痛に全身をのたうち回らせ、自分の首や身体を周囲の壁に何度も叩きつけ、縛られし鎖の魔力から脱しようと悶える。


「相棒! ホワイトドラゴンの足元の鎖が蠢いている。この波動はやべぇ!!」


 グリューンが俺の首筋に必死な表情で捕まり、叫び続ける。

 自分の目にもその変化は明らかだった。

 鎖が更にどす黒く、太く、禍々しさを増す。邪な波動を漲らせホワイトドラゴンの全身を包み込むように広がっていく。真っ白だった表皮すら消し炭のように黒く変色を遂げていいく。

 これは凍凪の波動が更に強くなっているのか!


「バカな! ワシたちの与えたダメージが回復してるというのか!」


 その言葉を遮るような瞬く間。

 鎖が蠢く前とは比べ物にならないような速度と力で、ドラゴンの鍵爪がベルガに襲い掛かった!


「速い!」


 ベルガは大斧を盾のように構えなおし、なんとか致命傷は避けたようだ。しかし鍵爪に身体を掴まれ、地面に突っ伏すようにして倒れ込む。

 あっけに取られている暇はなかった。

 驚異的な速さでホワイトドラゴンの首が伸び、俺とフィリナ、エレノールさえも一挙に飲み込まんとするかのように、素早い牙と顎が襲い掛かった!


「!!!」


 なんだこの速さは! 今までと段違いじゃないか!

 ゆっくりと周囲の時間が流れるように感じた。

 走馬灯。

 しかし間髪を入れず、焔刃の焔が燃えあがった!

 天まで達するかと思われる猛き魂の血潮。

 女神の祈りが伝わる。


「ニルフ!! ふざけんじゃねぇ! ボーっとしてねぇでなんかしろってんだ!」


 グリューンの叫びだったのか、女神の声だったのか。

 間違いなくその叫びのお陰で、俺達を一気に噛み砕こうと首を伸ばしてきたドラゴンの動きが制止したのだ。

 俺は大きく息を吐き出す。フィリナの身体の緊張が解けるのを感じる。安堵の表情をベルガが浮かべた。


「グリューン! オイラだって協力するよ!!」


 春の精霊ニルフ。小さい男の子が懸命に戦っているかのような声。

 俺はそのまま焔刃を大きく振りかぶる。

 上段の構えから、軸足に力を入れて、一気に前方に向かって跳躍!

 まさに噛み砕こうとしていたドラゴンの口に向かって、迸る焔を投げ入れるかのようなに振り下ろした!!


『ザッシュ!!』


 焔刃の発する焔に焼き裂かれ、ドラゴンの皮膚が焼け焦げる匂いが充満する。

 青い血が口元より流れ、それは自分の焔が古き神代よりの支配者の誇りに傷をつけたことを示していた。

 ベルガが鍵爪から抜け出し、こちらに駆け寄ってくる。


破邪魔導(ディスペルエルナ)、魔文錬成完了まであと30秒――カウントダウンを開始します』


 機械的な声が聞こえてきた。

 それは今まで「ミャアミャア」としか鳴かないと思っていたミンミが、エレノールと全く同じ声でカウントダウンを始めた声だった。

 彼女の肩に乗ったミンミの目の中に碧色の魔力が色濃く反映されていく。


 ホワイトドラゴンが周囲の魔力を取り込むようにして、大きく息を吸い込んだ。

 凍結していくような魔力の結晶が牙と顎の間に充満していく。

 覗く切り口から青い鮮血がほとばしり、痛々しい。


「ここまで来て、させるかよ! 焔の大盾」


 光り輝く結晶になった焔の粒子が、目の前で大きな焔の盾を形成する!

 冷気の渦をまとった光線状の竜の息吹が、うなりを上げて襲い掛かる。それは創り出された盾にぶち当たり、大きくせめぎあうように強力な光を発する!

 その瞬間、エレノールの魔導が完成した。


『破邪魔法!!』


 エレノールの低い……堂々とした呪文の言葉が火口内に響き渡った!

 彼女の持っている短杖から、神々しい光があふれ出し、その光はホワイトドラゴンの真上に集結する。その光に照らし出され、大きく身じろぐようにドラゴンの全身を覆った鎖がギシギシと大きな音を立てる!

 真上に収束された光の渦が、小さないくつかの輝く矢のように変化し、一気に黒く禍々しい鎖に向かって掃射される! ガラスが一斉に割れる様な音を立てて、鎖が後も残さず消滅する!

 ドラゴンが悲鳴にも似た苦痛の表情と泣き声を上げる!


「今だ相棒!! 思いっきり魔力を高めろ!」


 フィリナの綺麗な笑顔がまず浮かぶ。

 次にグリューンのにやけた表情やベルガの大きな笑い声。

 エレノールがキノコを頬張っている顔。

 そして師匠が俺に店の仕切りを始めて任せた時のような、信頼する表情が頭の中を過ぎ去っていった。


「――冬を終わらせるぞ!!」


 俺の右手に大きな神々しい光の剣とでも言わんばかりの、純粋な焔の魔力の結晶の剣が創造される!

 そのまま、光の剣をホワイトドラゴンに向かって思いっきり振り下ろした!



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