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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
4章 凍凪とドラゴンと春の精霊と

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一進一退

「おおおおおおお!」


 粉砕の大斧を両手に構え、高鳴る魔力(エルナ)を震わせるベルガだ。

 全身の筋肉移動がラベルク村で見た時よりも更にスムーズで、魔力茸の影響が顕著に表れている。

 俺も冷え切った空気を一気に腹の底に押し込めるようにして吸い込む。

 目を閉じて集中する。

 空気が広がるような感覚が目の奥で弾ける。

 ヒュンっという音が耳の奥に打ち付けるようにきらめく。

 ホワイトドラゴンが両手を上げて、一気に俺とガルムに振り下ろす音だ。

 意識よりも早く、地面を蹴る。


『ズシャーーーン!』


 さっきまで立っていた筈の地面がドラゴンの鍵爪によりえぐられ隆起する。

 爪が風を切りつけ、絹が真っ二つに割かれるような音。

 焔刃の焔の勢いが激しさを増す。

 周囲の冷気を熱で蒸発させるかのような女神の力。

 神の包丁!


「まずはホワイトドラゴンと春の精霊を救う! そして次は氷雨さん……兄さんをもだ!」


 魔王に魅入られてしまっているだけならばあるいは。

 この焔刃を使えば握り直せるのでないか。

 新しくやり直せるのではないか。


「相棒! よそ見すんな! 死んじまうぞ!!」


 肩の上のグリューンの必死の叫びにハッと我に返る。

 左軸足に無意識に力を入れる。

 摺り足で体を反転させ、横に飛ぶようにて避ける。

 狙ってきたドラゴンの鍵爪が空を撫でる。

 髪が数本、宙を舞ったのが見えた。


「あっぶね! マジで危ないって!」


 ベルガは俺に向けられたドラゴンの腕に飛び乗ると、そのまま一気に腕を駆けあがっていく。その身の軽さはまるで荒野を走る白い狼そのもの。

 そんな俺とベルガの後ろでエレノールの足元に碧色の魔法陣が雪をかき消すように広がっていく。短杖を構え、もう一方の手を上に下にくねらせて舞うように動かす。

 強い、そして高い集中力!

 高まった魔力が燃え上がるようにして彼女の周囲に集まっていくようだ。

 フィリナがそんな彼女を守るようにドラゴンの動きに警戒する。

 両拳には以前とは比較にならないほどの魔力が込められている。


「相棒! とにかくエルフの嬢ちゃんの魔導が完成するまで耐えろ!」


「うっるさいなグリューン! 分かっているって!」


 自分を狙ってくる爪の攻撃を、焔刃で右に左にいなすようにしてはじく。

 その度に高い防御力を誇っているのだろう、ドラゴンの白い皮膚と焔刃の焔が接触し、まるで硬い鉄を切り裂こうとしているかのようなジャリン! という高い音と焼け焦げたような臭いが立ち込める。


「防戦一方の戦いはあんまり好きじゃないんだけどな……」


 腕を伝い、肩まで走り寄ったベルガが粉砕の大斧を振りかぶる。ドラゴンの首元に打ち下ろされた衝撃で、派手な音が周囲に響き渡る。

 苦痛に身を捩らせるホワイトドラゴン。

 大きく長い首がガルムに向き直った。

 途端、口の中に引き裂かれるような冷たい冷気の魔力が充満していく!

 強い氷結の力!


「ベルガ! 竜の息吹(ドラゴンブレス)よ!」


 フィリナが危機を叫ぶ!

 真っ白く凍り付くようなドラゴンの息吹。それがベルガの立っていた場所を薙ぎ払うように照射される。

 しかしベルガにはその攻撃が来ることは予想できていたようだ。

 軽快にステップを踏むと後方に避け、俺の目の前に飛び降りてくる。


「トラジ。ワシとお前でこのまま連続攻撃を仕掛け続けるぞ。手を緩めるな。竜の息吹がエレノールに向かないようにワシたちが引き付けるんだ」


「確かに。あんなのがエレノールに向いたら一巻の終わりだよな」


 それでも最悪の場合は自分の『焔の大盾』で防げるのではないかとは思っている。しかも今は魔力がかなり高まっている状態だ。


「トラジ。お前の考えていることわかる。だが、できる限り最善を尽くせ。戦いはいつ何が決め手になるかわからん。ふとした気の迷いから一気に崩れる事なぞザラだ。勝敗は常に自分の心が決める」


 ベルガがその言葉を言い終わるか終わらないかの間。

 背筋が瞬時に凍り付くようなホワイトドラゴンの殺気。

 俺とベルガの立っている場所を恐ろしく頑丈な顎と牙が襲い掛かってくる!

 その場の空気を噛み切らんとばかりの大きな音を立てて、ドラゴンの牙がかみ合わされるのが見えた。

 もちろん既に俺とベルガは身を翻してその場より避け去った後だったが、底冷えするような牙の隙間から漏れ出る生臭い息に、肝が冷える。

 お互いに頷き合うと、そのままドラゴンの左右に分かれ緩急をつけながら攻撃を続けていく。

 粉砕の大斧がドラゴンの爪を割り、皮膚をえぐる。芸術的ともいえる狼獣人の素早い動きと、それに見合わぬ大斧の強烈な一撃。

 俺も負けじと振りかざす。焔刃が牙を弾き、燃え上がる焔が冷気を拒むようにして圧迫させる。


(エレノールの魔導が決まれば、あとは焔刃の焔で模倣を払ってみせる)


 女神の力を使えば、凍凪によって縛られた竜と精霊の魂を分かつことが可能だと本能が叫んでいる。それだけを信じ、時間だけが過ぎ去るのを耐えるようにして待つ。

 そんな思考の刹那。ホワイトドラゴン、いや『逆撫でし凍凪』は自らの力を削ぐ脅威を理解したかのように、鎖を巡らせる。

 ホワイトドラゴンのくぐもった視線が強烈な冷気を発し、俺達の後ろ――魔導が完成しつつある真紅のローブに包まれたエルフに注がれる。


「相棒! ホワイトドラゴンの尻尾が来るぞ!!」


 グリューンの警告が響き渡った。



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