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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
4章 凍凪とドラゴンと春の精霊と

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神の包丁とホワイトドラゴンと春の精霊と

「すごい広いわ! それに天井が……夜空が見える!」


 フィリナの透き通るような声で全員が一斉に上を見上げた。

 瞬く幾千の様々な星たちが目に飛び込んでくる。ずっと雪交じりの日々だったので、晴れ渡ったような夜空を見上げるのは初めてだった。

 千切れるような雲の合間から、青っぽい惑星が顔を出している。

 この世界で言う『月』みたいなものなのか。俺はそんなどうでもいいことが頭の中を過って不意に笑いそうになった。

 まだこのエリュハルトに降り立ってからそれほど日数は経っていないはずなのに。


灯火(リヒト)! 最大限に光り輝け!』


 包丁から湧き上がった炎を頭上に向けて掃射。

 まさに大きな花火とでも言わんばかりに、ヒュー!という音を立てて『灯火』によって作り出された炎の灯りが頭上に舞い上がる。

 パン!という大きな音を立て、やわらかな陽光のような光が、大きな広間の隅々まで注ぎこんだ。


「ここは聖なる山の火口の一角か。こんな広い場所があるなんて」


 ベルガの言う通り、ちょっとした学校グラウンドのトラックくらいの広さはあるんじゃないだろうか。

 そして奥に鎮座している大きな――大きな首の長い生物が唸り声を上げた。

 体長は10メートルほど。トカゲのような頭が見え、その口の中にはびっしりと尖った歯が生えている。

 如何なるものをも容易に引き裂くのではないかと錯覚するような爪。

 長く優雅な尻尾。

 真っ白な体毛に覆われ、眠りを妨げし不遜なものたちへの警戒心が露わになる。


「間違いなくヒサメを乗せていた竜種ね! 柔らかそうな毛並み、体躯の隅々までいきわたるような充実した魔力(エルナ)の威圧感。もう堪らないわ!」


 エレノールは魔力に対する頓着が敵味方関係ないのは周知の事実。

 それはおそらく、自分の好みの魔力か否かという一点のみの興味なのだろう。


「また始まったか。聞いているこっちが恥ずかしいぜ」


「ふふふ、頼もしいではないか。震えあがってしまうよりよほどいいわ」


 そういうベルガの身体つきが徐々に変化をし始めていることに気付いていた。身体が一段階大きくなり、顔つきがよりシャープになる。

 全身が灰色の大きな二足歩行の狼と変貌を遂げていく。

 長い髭が生え、顔が更に面長になり鼻の辺りがぐっと前方に突き出してくる。ピンと張られた耳や白い尾。更に猛々しさを増す盛り上がった全身の筋肉。


「そうか。トラジにはこの獣化モードを見せるのは初めてだったな」


 ベルガがニヤリと笑い、口の中の鋭い歯が露わとなる。

 そのまま粉砕の大斧を大きく振りかぶり、地面に一気に叩きつけた。なにか固い物が跳ね返るような高い音がして、地面が大きくえぐれた。

 そのすぐ後ろ、祈るようにして腕を組み、さざ波のように満ち溢れる魔力を放ちながら黒髪の神官が涙を溢れさせていた。


「ホワイトドラゴンの心の痛み――精霊の嘆きが伝わるわ! この場を覆い尽くすような悲痛な叫び。こんな、これほどまでだなんて」


 心の痛みを感じ、それを力に変えられるのはフィリナの強さ故か。

 こんな極限状態においても誰かを想いやれること。

 深い愛情。それは女神にも通じるものがあった。


「二つの気配とそれを縫い付けるような禍々しい気配を感じる。春の精霊がドラゴンの中に閉じ込められているわ――絡みついた糸の正体は神の包丁よ。間違いない!」


 エレノールの碧色の瞳の輝きがより一層深く、艶やかな光を発する。

 彼女の異能か……


「へい相棒! よっく見てみろ。ドラゴンの足元だ」


 グリューンが肩の上でサングラスを傾ける。そんなアイツでも緊張するのかちょろちょろと動く舌で何度も自分の口を舐めている。

 ドラゴンの足元――その場より飛び立とうと藻掻く4つ足の周囲に、大きなどす黒い太い鎖としか表現することができないナニカを捉えた。


情報処理(スフェア・バイト)


 女神よ女神、シャウザ・ニーク様。

 俺に教えてくれ。足元を覆う鎖とドラゴン、春の精霊について。

 全身が魔力茸の影響か、燃え上がるような焔の力に包まれているのを感じた。


【古代竜ホワイトドラゴン――古きものたちの血脈

 神の包丁の使い手、氷雨古廐(ひさめこうま)に縛られし太古から連なる竜のひとりです。

 若い竜ですのでそこまでレベルは高くありません。

 それでもレベル55。

 魔力茸を食べたあなたたちでやっと戦えるレベルですね。

 逆撫でられし神の包丁『凍凪(いてなぎ)』の力の暴走により、ドラゴンと春の精霊がひとつに括られてしまっています。呪縛の模倣の力。かの魔王の歪められし包丁の力です。

 太古のエルフの呪文の力を借りなさい。

 今の高まる魔力であれば、貴方も更なる力を使えます】


 その瞬間、大きく周囲の空気を吸い込み、ドラゴンが全ての力を放出するような咆哮を上げる! 全身をドラゴンの力強い威圧とでもいうべき、強烈な圧迫が突き抜ける。その咆哮の圧力を受け、全身が硬直し体を動かそうとしても動けなくなってしまう。


「ものすごい竜の威圧だ。トラジ、魔力を腹の底に込めて耐えろ。一気に意識が刈り取られるぞ!」


『シャウザニークの祝福(ブレス)!』

 フィオリナの張りつめた美しい声が鐘のように響きわたる。身体の周りに薄い魔力の膜とでもいうようなものが張られた。包丁を構えながら周りを見ると、同じような膜は俺達パーティー全員を包み込んだ。

 やわらかい、春の雪解けかと思えるような陽光が差し込むようだ。


『抵抗値上昇を確認。能力ポテンシャル、プラス1……2に上昇。攻撃力や回避に微細なプラスの効果を認めます!』


 エレノールのコンピューターが発するような、無機質な抑揚の無い声。

 短杖を振りかざし、光り輝く瞳は凛々とさんざめくようだ。

 踊るように杖を振りかざし、相手の魔力の動きを探る。

 そこには世界最高峰の力を持った導術士が立っているかのような安心感があった。


 肩の上に乗っているグリューンが、大きな声を出してドラゴンに呼び掛ける。


「おいおい! 隠れてねぇでさっさと姿を見せやがれ。ニルフ!」


「そうか、グリューン。お前、春の精霊と知り合いって言っていたから!」


 ホワイトドラゴンがその呼び掛けの声に、ピタリと動きを止めた。

 足元の黒い鎖が禍々しく蠢き、それに呼応するかのように焔刃が激しく燃え上がった。




聖なる山での最終決戦がいよいよ始まります。

ちなみに魔力茸の効果は分かり難いと思いますが、制限時間内で食べた時より時間が経つほどより効果が大きくなると思ってくれればいいです。

まぁ、なんかすごいパワーアップアイテムなんだなくらいの認識で問題ないです(笑)

ではドラゴン戦スタートですね! お楽しみに!!

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