表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
4章 凍凪とドラゴンと春の精霊と

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/45

幻覚地形

 俺達はゆっくりと洞窟の奥に進んでいた。

 奥からは時折冷たい風が吹きつけ、それに混じるようにして地響きでも立てているような唸り声が聞こえてくる。その度に自分が創り出した『灯火』がゆらゆらと揺らめき、不安を煽るように4人の影が形を変える。


 途中、2メートルくらいの10脚の蜘蛛のような大きな死骸や、5メートルくらいの長い二首の蛇のような物体が転がっていて、それが作り出した『灯火』に照らされる。


「いやに何も起こらないな」


 ベルガが立ち止まって独り言のようにつぶやく。

 実に洞窟に入ってから2時間くらいが過ぎ経っていた。何度か曲道や分かれ道に差し掛かり、その度に俺の魔法で方向を決めながら進んできた。


「そうね。入ってから大分時間が経っているのに……」


 フィリナもふぅっと小さなため息を漏らす。


「警戒をしながら歩いているからかなり疲れるような。だんだんと腹も空いてきたし」


「相棒はあれから何度か魔法を使っているからな。腹減らしで倒れるなよ」


 グリューンの言葉だが、誰も笑わない。

 確かに真っ暗な洞窟の中で警戒しながら歩き続け、特に何も起こらないのは正直不安だ。こういう状況に慣れていないので、精神的な疲れが大きい。


「かなり広い洞窟ね。しかも徐々に下って行っている。どのくらいの深さまで下りてきているのか正直分からない」


 あたしの探査魔法が使えればね……と独語とも取れるような呟きが小さく聞こえた。


「この先が広くなっているから少し休まないか」


 疲労困憊という訳ではないが、少し座って休みたいというのが正直なところ。

 ベルガが小さく頷き、フィリナとエレノールが少しホッとしたような顔をしている。


 広間の中へ足を踏み入れる。

 大きな空間のようで、天井もそこそこ高い。

 『灯火(リヒト)』の光を天井まで一気に移動させる。


「天井まで5メートルくらいか……洞窟の中は圧迫感が半端ないから、少しでも天井が高いと有難いな」


 俺がため息をつきながら感想を漏らす。

 そして後ろからついてきているもう一つの『灯火』の灯りを、間の壁を這うように移動させた。


「10メートル四方と言ったところか。しかしトラジの魔法は便利だな」


 もう少し明るくできないものか。

 二つの灯火を重ねるように移動させる。それを天井付近に固定する。

 光を一つに重ねると、より強い光を放つようになった。


「蛍光灯が何段階かに明るさを調整できるだろ。あれをイメージしてみた」


「ケイコウトウ? また異世界の知識なのね。全く……」


 エレノールが目を細くして諦め顔で俺を見上げている。


「もう驚かないことにするわ。そうじゃないと、こっちの身が持たなそう」


 金髪を片手でかき上げるようにして視線を外す。そのまま洞窟の壁に寄りかかり、短杖を抱えるように座り込む。


「とりあえず少し休もう」


 フィリナが声を掛ける。

 俺とベルガは小さく頷くとその場に腰を下ろした。

 ベルガは携帯ビスケットを取り出し、もぐもぐと不味そうに噛み、腰に下げた水袋から水を少し口に含んだ。

 俺やフィリナ、グリューンも干し肉を少し齧り、水を口に含む。エレノールも自分の荷物から無機質な水袋を取り出すと、手早く口の中に水分を流し込んでいた。ミンミが顔を出して彼女の手から水を舐めるようにして飲んでいる。

 少しだが腹具合は回復した気がする。


「トラジ。洞窟の入り口で使った魔法は使えない? おそらくかなり近くまで来ているとは思うんだけど」


 フィリナの言うことは尤もだ。座りながら周囲を見渡す。

 入り口で調べた時よりは、もっと詳細なことが分かるはずだ。


食材探知(レベンスミッテル)


 包丁を取り出し意識を集中させる。

 目を瞑り、視界が広がるように願う。

 入り口で視えた洞窟の奥の映像。隠し扉のある広間だ。


「あれ? それってここじゃないか?」


 自分で素っ頓狂な声を出してしまい、慌てて口を押さえる。


「ベルガ、お前の後ろの壁。なんか変じゃないか?」


 エレノールの瞳が碧色に濃く変わる。グリューンも頷きながら、肩の上で目を凝らしている。


「トラジ。ビンゴよ! その壁から冷たい魔力を感じる」


 俺は包丁を持ちながら、ゆっくりとその壁に触れる。『ブゥン』という鈍い音が広間内に小さく響く。壁のあった場所に急にヒト一人が通れるような狭い通路が現れた!


 フィリナの形の良い眉と茶色の瞳が驚きに開かれる。

 エレノールが嬉しそうに頷く。

幻覚地形(ハルシネーション)だわ。高度な導術よ。でも幻覚系導術ってちょっと特殊なの。あたしはどちらかというと苦手」


 俺は壁のあった場所に新しく現れた狭い通路の中を覗き込み意識を集中した。


「エレノール! たぶんこの先だ。この感じはキノコだぜ!」


 エレノールの表情がパッと変化する。興奮気味に後ろから身を乗り出す。


「でも何か変なんだ。茸の周りに真っ青な泉が見えたって言っただろ。その泉の水から、なんて言えばいいのか、黒い気配がするんだ」


「トラジ。行ってみるんだ」


 先頭にベルガ、そのすぐ後ろから俺とエレノール、最後はフィオナの順でゆっくりと細い通路を下っていく。急な坂道になっていたその通路は、20メートルほど下るとまた大きな広間のようなところに出た。


「ぐっ! この強い臭いは!」


 一番最初に広間に入ったベルガが危険を瞬時に察知して口をふさぐ。

 俺やエレノールにも強い臭いが漂ってくるのが分かった。

 フィリナも強い臭いに顔を顰めている。


「広間が毒素で埋め尽くされている! かなり強いわ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ