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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2章 理を変える包丁

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魔力茸と創元の火

魔力茸(ロイヒテン・ピルツェ)。本当にそんなものが聖なる山に?」


 騎士団支部の一室。俺達がはじめ、ベルガに通された部屋だ。

 粉砕の大斧と名付けられた武具が隅に置かれている。それは室内の空気を震わせるようにして、見るもの全てに強烈な存在感を見せつけてくる。


 怪訝(けげん)な声を絞り出すベルガ。

 その提案をしたのはエレノール。

 俺とフィリナは彼女に話を任せ、部屋の隅のソファーに座り待機。


「魔導協会としては、神の包丁が見つかるまでとの依頼内容は達成されたと考えているの。だからこのままあたしは王都に戻ることも止む無しと思っていたんだけど」


 エレノールの不躾な物言いはもう慣れた。

 ベルガも特に気にしてはいない様子。

 もしかしたらエルフというのは、そういう存在だという認識なのかもしれない。


「魔導協会マスター、ザックマーニャ・リザルトより、実は追加で指令が下っているの。一時的に魔力値を爆発的に底上げできる神秘の食材、魔力茸。それが聖なる山に眠っていると」


「それが此度の戦線で王国側を有利にするアイテムとなり得ると。あの女狐、いや失敬。ザックマーニャ殿の申し出なのだな」


 ベルガとエレノールの交渉。

 それこそが、彼女の考え。

 俺はベルガの話に集中するふりをしながら、手探りをするように腹に力を入れる。

 フィリナが視線の間に入り、なるべく自分に意識を持たれないよう配慮している。


 深く息を吸い込む。

 ベルガの外見を思い浮かべ、彼の声に静かに耳を傾ける。

 肩でペタペタと動くグリューンが、段々と気にならなくなる。


情報処理(スフェア・バイト)――発動。対象は獣人ベルガ)


 意識の底に手を入れ、少しずつかき回すように。

 閉ざされた蓋を探し当て、光を当て捻るように溶かすように。

 囁くような声が意識に浮かび上がってきた。


【ベルガ・シュトルムヴォルフ 45歳 

レベル41。王国騎士団三番隊隊長。

出身は東方、獣人の国:ダーザルヒルム

既婚。血を分けた実子はいない。養子:騎士団団長ジルベニスタ

筋力転化の極意 粉砕の大斧との盟友

戦神ボーディ・マウラックの加護

★状態異常:戦意失墜の呪い――偽りの模倣】


『大いなる焔で模倣の力を払いなさい。彼の失意を利用し怖れを模倣するは、かの者の常套手段。湖の底に眠る大きな魚影、それは湖の主。それが大いなる導きとなるでしょう』


 今度ははっきりと女神の声として俺に認識された。

 呪いというからには、誰かに掛けられたものなのだろう。

 誰って、決まっているよな。

 三番隊を瞬時に全滅させたという、魔王だ。


 ゴホン。

 ワザとらしく咳を室内に響かせる。

 フィリナとエレノールの視線がその意味を察する。


「ひとつ疑問があるのだが。どうしてそれほどの強さを秘めたアイテムを、ヒサメたちは使わぬのだ。しかも敵の本拠地にあるというのであれば、入手も容易であろう」


 ベルガは異能を使用したことに気付いていない。

 俺はホッと胸を撫でおろす。


「あれは『創元の火』により生まれた太古より連なるもの。魔王眷属のものたちには扱えぬ代物だと、古き文献に記されているの」


「なるほど。おとぎ話にある『創元の火』に関係するアイテムであるなら納得だ。それを我々の戦力増強手段として利用するように考えているということだな」


 俺は声を低くして、フィリナの肩を叩いた。


(フィリナ。創元の火ってなんだ。俺の師匠、そんなに有名なのか)


(創元の火っていうのは、全てのものを産み出したと言われている創造の灯のことよ。エリュハルト十二柱神は創元にそれを与えることで、神の七包丁を創り出したと言われているわ。もちろん真偽のほどは定かではないけど)


 うーん。話が壮大すぎて、逆に頭が痛くなる。

 確かに創元師匠の寿司の腕は確かだが、それが異世界転生者で神の包丁を創りしものだって言うんだから。力ない笑いしか出てこない。


「近々、ヒサメ軍は反転攻勢に出てくると考えているわ。その時にこの村に軍を引きつけておき、聖なる山に向かう部隊を別動隊として確保。その力を持ってヒサメの喉元に刃を突きつける」


 そのエレノールの言葉に自分の声を重ねる。


「別動隊には俺とフィリナ、エレノールが参戦しよう。おそらくは少人数の方が動きやすい。神の包丁があれば、ある程度の事態にも耐えられると思っている」


 口元に手を置き、深く思考の波に沈むベルガ。

 カタカタと右手が痙攣するように揺れていることにも気づいていない。


「優位な申し出だ。かなり戦略性も高い。どちらにせよ、このままこの村でヒサメ軍と膠着状態のままではこちらが不利であったのは間違いがない。王都への援軍要請にも時間かかっていたところだ。少し……考えさせてくれ」


 そう言うと思っていた。

 ベルガを調べたことで彼にかかった畏れの正体がようやく分かった。

 そしてそれを(はら)う手段も、女神によって明示されている。

 俺はエレノールやフィリナとの打ち合わせとは違う言葉を発した。


「先日の魚を振舞った件のお詫びをしたいと思っているんだ。別動隊が出発する前に士気を鼓舞するという効果も踏まえてだ。どうだろうベルガ」




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