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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
2章 理を変える包丁

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エレノールの作戦

「ベルガ隊長の仰ったことは気にしないでください。以前はあそこまで感情的ではなかったのですが。聖なる山での三番隊全滅の影響は致し方ないかと」


 ケリーと名乗った若い兵士がそう弁明する。

 黄色い体毛に、少し尖ったような鼻。小さな牙のようなものが口元から見えているので、彼も獣人なんだろうなぁということだけは分かる。


「ありがとうケリーさん。この部屋本当に使っていいのか」


 俺とグリューンがあてがわれた部屋は4畳半ほどのこじんまりとしたもの。グリューンが嬉しそうにベッドで飛び跳ねている。

 女子組はもちろん別部屋。王国騎士団には女性騎士も多いということを聞いてびっくり。


「いえいえ。あんなに旨い飯を食わせてくれたんです。それだけでも丁重に扱う意味はあるってものですよ」


 彼は軽快にウィンクすると部屋を出て行った。そのすぐ後にフィリナとエレノールが部屋に入ってくる。


「トラジ。ちょっと話したいの」


 フィリナの言いたいことは分かる。先ほどのベルガの件だろう。

 エレノールも不審に思っているんだろう。勝気な瞳でフィリナの言葉に頷いている。

 俺はフィリナに同意するように話を続ける。


「ベルガがどこかおかしい。グリューンも言っていたんだ。『畏れ』が強すぎるって」


 熱気で曇ってしまったのか、サングラスを外しベッドシーツで拭いているグリューンがこちらに振り向く。目が割とかわいいと思ってしまったのは道中で培ってきたアイツとの信頼の証かな。

 そのグリューンの口からとんでもない提案が飛び出した。


「相棒。『情報処理(スフェア・バイト)』を使ってベルガを調べることができるぜ」


 胸を張るグリューン。フィリナと俺が顔を見合わせる。


「勘違いしないでくれ。変な事には使えないぜ。情報処理の異能は相手の力や状態も調べることができるのさ。ケイブベアの時にも情報を送っただろ。覚えてないのか」


「確かにモンスターのレベルや能力が分かったよな。あの時はそんなことほとんど気にすることができなかったけどさ。考えてみればかなりすごい事だよ」


 その言葉にフィリナより、エレノールが顔を強張らせながら立ち上がった。

 彼女の目に宿る強い動揺の影。


「それってあたしの異能『異常覚知』より強い力じゃないの。神の包丁ってだけでずるいわよ、トラジ!」


「おいおい、そんなこと言われても。自分でもよく分からない強い力が、突然湧き上がって使えるようになるって結構ツライものなんだぜ」


 なんて表現すればいいのだろうか。

 自分の中で理解も分析もできていない強い力。制御することができるのかすら分からない。

 俺TUEEEなんて、そんな単純な無双感はほとんど感じなかった。

 戸惑いや違和感という感覚の方が強い。


「ねぇトラジ。それってわたしに対しても使える力なの? どこまで分かるのかしら」


 フィリナが疑問を投げかける。

 これまで『情報処理』はモンスターや食材についてだけしか機能しないと思いこんでいたから、そういう使い方を考えたことがなかった。


「さすがに試しに使う訳にもいかないだろう。フィリナにだって探られたくない事の一つつや二つはあるんじゃないか」


「いえ、問題無いわ。やってみて」


 俺の戸惑いがわかったのだろう。それでもフィリナの瞳の中の熱は変わらない。

 数秒の視線の交差。


「わかった、そこまで言ってくれるなら。もしも変なことが分かっても言わないから安心してくれ」


 腰の包丁に手を掛けながら、腹に強く力を込める。


(情報処理発動。対象はフィリナ。彼女のことを詳しく教えて欲しい)


 目の前に展開される無機質なステータス画面。それはまるでレーダーで解析された情報が空中に提示されるような感覚。


【フィリナ・ルーセント 18歳 

レベル27。聖アルベルト教会所属の3級神官。

両親は死去。王都に双子の妹がいる。

流派:アルベルト拳聖流 師範並みの実力を持つ。

女神シャウザ・ニークの加護

―――――――の呪縛:情報隠匿】


「へぇ。18歳って俺と一緒か。レベルは27らしい。王都に双子の妹がいるんだ。この女神シャウザ・ニークの加護ってなんだろう?」


 呪縛と隠匿。さすがにそのことはこの場で伝えていいのかどうか。


「確かにセリナという双子の妹がいるわ。そんなことまで分かるの。女神さまの加護がわたしに! 教会所属だからなのかしら。れべるという言葉が聞き慣れないけど、強さみたいなものなのかな」


「そこら辺は俺もよく分からない。ただ目の前に広がった情報を読み上げただけだから」


 表面的なことしかわからない、といった感じか。

 食材やモンスターを調べた時は女神の声が聞こえたが、今回は情報のみ。

 自分がまだうまく扱えていないからなのか、足りない何かがあるのか。


「あたしのことは調べないでよね。見せたくもない過去の出来事なんかを掘り出されたらたまったものではないもの」


 普通はそういう感覚だ。

 自分だって知られたくないことはたくさんある。

 中学校時代の痛い失恋とか。


「これをベルガに使うのか。あまり気が進まないが、やるしかない」


「トラジ」


 エレノールが立ち上がる。

 その華奢な体から立ち上る魔力は覚悟か。

 瞳に迷いを振り切るような力が宿る。


「まさかベルガの目の前でその魔法を使う訳にもいかないでしょ。あたしに考えがあるわ。」



ここまでお読みいただきありがとうございます。

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