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異世界転生した寿司職人ですが、神の包丁で魔王の呪いごと捌いてやります ~女神様は俺の寿司の虜ですが何か?~  作者: 小宮めだか
1章 凍てついた世界

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ラベルク村へ

 ゴブリン! あれがファンタジー世界でかくも有名な雑魚敵か! 

 ちょっと凄いなと、そんなことを考えている自分がいた……そう思った瞬間、矢継ぎ早に矢が射かけられる!

 周囲を囲むように、頭から小さい角を生やした、かなり身長の低い2足歩行の人型生物が4体ほど、こちらに向かって弓を構えている。

「ギャギャ!」と声を出し、明らかに敵対するような意志を感じる。

 視線を移すと、さらに雪の中から6体ほどのゴブリンの影が近づいてくる


「確かに! 一匹見かけたら、十匹くらい出てきたな!」


 ウンザリした視線をゴブリンに向けるエレノール。ミンミが彼女の方に飛び乗った。


「フィリナ、トラジ! 直ぐに荷台に飛び乗って! 一気にこの場から遠ざかるよ、しっかり落ちないように掴まってて!」


 俺とフィリナは大きく頷く。

 エレノールが手綱に手を掛ける!


「フィリナ、トラジ! 今よ!!」


 ゴブリンが逃げる俺たちを追いかけるように、腰に下げた短剣を抜き放ち、一気に間合いを詰めるように追いすがる! 

 後方の弓部隊も一斉に矢を射かけてくる。フィリナが飛び乗ったところに、「シュッ」と何本かの矢が突き刺さる。


「エレノール出して!」


 そう叫ぶフィリナ。

 彼女に向かって何本かの矢が射かけられるが、手に込めた魔力で振り払うようにそれを全て払い落とす。すごい腕だ。

 俺は必死に荷台にしがみ付く。エレノールは器用に飛んでくる矢を避けながらカーフの手綱を操り、この場から遠ざかっていく。

 段々と小さくなるゴブリンたちの影。

 それでもそれが完全に消え去って、矢がどこからも飛んでこないことを確認するまで、俺たちの緊張は解けることが無かった。



 ✛ ✛ ✛


 カーフは駆けるようにラベルク村に向かう。

 ようやくゴブリンの脅威が去り、ホッと胸を撫でおろす。

 危機が遠くなり、どこか穏やかな雰囲気が戻ってくると自分たちの置かれている状況を自覚できるようになる。


「相棒。寒くないか」


「そうだな。今までそれどころじゃなかったからな」


 グリューンは俺の白いダウンジャケットの中に入ってもらい、隙間から顔を出している。

 ニヤリとグリューンが笑い、片手を出してパチンと指を鳴らす。


保温(ヴァルム)


 そう唱えたのがはっきりと分かった。

 腰の包丁から焔が沸き上がり、それはキラキラと小さな粉を噴き上げるように舞い、俺達の体に降り注いだ。

 エレノールの目が強い緑色を放つ。

 異能【異常覚知(シックス・センス)】だ。


「なにこれ。身体が暖かく……うそっ、そんなことって!」


 グリューンがウィンクをしながら誇らしげにポーズを決める。

 フィリナが自分の両手を広げながら、驚きの声を上げた。


「体を暖める魔法なんて……そんなものが! それにこの魔力(エルナ)の量。なんて規格外なの。信じられない」


 俺の身体を包む、あたたかな炎の優しい光。

 ダウンジャケットを羽織っていると逆に熱いぐらいだ。

 ヒィヒィ言いながら、服の中から這い出てくるグリューン。


「加減を間違えたぜぃ! まぁこれで、相棒もこの魔法が使えるってもんだ」


 確かに。なぜかグリューンの唱えた魔法を自分も扱えるような気がしている。

 それと同時に、昨日炎の剣を振り回した時に感じたような空腹感が沸き起こる。

 倒れてしまうほどではない。

 まだ感覚としては小さいものであった。


「グリューン! あんたトラジの力を使って魔法を唱えるなんて。こんな膨大な魔力を消費して、やったことが身体を暖めるですって……あまりにも非効率よ。信じられない!」


 エレノールがグリューンに詰め寄る。

 分かったから、手綱を取っているのはお前なんだから、しっかり前を向いてくれ。

 鞄に潜っていたミンミが暖かくなったからか顔を出していた。


「俺は自分の魔法っていうのか、包丁の力の使い方がいまいちよく分かってない。だから色々教えて欲しい。足手まといだけはごめんだしな」


 冷たい風を受けながらも、火照るように温まっている体からは緩やかな湯気が立つようだ。


「このまま半日も山羊蹄車(カーフ)を走らせればラベルク村まで到着するわ。凍った湖が見えてきたら、もうすぐ側まで来ていると思ってちょうだい」


 金髪を揺らしながらエレノールの声が風になっていく。

 フィリナも頷き返す。


「わたし達は村を守っている王国騎士団の三番隊隊長ベルガ・シュトルムヴォルフから兵を借りていたの。それがこんなことになってしまって……ベルガに申し訳が立たないわ。それでなくてもラベルク村は今、ヒサメの標的になっている村だから」


 フィリナが受けた密命のためにベルガって隊長さんから兵を借りて、神の包丁を探しにきていたということか。

 そこに俺が現れた。

 星流人として。焔刃を携えて。


「フィリナが非難を浴びるいわれはないわ。元々ベルガは聖なる山でヒサメと交戦して、結局部隊を全滅させてしまい、逃げ帰ってきたのよ!」


 エレノールが厳しく弾劾するように叫ぶ。


「フィリナが神の包丁の話を持っていっただけで兵を貸し与えたじゃない。アレだってどうなのよ。情けないってあたしは思ったんだけど」


 そんなことが……俺とグリューンは目を合わせて、頭の中で二人の会話を整理するために押し黙る。

 山羊蹄車は飛ぶように雪原を滑っていく。

 徐々に前方に凍り付いた大きな湖ーーベル湖が姿を現していた。


「あれは!」


 初めにそれに気づいたのはエレノールだ。目を細め、湖の近くで雪煙が激しく上がっているのを確認する。

「エレノール! ヒサメたちの軍勢よ。ベルガたちが交戦してる!!」


 フィリナが悲痛な声を上げた。


ここまでが1章となります。

続いて2章はラベルク村でのお話になります。

狼獣人の隊長も登場し、ますます賑やかになっていきます。

これからもこの物語をのんびりとお楽しみくださいm(__)m

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生魚が毒…現実世界でも、日本人にとってはあたりまえですが、海外の方からしたら「日本人何でも食べる」って思われてるみたいですよね 笑 海藻類なんかは、海外の人は上手に消化出来ないというのも聞きました… …
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