4話 敵兵との戦闘
飛行と休憩を繰り返しながら飛行すること数時間後、空が暗くなってきた頃に私達はようやく第三砦アルマ戦線拠点に到着した。
「それでは諸君、今日はもう遅いから休む前に今日の夜の見張りを決めてもらうが、立候補するペアは居ないか?」
誰もが嫌そうに下を向く中、一人だけとを挙げたものがいた。そう、それはこの私だ。
「ゼノ・ウィネーフィカ、ストゥルトゥス・エクルス、ペアがお受けします。」
皆の視線が集まる中、堂々と宣言した私をドゥクス教官が見つめていた。
「うむ。エクルスはそれでいいのかね?」
「はい。構いません。」
ストゥルトゥスは私に懐いている故、反対することはなかった。
「それでは、地図に描かれた場所を巡回して警備せよ。敵を発見した場合は即座に連絡、監視して戦闘は援軍が来るまでなるべく控えるように。万が一敵に見つかった場合は戦闘して持ちこたえるように。」
「了解しました。では、離陸します。」
ドゥクス教官を先頭に他の訓練兵たちに見送られて私たちは巡回に向かった。
「それでは、私は中心から北を巡回する。エクルス殿は中心から南を任せる。」
指示してすぐに私たちは二手に分かれ、巡回を開始した。中心から巡回ルートの端まで往復を何回も繰り返しながら数時間後、明らかに自然のものとは思えない光がうっすらと見えた。銃のスコープをのぞき込み、いつでも撃てるよう、息を潜めて観察する。数分後、ルブルム国の軍服を着た歩兵数十人が確認できた。
「こちら、ゼノ・ウィネーフィカ。聞こえますか。応答願います。」
『こちら、ポルタ・ドゥクス。聞こえている。』
「敵歩兵を確認。その数、約30。援軍を頼みます。」
『了解した。最低でも約5分、発見されないように監視を続けてくれ。』
「了解しました。」
通信を終え、再び監視を始めるたとき、何かが飛んできた。
「なんだ!?」
周りを確認すると、歩兵のはるか上空に魔法兵が5、6人近く確認できた。
「チッ。」
完全に私を確認できているようで、魔力弾が次々と飛んでくる。
(約6人を一人で相手するのは流石にキツイね…。)
私は防御魔法陣を展開し、魔力弾を避けながら打開策を考えていた。
「隊長。敵を一名発見しました。子供のようです。」
「本当かね?」
敵兵の隊長、フギオー・フェーヌムは双眼鏡をのぞき込み、驚いた。
(なんだね、あの子供は!私の娘と同じ、いや、もっと幼いかもしれない。あのような子供を殺していいものか。いや、しかし……。)
フギオーは自身の子供と重ね、良心が痛みつつも命令を下した。
「殺せ。」
部下が銃を構え、無慈悲にも魔力弾が放たれる。
(すまない。名も知らぬ子供よ。)
だか、フギオーの予想に反してその子供は魔力弾を避け、続く攻撃にも動じず、空を縦横無尽に飛び回っていた。
(これは早めに殺したほうがいい!)
「総員、敵援軍が来る前にあの子供を殺せ!」
そのとき、フギオーは良心を捨て、新たな脅威になるであろう子供を全力で殺しにかかっていった。
(面倒くさい、何か打開策は……!)
反撃の余地もなく、逃げ回り、攻撃を受けながら打開策を考えて飛行していたその時、通信とは違う声が聞こえた。
『力が欲しいですか。』
あぁ、欲しいね。
『たとえ重症を負うとしても、それでも力が欲しいですか。』
死なないんだったらこの際、なんでもいいよ。
『なら、私に祈りを捧げなさい。』
その言葉を最後に声は聞こえなくなった。かわりに、今までにない力を感じた。
(今なら…!)
ありったけの力を振り絞り、空高くへと上昇する。
「高度、6000、7200、8500、9800……。隊長、高度が10000を超えました……!射程距離外です……!」
「何!?そんなバカな!あんな子供がそんなに……!?」
雲を突き抜け、敵に見えないところまで上昇する。
(ふう。)
呼吸を整え、雲の下へと戻る。
「早速、試してみようか。」
銃を構え、敵へと銃口を向ける。
「我、神の御力を借りん。信心なる聖徒に祝福を、我らが敵に神の鉄槌を与えたまえ。」
口からスラスラと出る神への賛美を唱え終わり、再度銃を構える。
『いいでしょう。私の力を使いなさい。』
周囲に展開していた防御魔法陣が形を変え、銃口付近に新たな魔法陣を作り出す。それは夜の様な暗い黒とイヤリングと同じ金色の光を放っていた。
「銃弾生成。」
その言葉と一緒に黒い銃弾が周囲に生成されてゆく。
「標的確認。照準確定。穿て。」
私の周囲に生成された黒い弾丸が雨のように降り注ぐぎ、敵の半数が落下していった。
天から降ってきた黒い雨で、隊の半数がやられた。
「隊長!どうしますか!?」
部下の悲痛な叫び声が聞こえる。恐怖で埋め尽くされたフギオーは声を上げた。
「撤退だ!」
「ほぉ。あの銃弾の雨の中で生き残ったのか。」
残った者たちを見据え、銃を構える。
「特大魔力弾生成。」
銃口がより一層強く光り、自身の魔力が吸われていく。
「標的確認。照準確定。穿て。」
銃口に集まった魔力は黒金の弾丸に変形し、敵目掛けて一直線に放たれる。
「うわああぁぁぁ!!」
敵に命中した魔力弾は空中で大爆発し、1人残らず落下していった。
(あぁ、疲れた……。)
ぼやけていく思考の中でそう思ったのを最後に、私の意識はそこで途切れた。
どうも、古瑠璃です。ある魔女が生まれ変わった日、第4話を読んでくださり、ありがとうございます。今回はゼノの初の戦場、そして初の敵兵との戦闘になりました。もし、楽しんでいただけたら何よりです。また次回もよろしくお願いします。




