9話 慰労会&歓迎会
「諸君。私達は明日から教官として働くことになるが、事前にした説明は覚えているな?」
「「ハッ。」」
教員として働く前日、私はイーオンの隊員たちを集め準備をしていた。
「質問がある奴はいるか?」
「あの…本当に教官なんてできるのでしょうか…?」
そうおずおずと聞くのはトゥリパだ。
「上からの命令だからな。やるしかないだろう。まぁ、基本的には私のサポートをしてもらう故、問題は無いだろう。他に質問は?」
「「ありません。」」
「それでは、各自、寮の自室へ荷物を運び、明日の準備をするように。」
「「ハッ。」」
そう命令すると、各自、自身の荷物を持って寮へ向かった。
コンコン
「エクルス。居るか?」
「はいっ。」
ストゥルトゥスの部屋のドアをノックすると、慌てた様子で部屋から出てきた。
「どうされましたか?隊長。」
「なに、これからイーオンの皆で外食に行こうと思うのだが、お前も来るか?もちろん、私のおごりだ。」
「ハッ。ありがたく、行かせていただこうと思います。」
「では、私服に着替えたら来い。軍本部の正門付近で待っている。」
「ハッ。」
「では、諸君。慰労会、および遅めのフロースとフルークトゥスの歓迎会を兼ねて、今日は存分に食べて飲んで欲しい。乾杯!」
「「乾杯!」」
ジョッキやコップが当たり、小気味良くカチンと音を立てた。
「ぷは〜!サイコ~!」
そう口に泡のヒゲをつけて勢いよく飲むのはアーラで、見た目通りのいい飲みっぷりだ。
「ほら〜、エクルスも飲んで飲んで〜!」
「いや、俺は…んごっ!?」
酒を遠慮するストゥルトゥスにアーラがビールを飲ませている。
「エクルスさん、大丈夫ですか!?アーラさんもやめてあげてください〜!」
トゥリパはそう言って制止しながらも、ちびちびとビールを飲んでいる。
「エクルスなら大丈夫だよ〜!ねー、エクルス!」
「ん?俺はダイジョーブですよぉ〜。」
「やっぱ酔ってるじゃないですか!大丈夫じゃないですよ!」
なかなかのどんちゃん騒ぎである。
「フフッ。」
「あ、タイチョーが笑ったー!」
「フルークトゥス、私とて笑うぐらいはするぞ?」
「いやぁ〜、タイチョーの笑ったところ、まだ見たことがなかったものですから〜。」
「そうか?」
「そうですよぉ~。」
「なら、他の2人は見たことがあるだろう?」
そう言ってストゥルトゥスとトゥリパを見ると二人とも首を横に振っていた。
「俺、隊長の笑ったところ見たことないですよぉ!」
「私もです!」
どうやら思ったより笑顔を見せていなかったらしい。
「ふむ。ならば今後はもう少し笑顔を見せることにしよう。」
「「そうしてください!」」
こういう時だけ一致団結してくる。まったく、ずるい奴らだ。
「ところで、タイチョー。タイチョーって休みの日はいつもどうしてるんです〜?」
「あ、それすごく気になります!」
「おい、フルークトゥス!お前こないだデリカシーがどうのこうのって言ってたじゃないか!」
「そんなこと言ったかしら〜?」
ストゥルトゥスの追及をアーラがのらりくらりとかわしている。トゥリパはそれを面白そうに見ている。
「まぁ、落ち着けお前ら。私が休日にどうしているのか聞きたいのだったな?」
「「はい!」」
「といっても、ただ美味しいものを買って孤児院のみんなと食べるだけだぞ?」
「「孤児院、ですか?」」
トゥリパとアーラが不思議そうに聞いてくる。
「あぁ、そういえば言ってなかったな。私はアモー孤児院の出でな。」
「へぇ、そうだったんですねぇ。」
「エクルスは私と同じクラスだし、自己紹介の時に聞いたよな。」
「はい。」
ツマミの塩茹で枝豆を一生懸命剥きながら答えている姿はなんとも可愛らしい。
「隊長、質問いいですか。」
「なんだ?」
「その、隊長の銃と飛行の腕、大人っぽさは一体どうやって身についたんですか?」
(ついにこういう疑問が出るようになったか…。)
何を隠そう、私は人生2度目、しかも転生前は森暮らしの長寿の魔女である。狩りのために銃を使うのは当たり前だし、魔法で空を飛ぶのも当たり前だ。そして、長寿なだけあり、精神年齢的には最低でも三千歳。違和感を覚えるのは当たり前だ。
「う〜ん。まぁ、そのうち話してやるさ。そうだな、お前たち3人を本当に信じることができるようになったら、その時に教えてやろう。」
「「えぇ〜。」」
一同、とても不満があるようだ。
「なんですかそれ。」
「ずるいです!」
「ずるいわぁ。」
「まぁ、お前たちの頑張りに期待するさ。それじゃあ、そろそろお開きにしようか。」
ストゥルトゥスはだいぶ酔っ払っているし、アーラも酒に強いようだが、さすがに酔っている。トゥリパはほろ酔いと言ったところだろうか。当の私は冷たいジュースを飲み、ツマミを食べて腹いっぱいだ。
「ほら、寮に戻るぞ。明日からは抗議もあるんだからな。」
「「は〜い。」」
その日は居酒屋から寮まで、ストゥルトゥスにアーラが肩を貸して運び、フラフラしているトゥリパを私が支えて帰った。
こんばんは、古瑠璃です。ある魔女が生まれ変わった日、第9話です。こうやって隊員たちがわちゃわちゃやっているところを書くのは初めてじゃないでしょうか。次回は教官として生徒たちを指導していく姿が書かれると思います。それと、ある魔女が生まれ変わった日の略称を読者の皆様に考えてくださると助かります。ぜひ、アイデアお待ちしております。
次回もよろしくお願いします。




