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ほら

「そんなわけ」

自分の名前だけが書かれた南京錠を見て、なんだか本当に偉大な呪いをかけられた気分になる。

呪いをかけてきたのは「その人」だが、それを目に見える形にして追い討ちをかけたのは俺自身だ。


「じゃ、行きましょう」


そう言って順路に沿って進む。かなり陽が傾いてきた。

「肌寒くなってきましたね」

「その人」が自分の体を抱いて言う。確かに、かなり秋に近い夜の空気だ。

「先を急ぎましょう」

「急ぐ必要はないです」

はは、と「その人」が笑う。


有料の公園があったので入場する。これまでに比べてかなり人足が落ち着き、穏やかな空間が広がる。

先へ進むと、街を見下ろせる展望エリアへ辿り着いた。

「あ、砂浜が見えますよ」

見ると、朝いた砂浜が見えた。

「結構登ってきましたね」

江ノ島は大きな岩に草が生えたような様相をしており、ガッツのない観光客に向けたエスカレーターがあるくらいには高い場所まで登ることになる。

見上げるとトンビが悠々と風に乗っており、ピーヒョロと鳴いている。

妙に落ち着く場所で、俺たちは無言でベンチに腰掛ける。


「平和ですね」

「その人」はまるで普段が平和じゃないかのように言う。だが、俺もまさに平和を感じていたところだった。

街を見下ろすだけのこの場所は中でも人が少なく、ずっと観光客だらけだったのが嘘かのように文字通り本当にふたりきりになった。


腰の横に手を下ろすと、水か何か冷たいものに触れた。咄嗟に手を引くと

「あ、すみません」

と「その人」が謝った。

「なんですか?」

「冷え性で」

そういうと、申し訳なさそうに顔の横で手をひらひらした。

「え、今の手ですか?誰かがこぼした飲み物かと」

「失礼な、失礼なのかも分からないですけど」

はは、と「その人」が笑う。


「ほら」

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