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7 合意するしかない




「明日帰国するというのに、申し訳ない」


ルーファスは自ら淹れたハーブティをレン王子に差し出した。

先ほど大広間でのディナーを終え、客室に戻ろうとしたレン王子を呼び止めて私室に来てもらったのだ。

二人は堅苦しい上着を脱いでソファに腰掛けていた。


「ただ馬車で移動するだけだから気にしないでくれ」


そう言うとレン王子はカモミールの匂いが強いハーブティに口をつける。


「昨日の会議ではエミリーのことを伏せてくれて感謝している。この国は魔導士にとっては生きづらい国なんでな」

「そうらしいな。それで昨日、ある提案をエミリー王女にしたんだ」

「提案・・・?」

「あぁ・・・・・・プロポーズした」



「は?」



時が止まった。


「プロポーズした?」

「あぁ」


ルーファスは思わず手で口を覆った。


(どうしてそうなった?)


必死に頭を回転させる。


(あれか、九死に一生を得たんだから、恋が芽生えてもおかしくはないのか??)

「それで、エミリーは何と?」

「返事はまだだ」

「そうか・・・それは何とも急な話だな。エンディーネとしては悪くない話だが」

「そうだな。特にドラゴン対策においてはラナが協力出来る部分は大きいだろうな」


ラナ王国には魔導士と弓術士で編成された対ドラゴン部隊があると聞くし、ドラゴンに通用する魔法や武器などの情報が手に入るかもしれない。

ルーファスからすると二人の婚約は願ってもない話だが・・・。


「それで、そちらの利点は?」

「エミリー王女の魔力だ。ラナでは王族の権威を保つために強力な魔力を持つ後継者が必要だ。過去に魔力の弱い王族が生まれて王位を継ぐことが出来ずに国を去ったと言われている」

「しかし、ラナには魔導士が腐るほどいるだろう。エミリーである必要がわからないな」

(それだけじゃないはずだ)

ルーファスはレン王子の返答をじっと待つ。

レン王子は意を決した顔で切り出した。


「じつは・・・俺には婚約者候補がいる」



「は?」



二度目の「は?」がつい出てしまった。


「その令嬢は宰相の姪で、俺はこれ以上宰相の権力が強まるのは避けたい。あれこれ理由をつけて婚約を先延ばしにしているんだが・・・」

「それで隣国の王女とならそちらの婚約を断る口実になると・・・」

「そうだ。しかもエミリー王女は魔力が強いから優先されるのは間違いない」


やっと腑に落ちたルーファスはハーブティに口をつけた。


「ラナ王国は一夫一妻だったな?」

「そうだ」

「・・・そういうことなら協力しよう」

「そうか、ありがたい。それで、そちらの話は?部屋に呼んだってことはディナーの席では言えないことなんだろう?」

「あぁ」


ルーファスは机に移動すると、引き出しから青銅色の鉱石を取り出す。

それを見たレン王子が目を見開いた。


「オリハルコンか?」

「よくわかったな。そうだ。これが欲しい」

「ちょっと待て・・・オリハルコンはラナでも希少な鉱物だぞ。王室でも年に一度か二度献上されるくらいのもので・・・」

「そこを何とかしてくれないか?」

と言いながらルーファスがオリハルコンをレン王子に手渡した。


「簡単に言ってくれるな・・・」


レン王子が受け取ったオリハルコンを手の上で転がす。


「ところで、なんでこれが必要なんだ?」

「・・・ドラゴンを殺すためだ」

「っ!!昨日のあの矢尻、オリハルコンか?」

「あぁ。対ドラゴン用に俺が開発した矢だ。シャフトがミスリルで、矢尻にオリハルコンを使用している」

「だからドラゴンの皮膚を貫通したのか。通常なら付与魔法でもかけない限りドラゴンの皮膚は貫通出来ない」


オリハルコンは世界で最も硬い鉱物だと言われいている。

しかしその希少さから武器に使おうなどという輩はまずいない。

記念の盾などに使われて城の宝物庫に保管されるのが常だ。


「昨日試作品を2本使ったから金貨8000枚が一瞬で飛んだ」

「おい・・・やってるな・・・」


レン王子は呆れ返って目を閉じた。


「とりあえずあと10本は作りたいんだが、オリハルコンが入手出来なくて困っている」

「まぁ、ラナ王室直轄の鉱山に交渉すれば手に入るかもしれないが・・・。ラナに戻ってから大臣と話してみるか」

「よろしく頼む」

「婚約が叶わなかったらこの話は無かったことに」

「全力で協力する」


ルーファスはかぶせて言った。




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