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一矢報いるために  作者: ぽーりー


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4−10 母と息子




ルーファスが勢いよく扉を開けて部屋に入って来た。


「エミリーが目を覚ましたんですか!?」


息を切らしながらエミリーの側に寄ると、隣にいたルーズベルトがルーファスの肩に手を置いた。


「これがルーファスだ」

「??」


ルーファスは自分の名前を呼ばれてきょとんとした。


「この子が、ルーファス?」


エミリーが不思議そうな顔をしながらルーファスに手を伸ばすと、ルーファスは思わずその手を掴んだ。


「エミリーどうした?俺がわからないのか?」


ルーファスが問いかけると、エミリーが微笑んだ。


「本当にルーファスなのね」


エミリーの金色の瞳が潤んだ。

ルーファスが状況がわからず戸惑っていると、ルーズベルトが声を掛けた。


「少しいいか?」


ルーズベルトは侍女にエミリーを任せると、ルーファスを連れて部屋を出た。

ルーズベルトの執務室に移動した二人は、夕焼けに染まる中庭を見下ろしていた。


「先程、お前が言っていたな。エミリーには二つ魂があると」

「はい・・・」

「もう一つの魂が誰の物かわかった」

「!?」


ルーファスは驚いてルーズベルトの方を向く。


「今エミリーの体にはアメリアの魂が入っている」

「は!?」

「先程お前が会ったのはアメリアだ。しばらく話してみたが、アメリアに間違いない」

「・・・母上ですか?」

「そうだ」

「では、エミリーは?」

「それは・・・」


ルーズベルトにもわからなかった。

エミリーの魂はどこへ行ってしまったのか、不安で仕方なかった。

しかし、アメリアにはその気持ちを悟られないように終始笑顔でいることに努めた。

アメリアとの再会を心から喜べないことが申し訳なかった。


「折りを見て、アメリアには状況を説明する」

「はい」

「それまではアメリアとして接してほしい」

「わかりました」






ルーファスは複雑な気持ちのままエミリーの部屋を訪れた。

二人きりで話したかったので、侍女には席を外してもらった。


「本当に、母上なんですか?」


ルーファスは黒い瞳を揺らしながら尋ねた。


「そうよ。大きくなったわね」


アメリアはベッドから椅子に座るルーファスの頭を撫でようとしたが、手を引っ込めた。

もうあの頃の幼いルーファスではないのだ。


「あの頃の記憶はあるんですか?」


ルーファスの問いにエミリーはゆっくりと頷いた。


「あるわよ」

「では、竜災の時のことも・・・」

「もちろん覚えてるわ」


竜災はルーファスにとっては16年前のことだが、アメリアにとっては昨日のことのようだった。


「教えていただけませんか?あの日、母上は屋根の上で亡くなっていました・・・あの時、何があったんですか?」

「あの時のことを話すには、私の秘密も話さなくてはならないの」

「母上の秘密ですか?」

「ずっとあなたにも、あの人にも隠していたことよ」

「・・・父上にもですか?」

「えぇ」


ルーファスはこれ以上聞くのは失礼にあたるのかと思って口を噤んだ。

その姿を見て、エミリーがふふっと笑う。

そして、意を決して口を開いた。


「私はね・・・魔導士なの」

「え?」

「私は魔法が使えるのよ」

「母上が魔導士?」

「そうよ。それを隠してあの人に嫁いだの」

「父上はそれを知らずに母上を妃に?」

「えぇ」

「どうして・・・」

「私はあの人を守るために嫁いだのよ」

「・・・護衛として、ということですか?」

「そうよ」


それを聞いたルーファスの瞳が不安そうに揺れた。


「では、父上を愛していたわけではないのですか・・・?」

「初めは・・・愛していなかったわ。でも、あの人と一緒に過ごすうちに、いつの間にか愛していたの。そしてあなたが産まれた」

「それで、母上は幸せでしたか・・・?」


その質問にエミリーがきょとんとした。


「もちろんよ!あの人を愛しているし、あなたのことも愛しているわ。幸せに決まってるじゃないの」

「でも、最後はあんな亡くなり方を・・・」


アメリアは自分が死んでしまったことを未だに信じられず、ルーファスの言葉に戸惑った。

自分は昨日まで生きていたはずなのに・・・。

そんな思いを胸の奥に仕舞い込んで、意識を失う直前までの出来事を回想しながら口を開く。


「私はあの時、ドラゴンが私たちを狙っているのだとすぐに気付いたの」

「え?」

「それで、これ以上関係のない人たちを巻き込んではいけないと思ったわ」

「それで、母上は囮になったんですか?」

「違うわ。ドラゴンを倒すために戻ったのよ!」

「え?」

「私は魔導士よ!しかも、ものすごく優秀な魔導士なのよ」


エミリーは誇らしげに胸を張った。

その姿があまりにもエミリーらしくなくて、ルーファスはふっと笑ってしまった。


「あの男の変身魔法を解いて、一緒にあの屋根に落ちてしまったの。そして、私は意識が遠のくなかで・・・ある魔法を詠唱した」

「ある魔法?」

「移魂魔法よ」

「いこんまほう?」

「魂を移す魔法のことよ」

「・・・もしかしてそれで?」

「そうね。それでこの体に魂が移ったんだわ」

「あの日は、エミリーが産まれた日でした・・・」

「私は咄嗟に詠唱したから、どこに移すのかも指定しないまま魔法を発動してしまったの」

「それでエミリーの体に」

「そのようね。でも心配しないで。元に戻る方法を探してみるわ」

「母上・・・」

「私はもう死んだ人間なのよ」

「・・・・」

「もう一度こうやってあなたに会えてよかった」


エミリーはそう言って微笑んだ。




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