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6 カナスの幹部たち




翌日


大神殿の一室で、それぞれ個性を放つ者たちが、大理石の円卓を囲んでいた。

一際大きな椅子に座るのは白い神官服を着たダグラスだ。

彼の横に控えていた神官が一礼する。


「これより、カナス幹部会の定例会議を始めたいと思います。まずは初めての方もいらっしゃいますので自己紹介からお願いいたします。レン王子、お願いいたします」


名前を呼ばれ、ダグラスの向かいに座っていたレン王子がスッと立ち上がる。

会議のために用意した、光沢のある刺繍が施された長着を着ている。


「ラナ王国第一王子、レン・ミランドです。父に代わり、今年から幹部会に参加させていただきます。ご指導の程、よろしくお願いします」


さっと一礼して席につく。

次いで、この場にはあまり相応しくない出立ちの令嬢が立ち上がった。

長い黒髪に派手な赤いドレスを着た妖艶な令嬢だ。


(会議に出る格好じゃないだろう・・・)

「ルスル王国、公爵家次女のニーナ・フェンコですわ。わたくしも3年前に父から引き継ぎましたの。よろしくね」


次いで、ブラックのスーツを着て黒髪を後ろに束ねた男が手を挙げた。

左頬には刃物で斬られたような古傷がある。


「アシュファーレ国でベレズエット商団をやっているペイミ・セシーリだ。ほどほどによろしくね」

(眉毛ないし。この男、どう見ても堅気じゃないだろ)


次いで、金縁メガネにワインレッドのローブを羽織った中年男が立ち上がる。


「ダナトリース国で魔術の教師をしているヒューズ・レインです。よろしくお願いします」

(こいつはまともそうだな)


最後に立ち上がったのは、白髪混じりの短髪でガタイのいい男だ。

街に馴染めそうな普通の格好をしている。


「私はロトワール国でフェンリル部隊を指揮しているロナサン・バロウだ。よろしく頼む」

(軍事国家のフェンリル部隊の司令官か・・・相当なエリートだな)

「このように、カナス幹部会にはバルト6国から魔法に長けた者が一人選出されておる。だいたい世襲となっておるがの」

「私は実力でこの席を確保しましたけどね」


ヒューズは金縁メガネを片手でクイッと持ち上げてニヤつく。


「そうじゃったな。さすがは魔法馬鹿じゃ」

「ば、馬鹿?!私は新しい魔法を作り出すために日々研究を」

「先生?世襲でもわたくしの実力は本物ですわよ」

「私も父より魔法に長けているぞ」


ニーナの言葉にロナサンも腕を組んで同意する。


「魔法がどうとか興味ないね。こんな遠いところまで来たんだから、身(金)になる話をしたいよ俺は」


ペイミはだるそうに椅子にもたれかかっている。


「この人、儲け話にしか興味ないのよね」

と言ってニーナが呆れた顔で両手を広げる。

(・・・こんなのが幹部で大丈夫なのか?)

レン王子はこめかみに手を当てた。


ある程度場が和んだところで、ダグラスが話を切り出す。


「ところで、ドラゴンが城を襲撃したのは皆知っておるかの?」

「今朝ホテルのロビーで聞きましたわ」

「私は今朝の朝刊で知りました」


ヒューズがローブの中から朝刊を取り出す。

街ではすでに昨日のことが周知されているようだ。


「私は昨日知った。城の近くの宿だったからな」

「俺も昨日団員からの報告で知った」

バルト6国に展開するベレズエット商団なら他国にも情報網を張り巡らしているだろう。

次答えるのはお前だぞ、と4人がレン王子に視線を向ける。


「私は・・・城でドラゴンに遭遇しました」

「まぁ!そうでしたの?ご無事で何よりですわ。王族ともなれば城に滞在しますものね」

「今回は怪我人もおらず、城の被害も少ないようで幸いだった。16年前の竜災は酷かったからな」


ロナサンは16年前、復興支援で王都タルドゥールを訪れていた。


「レン王子が防御障壁を張ったおかげでことなきを得たんじゃよ」

「す、素晴らしいっ!!お一人で貼られたのですか?あの大きさの城ともなれば複数人でしょうか?障壁の規模はどれくらいだったんです?!」


メガネの奥のヒューズの目が血走っていてちょっと怖い。


「防御障壁は国の防衛システムの一つですわ!他国に手の内を明かすようなことを言えませんわよ」


ニーナが牽制してくれたおかげで詳細を話す必要もなさそうだ、とレン王子はホッとする。

肩を落としているヒューズをスルーしてペイミが口を開いた。


「この国はドラゴンがしょっちゅう現れるような地域ではないはずだよな。16年前といい、不自然な気がしてならないな」

「過去の例から見ても、ドラゴンが現れるのは300年に一度くらいじゃからな」

「ドラゴンの生態に異変が起きているのでしょうか・・・」


ヒューズは肩を落としたままぶつぶつ呟いている。


「そこで皆に調べてもらいたいことがあっての。自国にある魔導書の中からドラゴンに関する魔法がないか調べてもらいたいんじゃ」

「ドラゴンに関する魔法ですって?!」


ニーナが目をくわっと見開いた。


「ドラゴンに関する魔法は強力すぎるということで大昔に禁忌魔法に指定され、50年前のカナスの政策で残っていた魔導書も全て焼き払われました。もうこの世には残っていないのではないでしょうか」


ヒューズが気まずそうに進言する。


「そうじゃろうな。わしの世代で処分したからのぉ」


皆が「ですよね」と心の中で呟く。


「でも・・・政策を逃れて1冊や2冊残っててもおかしくないよな。あ〜〜なんか金の匂いがしてきたなぁ」


ペイミがうっとりとした笑みを浮かべる。



その後、ドラゴンに関する魔導書は見つけ次第ダグラスに献上するということで会議は終了した。




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